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10年前の読書日記7

2013年5月の記

 面白そうな本が出るとつい買ってしまい、うちの本棚は、読んでない本でいっぱいである。半減期が来るより前に、私のほうが死ぬだろう。今では本棚がプルトニウムに見える。

 読まないだけではない。新刊で購入し、ずっと放ったらかして、安くなったらそのまま古本屋で売るという、なんとなく先物取引のような感じのこともしている。どういうメリットがあるのかわからんが、私が損してる分、誰かが得しているはずなので、その人に幸あれと思っている。

 しかし金が出ていく一方なので、これからは未読本を1冊読んだら1冊買っていいという自分ルールを設定した。
 で、新しい本が買いたいので、本棚を見ると、ディックの文庫本がいっぱいあって面白そうである。そういえばいつの間にかディックを読まなくなっていた。読まなくなっても、出れば買って全部揃っている。この機会にどんどん消化していくことにした。

『死の迷宮』『未来医師』『ドクターブラッドマネー』『虚空の眼』『ライズ民間警察機構』って読んでくうちに、駄作も佳作も関係なく、読めば胸のつかえがすっきりする気がして、その効能に驚いた。ストーリーが破綻した明らかな駄作みたいなものでも、雰囲気だけで読んでいける。

 これはどういうことだ。理由は不明だが、ただ、どうやら自分はストーリーを読んでないらしいことがわかってきた。なぜか最近、ストーリーがつらい。ストーリーがあると、最後どうなるのか気になるから困る。途中で辞めてオッケーな感じで本を読みたい。途中から読み始められて、途中で終われる本がいい。

 そうすると一番いいのは、昔読んで面白かった本ということになるのか。結末はわかってるから、安心して読める。
 今思い出した。未読本が減らないのは、そういえば読んだ本ばかり読んでるからだ。齢のせいだと思う。


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 突如、位置ゲーというものを始めた。
 位置ゲーは、携帯やスマホのGPS機能を利用したゲームで、もともと地図好き、旅好きなので、GPSを使って何か面白い遊びが出来るんじゃないかと常々思っていたのだ。
 しかし、GPSで何をすれば面白いか、なかなか思い浮かばない。それで同じように考えたらしい誰かが作った位置ゲーを試してみることにしたわけである。すでにいくつも出ていて、そのなかで最大手のコロプラというのをやってみている。

 自分が移動し、そこで位置を登録すると、自分が行った場所の白地図に色がつくのは、位置ゲーとしては基本的な機能だろう。そうやって国盗りしていくのは、ありきたりだが、地図好き旅好きにはやはり面白い。

 ただ、ふつうは旅ばかりもしていられないから進捗が遅いし、それだけなら勝手に自分で白地図でも作ってやればいい話だ。問題はそこからどういうゲームを組み立てるかで、コロプラには、移動距離に応じたポイントを貯めてそれで画面の中の架空の町を育てるゲームがついている。他にもいろいろな仕組みがあるようだが、正直、そうじゃないだろ、という気がしてならない。もっと地図好きの琴線に触れるゲームを開発してほしい。

 唯一面白いと思ったのは、自分はなかなか動けないから、自分の分身のマスコットに全国を旅させる仕組みで、マスコットは、私と同じ町からスタートし、誰かがそこで位置登録すると、その人にくっついて移動していく。そして移動先で相手をランダムに乗り換えながら、またその人にくっついて、次はどこへ行くのか予測できないブラウン運動のような旅を続けるのである。

 最初は関心がなかったが、だんだん、今どのへんにいるのかが気になるようになってきた。できれば遠くへ旅立ってほしいものの、なかなか関東圏から出て行かない。こないだはやっと長野県まで行ったと思ったら、また帰ってきた。なんやねん、ちっとも動かんがな、と思ったら宮城県に行って、よっしゃよっしゃ。でもすぐ戻ってきてがっかりしていたら、次は岐阜県。
 どう動くかは運であり、自分ではどうにもならないところ、それでいて国盗りの味わいがあるところが面白い。
 だが、まだその程度かという印象だ。もっと何かできるはず。それが何なのかが、わからない。そして今、愛知県ですっかり動かなくなった。

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 町内会のイベント係を任命され、七夕まつりの準備を開始。通常の役員会のほかに、そっちの会議にも出なければならなくなって忙しい。
 息子の所属するサッカークラブのほうでも係があって、大人になってもこんなにいっぱい係やらされるとは想定外である。もちろん全部ボランティア。 
 たぶん神さまが全部見ていて、今度ロト6当ててくれることになっているのだと思う。

                 ●
 某連載の取材で、北九州へ行って石拾い。
 前々から私は、もうすぐ石拾いブームが来ると予言している、というか、もう来ていると言っても過言ではないが、なかなかみんな信じてくれない。
 地図ブームがあり、地形ブームも来ているのは誰もが認めるところだが、地形から地学、そして石までは紙一重の距離である。
 もちろんテレビで石拾い番組をやるほどにはなっていない。だが、むしろテレビでやるようになったらブームはほぼ終焉を迎えていると言っていい。石拾いはこれからなのだ。
 そういうわけで流行の最先端を行きたい人は、海岸へ行って石を拾うべし。大流行してから行っても、もう石ないぞ。


本の雑誌2013年7月号より転載


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