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日々のこと 0928

遅い晩ごはんを食べていたら、病院から電話があった。「おばあちゃんが亡くなった」という連絡だった。電話を切った後、ごはんの続きを食べた。
私は彼女にとって初めての孫で、私にとっては祖父母4人のうちの、最後のおばあちゃん。昔からものすごく私を可愛がってくれた人だった。
年寄りの死は仕方ないことだ。順番だし、予想もあったし、静かに受け止めるしかないなあと思う。通夜や葬式の話へとすぐに移っていくこともできる。だから平気なはず。
でも、少しおばあちゃんの話をしますね。

往復3時間ほどかかる町に住んでいる祖母は、がんを患っていた。でも8月に会いにいったら、拍子抜けするほど元気で「なーんだ、元気じゃん!」と思った。気が強くて明るくて、東京大空襲も経験済みの戦中・戦後を生きてきた女。20年前におじいちゃんが死んでからも元気いっぱいだった。

私が会いに行った数週間後、祖母は入院した。「あと数日かもしれない」と聞いたのが昨夜のこと。急激に弱り、看取り状態に入った。意識も反応もないから会いにきても意味がない、とも言われた。迷った挙句、今日は朝から病院に行った。
病室の祖母はもう全然ダメで、日替わりで詰めていた親戚たちが「時々いびきをかく音で、まだ生きてるなって分かる感じ」と教えてくれた。

帰り際にふと「おばあちゃん、私だよ。わかる?」と顔を寄せて話しかけてみた。意外にも祖母は薄く目を開けて、ウンウンとうなずいた。「おばあちゃん、苦しい?」と聞いたら横に首を振り、「また来るね、ありがとう」と言ったら再びウンウンうなずいた。ちゃんと理解している人の答え方だった。私のことも、伝えた言葉も、ぜんぶ理解して答えていると思った。
全員が「すげー。さすが初孫!」と驚き、私は「なーんだ、やっぱ元気じゃん!」と思った。そしてトイレの個室の中で泣いた。その夜、祖母は旅立っていった。

最近、死の床にある身内にカメラを向けた佐伯慎亮さんの写真集を見た。そういう場面があるドキュメンタリーも見た。もっと前にもそんな作品をいくつか見たことがある。今日、私はおばあちゃんを撮れなかった。それをした人たちの凄さを思っている。周りにいる親戚たちの目や、カメラがスマホしかなかったことなんかを差し引いても、改めて凄いと思う。
でもおばあちゃんは肌もキレイだし、頑張って撮ればよかったかもしれない。90を過ぎてるけど、わりと可愛かったんですよ。

本当はまだ実感がない。とりあえず私を孫として可愛がってくれる人はこの世に誰もいなくなった。私はもう「おばあちゃん、来たよ」と甘えることはできない。長生きしてくれたから、ずいぶん長い間それをさせてもらえた。それだけは確かです。

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