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「ハマスのテロ」という言葉を使う日本の外相と、イスラエルの2000ポンド爆弾による「大規模テロ」

 昨日触れた上智大学の学生たちの活動を紹介したYouTubeへのコメントには「ハマスのテロも非難しましょう。」というものがあった。日本の上川外相は昨年11月にイスラエルを訪問し、「イスラエルの方々との連帯の意を伝えるために訪問した。ハマスの攻撃はテロであり、赤ちゃんから子ども、女性や高齢者も含めて、一般の市民に対する攻撃と誘拐はどのような理由であれ正当化できず、断固非難する。」と述べた。しかし、イスラエルは上川外相が言う「ハマスのテロ」とははるかに規模の大きい一般市民に対する攻撃を行い、昨年10月7日以来、4万人に近い犠牲者を出している。「ハマスのテロ」を断固非難するならば、イスラエルも同時に断固非難しなければまったく筋が通らない。

 また、「ハマスのテロ」を非難する人々は、「ハマスのテロ」以前にイスラエルが行ってきたことを知らないか、意図的に無視している。上川外相が「ハマスのテロ」の背景になっているイスラエルの占領や、占領地における入植地拡大を非難している様子はまるで見られない。上川外相はいったい何について「イスラエルの方々と連帯する」というのだろうか。

 ハマスとイスラエルの戦闘は10月7日のハマスの奇襲攻撃によって始まったが、占領者や植民地主義者に対する武力抵抗は国際法でも認められている。ハマスの行動は、一般市民への襲撃、誘拐は別としてイスラエル軍兵士に対する攻撃は国際法的にも正当性が認められている。上川外相が強調する「ハマスのテロ」については、ヨルダン川西岸の占領を継続し、占領地での入植地拡大を続けるイスラエルにも責任があることは明らかだ。イスラエルのような占領者が武器をもたないパレスチナ人という被占領者たちを殺害することこそ重大で、深刻な「テロ」だ。

岸田政権の対応はまったく影響力がないですね 場当たり的です https://www.at-s.com/news/article/national/1342105.html

 ジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書Ⅰ)(一九七七年採択)は、文民の保護について総則の第一条四項で「国際連合憲章並びに国際連合憲章による諸国間の友好関係及び協力についての国際法の諸原則に関する宣言にうたう人民の自決の権利の行使として人民が植民地支配及び外国による占領並びに人種差別体制に対して戦う武力紛争を含む」とある。占領と植民地支配に対しては、武力の行使を含む抵抗を行なうことは国際法上認められている。イスラエルは占領を継続し、入植地を拡大するが、まったく悪びれた様子はない。これはパレスチナ側から見れば、まったくの不正義だと思わざるを得ないだろう。

 今ではアルジェリア独立に向けた武力闘争やアパルトヘイト撤廃に向けたネルソン・マンデラの活動を「テロ」と呼ぶ人はほとんどいないだろう。しかし、上川外相の基準ではこれらの闘争もみな「テロ」になってしまう。

マンデラ 自由への長い道 1960年にシャープビル虐殺事件(南アフリカ警察による虐殺事件、69人が死亡)が起きると、マンデラも武装闘争路線へと転換し、1961年11月、ウムコントゥ・ウェ・シズウェ(民族の槍)という軍事組織を作り最初の司令官になった。しかし、それらの活動などで1962年8月に逮捕される。(マンデラのウィキペディアより) https://eiga.com/movie/79726/#google_vignette


映画「アルジェの戦い」より 上川外相の基準ではアルジェリア独立のための武力闘争も「テロ」となる https://ameblo.jp/caro88/entry-12238773966.html


 イスラエル政府は6月30日までに、これまでイスラエル政府からも違法とされてきた5つの入植地を合法とする手続きを進めるようになった。これらの入植地はイスラエル国内での必要な手続きも経ずに建設されてきたそうだ。イスラエルの極右閣僚のスモトリッチ財務相の提案で、スペインなどヨーロッパ諸国によるパレスチナ国家承認の決定への対抗措置として合法化の手続きが行われる。実に愚かしいとしかいいようがないが、上川外相がこうした動きを「断固非難」すべきであることは言うまでもない。

 6月29日付けのロイターの記事は、10月7日以降、アメリカはイスラエルに対して数千発の2000ポンド爆弾を供与したことを伝えている。2000ポンド爆弾は1000フィート(約305メートル)以上離れた住民らも死傷させる破壊力を持っているとされる。イスラエル・アメリカによるテロのほうが「ハマスのテロ」よりもはるかに深刻で、切実だ。

表紙の画像は上川外相、イスラエルのコーヘン外相と。昨年11月。
アラブの人々は「ハマスのテロ」とはまったく思っていないことでしょう。「ハマスのテロ」「イスラエルの人々との連帯」など言葉には気をつけたほうがいいと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=STLSvJ1ddPE

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