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「モーレツ」の中に潜むもの。

今日は若い皆さんにお伝えしたいと常々思っていたことを、noteに書き留めます。
それほど長くは書きません。皆さん、お忙しいでしょうから。

いきなり本題に入りますが、「昔はモーレツに働いたもんだ(だから君もモーレツに働きなさい)」という先輩方の武勇伝は、真に受けないほうがよいですよ

なぜなら、今の時代にその言葉から連想されるものと当時の実態には、大きな乖離があると考えるからです。
私は20代の頃、その転換期を目撃したという自覚があるので、証言としてお伝えします。

ポイントは、「仕事で求められるスピードと密度の違い」です。

ケータイの社員支給やメールのオフィス利用が進んだのは、2000年代のことです。それまでの連絡手段は「電話+ファクス」でした。
ちなみにファクスが日本のオフィスに浸透したのは1980年代。それまでは、電話と直接訪問しか連絡手段はなかったということです。すぐには想像できませんよね。

連絡手段とコミュニケーションのスピードは深く関係するもので、この20〜40年ほどの間に「仕事の密度」は急速に増したと思われます。

現に、私が出版社に新卒入社した2001年時点では、月刊誌における取材アポの手法は「電話でお伺いを立てて、ファクスで企画書を送って、お返事を1-2日待って電話する」のが原則でした。

それから5年くらいの間に一気にメールでのコミュニケーションが主流になりました。
まさに「ファクスからメールへの転換期」でした。

ある先輩は、「今はアポはすぐに入りやすくなったけれど、じっくり誌面をつくる時間がなくなっちゃったなぁ」と嘆いていました。

また、ある先輩は、「昔は大阪出張でも泊まりが当たり前だったけれど、今は北海道にも日帰りになって慌ただしいわ〜」と呟いていました。

「地方の大学教授から原稿を受け取るために、2日がかりで電車を乗り継いだ」という話を聞いたときは驚きましたが、そういう時代がたしかにあったのでしょう。

そういえば、1990年代までの雑誌は、ゆったりとした誌面構成が目立ちます。
1人のインタビュー記事を豊富なビジュアル写真と共に、何ページにも渡って展開する。本当に贅沢なつくりです。
これは、編集センスや広告収入による要因だけでなく、「締め切りまでに確定するアポが限られていた」「取材1件にかけられる時間が長く、じっくりと取材撮影ができた」という当時の"時間の使い方"が成したものではないか。
そんな気がしてきました。

上記は憶測も含めておりますが、確実に言えるのは、当時と2020年の今とでは、業務を進めるスピードと密度が2倍、3倍、いや、ひょっとしたら10倍くらい違う。

昔の「モーレツ」の中には「ボーッとする時間」がかなり含まれていたのです。
きっと、そのボーッとしている間に、たくさんのモヤモヤが解決されたり、ピン!とアイディアが閃いたりすることが多かったことでしょう。
2000年前後よりも前に働き始めた先輩方は、たしかに今の若い世代よりも長時間、職場にいたのかもしれません。でも、時間の使い方のペースははるかに緩やかだったはず。ギュッと詰まった「モーレツ」ではなく、ほどよく緩急のあるふわふわの「モーレツ」。常に即レスを求められる「急急急急急急!」ではなく、時に待つことを許容される「緩急緩急緩急」という感じ。
だから、「長時間×長期間働けるサステナビリティ」を保てていたのではないかと思うのです。

だから、昭和版モーレツ武勇伝を鵜呑みをするのは危険だし、生産性のためにもよろしくありません。

今は特に会議のオンライン化が進み、ものごとが決まる速度と密度が増していると聞きます。
若い皆さん、サステナブルに働くためにも、ぜひ積極的に、ボーッとする時間をつくってください。

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