ベトナム帰りの友への追悼

89年に「7月4日に生まれて」と言うトム•クルーズがベトナム帰還兵を演じた映画があった。今でも重く深い記憶の残る作品だ。

ちょうどその頃まだ20代の青二才のぼくが米国テキサス州フォートワースの同じ職場で出会ったチャック•サイザーも海兵隊出身のベトナム帰りだった。

話すと普通なのだが、肩幅が広く胸板が厚い厳つい体格とちょっと危ない目つきのオジサンだった。

時折オフィスで大声で奇声を発している。何だろうと思っていたら、アイツはベトナムでひどい経験をしたらしいと別のアメリカ人が耳打ちをして教えてくれた。恐らくフラッシュバックだったのだろう。

3年ほど前にフェイスブックで再会した。日本語がわからないのに自動翻訳を使いながらぼくの投稿に時折剽軽なコメントで絡んでくれるのが何やら妙に楽しかった。

そのチャックをしばらく見かけないなと覗いてみるとフェイスブックのアカウントが「追悼」と言う文字と共に凍結されていた。

チャックは毎日偉人や賢人の格言をフェイスブックに投稿していて、最期の書き込みが以下の文章(拙訳と原文)だった。

どんな思いで書き込んだのかはわからない。ただ「戦争はもうさんざんだ。」と天国で言っている気がしてならない。

それでもまだ人類は今日も戦争を続けている。

チャック•サイザー氏のご冥福を心よりお祈りします。合掌。

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打ち破られた希望 - 樹木は自らの折れた枝や落ち葉を肥やしにして成長する。自分の老廃物で大きくなるのだ。同じように人類と国家もまた試練や苦難を通じてより良きものとなり、打ち破られた希望や挫かれた期待から全きものとなっていくのである。

BROKEN HOPES~~ As the tree is fertilized by its own broken branches and fallen leaves, and grows out of its own decay, so men and
nations are bettered and improved by trial. and refined out of broken hopes and blighted expectations.

F. W. Robertson
(Frederick William Robertson)
[Robertson of Brighton]
3 February 1816 – 15 August 1853

#ベトナム帰還兵 #フラッシュバック

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