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長崎の平和祈念式典を拒否する駐日イギリス大使の論理は正しくない ―長崎市が責められることはまったくない

 イギリスのジュリア・ロングボトム駐日大使は、6日、広島の平和記念式典に参加した後で、8月9日の長崎の平和祈念式典は欠席する意向であることを明らかにした。理由は長崎市がイスラエルを招待しなかったからだという。

ロングボトム大使 高慢ちきな感じです https://www.nishinippon.co.jp/image/617631/

 ロングボトム大使は記者団に対して「長崎の式典には出席しない。ウクライナという独立国に侵略したロシア・ベラルーシと違い、イスラエルは自衛権を行使している。同様の扱いをしては誤解を招く」と述べたという。

 ロングボトム大使の論理(理屈?)はまったく正しくなく、驚くしかない。この大使の個人的背景など知らないが、国際法の常識も知らないらしい。(ウィキペディアにはフランス語とドイツ語の教養学士とあるが・・・)ロシアがウクライナに侵略したと言うなら、イスラエルがパレスチナのヨルダン西岸やガザを侵略していることは自明のことだ。実際、7月19日に国際司法裁判所は、イスラエルがヨルダン川西岸を占領し、入植地を拡大していることが国際法に違反するという勧告的意見を出したばかりだ。ロングボトム大使はこの国際司法裁判所の判断も知らないというのか。

 長崎市の鈴木史朗市長がロングボトム大使から責められたり、恥じたりすることはまったくない。責められるのロングボトム大使や、彼女に同調して出席を見合わせる米国のエマニュエル大使のほうだ。

城臺(じょうだい)美彌子さん https://x.com/swu_kawa/status/501173747819102210

 ロングボトム大使はイスラエルのガザ攻撃が自衛権の行使と考えいるらしいが、4万人もの人々を殺害することは自衛権を大きく逸脱し、戦争犯罪と言うべきもので、現にICC(国際刑事裁判所)のカーン主任検察官はイスラエルのネタニヤフ首相とガラント国防相に逮捕状を請求している。イスラエルの自衛権の行使を理由に、平和祈念式典に出席しないというならば、長崎の被爆者団体などはロングボトム大使に抗議の声明などを出してよいと思う。米英の大使のふるまいは、根拠も希薄なイラク開戦にこの二国が踏み切っていったことすら彷彿させてしまう。

どうしようもないアングロサクソン同盟です

 10月7日のハマスの奇襲攻撃は、イスラエルの民間人を殺害したことはともかく、イスラエル軍・警察を攻撃したことは自衛権の行使だ。植民地主義に対する自衛権の行使は国際法でも認められている。イスラエルは圧倒的な軍事力をもってガザを再三攻撃し、2014年夏(7月から8月にかけて)ガザを攻撃し、2000人以上の人々を殺害した。

 言うまでもなくイギリスはパレスチナ問題の歴史的原因をつくった国で、イギリス帝国主義がオスマン帝国の主権を侵害して、ユダヤ人にパレスチナに民族郷土の建設を約束したことからパレスチナ問題の悲劇が始まった。パレスチナ問題に道義的責任をもつ国の大使なら、ガザ攻撃がイスラエルの自衛権行使などという不正確なことを言ってはならないと思う。ガザで、家族、親族、友人らが殺害される人々は、ロングボトム大使の「自衛権の行使」云々の発言を知ることになれば、反発し、激怒することだろう。

 ロングボトム大使の国イギリスの元軍人で作家のピーター・タウンゼント氏(1914~1995年)は、長崎の被爆で背中に重症を負った谷口稜曄(すみてる)さんと交流しながら、平和のためのメッセージを伝え続けた。タウンゼント氏は世界を旅する間に子どもたちの瞳は生き生きとして濁っていないと思うようになり、戦争の犠牲になる子どもたちへの人道主義に目覚める。長崎の被爆で周辺の子どもたちが亡くなる中で一人だけ生き残り、背中に大火傷を負った谷口稜曄(すみてる)さんのエピソードとその痛ましい悲惨な画像はタウゼント氏の心を大きく捉えることになった。ロングボトム大使にはタウンゼント氏のように、イスラエルの自衛権などという問題に捕らわれるのではなく、ガザをはじめ戦争の犠牲になる子どもたちの人道問題に想いを馳せるためにも、長崎を訪れ、被爆者などの平和のメッセージにじかに触れるべきだと思う。


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