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『劇場版 其ノ灯、暮ラシ』舞台挨拶レポート

(エリザベス宮地監督 MC:坪井篤史)

MOROHAのツアードキュメントであり、エリザベス宮地監督のセルフドキュメントでもある『劇場版 其ノ灯、暮ラシ』。2017年10月28日@シネマスコーレの舞台挨拶レポートです。貧乏性なんでまとめました。すでに見た人、これから見る人、パンフ代わりにどうぞー。

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- MOROHAのライブツアーに同行しながらお客さんの家に泊まって撮影したんですよね。

ライブ後、30人くらいに声をかけて断られて。OKもらえた1人くらいとラーメン食べに行って、家に着くのが0時くらい。撮影は2.3時間でした。その2.3時間でどこまでいけるか、最初は手ごたえもわからなかった。
面白いのは、出会ったお客さんと「DO IT」というフェスで約束してないのに再会できたことです。映画館という場所もそうですが、直に会えてダイレクトにつながっていきました。

- カメラはどれくらい回したんですか?

500時間くらいですね。130分のDVDをタイトにしたのが劇場版です。

- なぜ劇場版にしたんですか?

もともとMOROHAの「ツアーDVDを出したい」という発注だったんです。でも僕はMOROHAのUK君とやった『日本グレーゾーン』を劇場で上映し、劇場で映像を流す喜びに満ち満ちてる時でした。だから最初からスクリーンと暗闇がある前提で撮っていました。完成してカンパニー松尾さんに見せたら「絶対劇場でやった方がいい」と言われた。めちゃめちゃ嬉しかったですね。

- セルフドキュメンタリーは、2010年代以降は誰もやらなくなってきた手法ですよね。自分の赤裸々な部分もカメラで切り取っていく。それがこの映画の面白いところですね。

ちょうど撮影が一年前で、今日10月28日は祖父の命日なんです。家族でごはんを食べて、甥っ子がじいちゃんにもらったカメラを叩いてたのが今日の今頃。僕にとって10月28日は特別な日じゃなかったんですが、この映画を作ったことで強烈に覚えてますね。

- この手法を使っているからこその重さですね。見てる方は面白いけど、宮地さんにとっては辛いシーンも入ってますよね。この映画の面白さは2面あり、ひとつにはMOROHAの面白さ、もう一面がセルフドキュメンタリー。それが揃っているから面白い。でも、しんどいじゃないですか。なぜ一番しんどい手法で?

そう、辛いんですよ! 僕が言いたくない、知りたくもないシーンも入れてます。本当に僕はやりたくない。もっと楽な方法があるならそっちがいいです。多分理由はふたつあります。僕が映像を始めたのが10年前くらいで、セルフドキュメンタリーは当時流行ってたし、カンパニー松尾さんや松江哲明さんたちに影響受けてカメラを回し始めた。MOROHAに「宮地さん、俺たちを撮ってください。戦いましょう」と言われた時に、自分の中で一番の真剣勝負で使う刀が、僕の場合はセルフドキュメンタリーでした。それともう一個の理由は、MOROHAの歌詞がまさにセルフドキュメンタリー。結果的に相性がとても良かった。本当はやりたくない辛いことだけど、自分の一番真剣な戦い方がセルフドキュメンタリーでした。

- MOROHAファンの人にも映画ファンにも、どちらにも響くと思います。音楽ドキュメンタリー、あるいはエリザベス宮地の作品として見た時に、ここまで自分のことを赤裸々に出してくる映像は珍しい。松江さんが週刊文春の原稿で、今年のドキュメンタリーベスト10に入れてますよね。

え、そうなんですか?

ー今、初めて知ったんですか? 松江さんの10本のうち日本映画は3本。中村高寛監督の『禅と骨』、それと『シネマ狂想曲』『其ノ灯、暮ラシ』。

えええ! ヤバイ! ウソでしょ! そんなことってありますか!?

- 『シネマ狂想曲』はVHSの部分で引っかかったんだと思いますが(笑)。ドキュメンタリーを撮っていくしんどさがないと、観客に伝わらない、そこを自ら切り込んでいくじゃないですか。松江さんもセルフドキュメンタリーを撮っていた人だから、そのしんどさを分かってる。セルフドキュメンタリーとしての面白さとMOROHAとの協調性が、見る人に響くんだと思う。映画館で見るからこそ発揮されるものだと思います。

でもMOROHAだからだと思います。僕は音楽業界で仕事してますが、ツアーDVDなのに監督やお客さんの方が出てるなんて、MOROHAじゃなければ許されない。それをやっていいという人と出会えたのが嬉しいです。

- MOROHAが宮地さんを信用してるんですね。どう出てもいい、作品として見ようということじゃないかと思います。

僕とMOROHAの出会いは6.7年前で、お互い全然売れず苦渋をずっと味わってきたんです。MOROHAは結成10年ですが、ここ1.2年でやっと知られるようになった。辛い時もいっぱいあったと思います。それは僕も同じで。

ー 宮地さんが映画館で見せたいと思って作っていたように、この作品は映画館で力が出せる作品だと思います。MOROHAのファンから映画ファンになる人も、その逆もある。その面白さは詰まってると思いますよ。
では、最後に一言お願いします。

えっと、撮影中は劇場で公開したいという野心ばっかり先走り、撮れ高とか気にしてました。でも撮り終わって編集してる時に一番ぐっときたのは出会った人との再会や、皆さんの日常に溢れてるものでした。家族や友達とのくだらない会話、ありふれた当たり前の小さな小さな幸せに気づかせてくれました。それはMOROHAがきっかけなんです。多分MOROHAは今日もどっかでライブやってます。これは去年の映像なので、今の彼らはもっとヤバいライブを間違いなくやってると思います。ライブに行けてませんが、絶対やってると思います。そういう奴らなんです。勝ち負けはどっちでもいいです。でも僕も彼らに負けないように戦いたい。ずっと撮っていたいと思うので、そのためにはやっぱ自分と戦わなきゃなと思ってます。皆さんが2017年10月28日、シネマスコーレに来たことが思い出になれば嬉しいです。本日はご来場ありがとうございました!

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『劇場版 其ノ灯、暮ラシ』シネマスコーレ 公開中〜11/3金まで。毎夜20時20分~

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