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【連載】レコードのある生活を始めてみる②

ピーヒャラテレビ破壊事件の当日、僕たちは早速レコードプレーヤーを購入していました。ION AUDIO Archive LPという商品がデザイン的にも部屋に合うし、スタイリッシュだし、何よりも価格がお手頃。43インチのテレビとは大違いです。

ギターもピンからキリまであるように、レコードプレーヤーもピンからキリまで、いろいろあるのでしょうが、入門者の我々としてはこの商品がベストでした。ひとまず、レコードというものを再生してみたい、聴いてみたい。その気持ちでの購入でした。

この商品にはプレーヤーそのものにステレオスピーカーが搭載されていますが、我が家には元々テレビ用のスピーカーとして使用していたBOSEのスピーカーがあったので、それにレコードプレーヤーを接続できるように、ケーブルも一緒に購入しました。

そして、何よりも再生するための円盤がなければ何も再生できません。同居人であるバディがひとまず、QUEENのボヘミアン・ラプソディのシングルを購入してくれました。

そして注文の翌々日、ついに家に待ちに待ったレコードプレーヤーが到着しました。

BOSEのスピーカーへ有線接続を済ませ、入力をAUXに切り替え、ボヘミアン・ラプソディ再生の儀。

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♬ Is this a real life.... Is this a fantasy....♬

部屋にアナログ音源でフレディー・マーキュリーの歌声が響いた瞬間でした。プチ…プチ…という針の音の後に響いた歌声は、今までCDやYoutube、spotifyで聴いてきた音質とは全く異なるものでした。

どちらが良いか、賛否両論あると思いますが、僕は圧倒的にレコード音質の方が好きです。曲が曲としてまとまっているというか、楽器が分離している感じが少ないんです。音はステレオで左右に振られていますが、楽器がそれぞれバーン、というよりも曲全体がバーンと、届いてくる感じ。

そして今まで聞こえていなかった音が聞こえるような気がします。具体的には、ブライアン・メイのギター・ソロの部分でピックが弦に当たっている音とか、ピアノ線が揺れている感じとか、聞こえ方は人それぞれなのでしょうが、僕にはそう聴こえました。

簡単に言うと、ライブハウスで演奏を聴いている感じにより近く、音楽鑑賞をしている気持ちです。

バディが購入したワーナー・パイオニア株式会社のクイーンのボヘミアン・ラプソディ(P-1430E)は歌詞カードを見ると1975年の12月発売とあります。45年前に販売されたレコードです。販売当時、1975年に起きた出来事を調べてみました。

・まるか食品が「ペヤングソース焼きそば」を販売開始。
・マイクロソフト設立。
・ベトナムのサイゴン(ホーチミン)が陥落し、ベトナム戦争終結。
・きのこの山(明治製菓)が販売開始。

その時代の出来事をこうして観てみると、そんな昔の出来事なのか、と思いますよね。その時代を生きていた人が、リアルタイムにレコードショップで新譜として手にしていたレコードが今、自分の元で新しく聞かれているとなんだか興奮します。昨年発売されたking gnuの『ceremony』を45年後、つまり2065年の若者が「昔あったCDプレーヤーって知ってる?ネットで買ってさ、なんか45年前に流行ってたCD買ったんだよ」と一緒の構図です。

そんなことを思いながら部屋で再生するレコードはなんだか、ロマンがあってたまりません。そして何よりも思うことは、当時(1980年代まで)スタジオでアーティストが録音した音源というのは、CDとしてではなく、レコードとしてアウトプットされることを前提として収録されたものであるということです。

時代によって録音方法は様々ですし、僕はレコーディングエンジニアでは無いので想像することしかできませんが、おそらく音のバランスや当時の再生機器の事などを配慮したうえで音源はマスタリングされているのだと思うのです。そう思いながら曲を聴くと、より一層、曲の作りやバランスに舌鼓ならぬ、耳鼓を打つことになります。

思い返してみると、ここまで音に耳を傾けながら音楽を聴いたのは久しぶりの気がします。最後はいつだったっけな、CDを手にして、ドキドキしながら大切に歌詞カードを汚さないようにしながら眺めつつ、CDコンポで音楽を再生して耳を傾けたのは。

最近は音楽の触れ合い方が雑だったかもしれません、いや、音楽のあり方自体が変容してきていると思うので、仕方ないとは思いますが、僕はよくspotifyで「あなたへのおすすめ」みたいな自動的に作られたプレイリストを再生して通勤していました。新しいアーティストと出会えるし、新しい気付きもあった。けど別にその曲名とかまでは確認しないんですよね。

もしかしたら、アルバムを一つの「作品」として認識される時代はもう過ぎ去ったのかもしれません。けれど、大切にレコードをプレーヤーの上に置いて、どんな音が響くのかじっと待つあの時間が常にあったレコードの時代。きっとそれも、いい時代だったんだろうな、と思いを巡らさずにはいられません。

次回、初のレコードショップ巡り〜Portrait in Jazzを求めて〜

ご期待ください。

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