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アメリカの大学生に謝意を表明するガザの子どもたち ―日本では子どもの幸福を図る「子供の日」だが・・・

 「セーブ・ザ・チルドレン」によれば、昨年10月7日から今年4月4日までにガザでは13、800人の子どもたちが犠牲になった。まさに現代におけるジェノサイドである。日本では、今日子どもの幸福を図る「子どもの日」だったが、ガザでは毎日のように、子どもたちが殺害されている。

 5月1日、ガザ中部のデイル・アル=バラのアル・アクサー殉教者病院の前で医師、看護師など医療スタッフや子どもたちが集まり、「子どもたちへの殺害を止めよ、ジェノサイドへの団結」などのスローガンを掲げながら、ガザでの即時停戦やイスラエルの軍事関連企業からの投資撤退を呼びかけるアメリカの学生たちの運動に謝意を表明した。

デイル・アル=バッラでアメリカの学生たちに感謝するガザの医療スタッフや子どもたち https://edition.cnn.com/2024/05/01/middleeast/gaza-children-thank-us-protesters-intl-latam/index.html


 イスラエルによる空爆、土地の接収、家屋の破壊などがあっても長い間、欧米など国際社会からパレスチナの問題は忘れられ、沈黙され、また関心も希薄な傾向にあったから、ガザの人々がアメリカの学生たちの運動を喜んだことは想像に難くない。

スタンフォード大学で 4月25日 https://www.kqed.org/news/11984203/pro-palestinian-protests-sweep-california-college-campuses-amid-israel-hamas-war


 アメリカの大学生たちの運動について、5月1日、イスラエルのギラド・エルダン国連大使はアメリカの学生たちが外部の扇動者と連携する反セム主義者たちであり、彼らは退学させられるべきであり、大学の教授や学長は迅速に厳しい措置を講じなければならないと、国連総会で演説した。しかし、抗議活動する学生たちの中に多くのユダヤ系の学生たちが含まれるように、運動は反セム主義の性格をもつものではまったくない。良識ある日本人なら「甘ったれるな!」という言葉を投げかけそうだ。

ガザ停戦を叫ぶ女学生 コロンビア大学で https://www.middleeasteye.net/opinion/campus-protests-moment-israel-loses-west-could


「戦争というのは、一番弱い者のところに、ダメージを与えるようにできているのです。」とタレントの愛川欽也さんは語っていたが、ガザでのイスラエルの攻撃を見ていると、まさにその通りだ。

愛川欽也さんの言葉 https://twitter.com/asama888/status/589216894730645504


 戦争では武装していない子供たちや女性、老人たちなど市民が犠牲になってきた。だからこそ戦時国際法では市民を攻撃してはならないことが定められている。

大いなる希望の名のもとに
自分の命などかえりみず
踊りの輪に加わる者たちのために
わが息子は歌います
自分の命以外の武器を持たずに
命のために闘う者たちのために
彼らが長く生きるように
わが息子は歌います
さくらんぼが実る時の夜明けに
銃の照準の下で
シャツ姿で死ぬ者たちのために
わが息子は歌います

 この「わが息子よ、歌いなさい」(モーリス・ファノン詞)は1972年にジュリエット・グレコがギリシアの軍政に反対し、抵抗する人々に寄せた曲で、この情景は現在のガザの子どもたちにも重なるようだ。「さくらんぼが実る時」という歌詞のくだりはパリ=コミューンで立ち上がった人々を表象した歌「サクランボの実る頃」の心情を継承しているかのようでもある。曲のアレンジもギリシア風になっているが、グレコの歌の動画は、下にある。

https://www.youtube.com/watch?v=BV3RSx6Umn4

 過日も紹介したドイツの作家ギュンター・グラスは「イスラエルの核保有をアメリカは黙認する。ドイツはイスラエルに核弾頭の搭載可能な潜水艦を供与してイスラエルを支援する。これが中東の平和を危なくしている」と欧米のイスラエルの核兵器保有に対する姿勢や偽善や二重基準を激しく批判した。

 岸田文雄首相は一昨年4月8日の記者会見で、ウクライナ避難民に対して特例的な措置をとり、シリアやアフガニスタン難民とは明らかに異なる対応をしていることについて東京新聞の記者が「同じ命の問題で、平等に扱うべきではないか」と質問したのに対して、ウクライナ以外の難民については従来通りの消極的姿勢をとることを示唆した。グラスが非難した「偽善」を彷彿させるものがあるが、岸田首相がパレスチナの子どもたちの悲惨な境遇に言及することなどこれまでなかった。


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