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明日、接種に行きます。

イタリアでは今、ワクチン接種がどんどん進んでいる。

12月末に「ついに長いトンネルの先の光です!」と華々しく始まったイタリアのワクチン政策は当初、全然機能しなくて、3ヶ月以上たっても接種人口は全然増えていかなかった。4月16日の時点で2度接種を終えたのは全国民のたった7%というお粗末さ。イスラエルやイギリスに大きく遅れを取っていた。

契約通りワクチンが納入されない、接種スタッフが足りない、予約システムがうまく機能しない。毎日毎日ネットやテレビで政府を非難する声が飛び交っていた。

600人接種の予定だったのに連絡がうまく届かず、接種会場に来た人はたったの80人。解凍しちゃったワクチンはどうしたんだ!なんていう大事件もあって、冷凍庫のプラグが抜けちゃった事故が起きている日本を、全く笑えない状態が続いていた。

ところがある時から急に接種のスピードが上がりだした。

トリノの60代の知人たちの話では、サイトから予約しても「予約受け付けました」となるだけで、いつなのかさっぱり連絡が来ず、ある日いきなり「明日の朝8時」なんていうSMSがきて焦る、ということだった。

大事な仕事が入っていたらどうするんだろう?と思ったけど、この場合、ワクチン接種の方が優先されるべきなんだろうか?

ところが私は5月4日にピエモンテ州の予約サイトから申し込んだら、3日ほどして1ヶ月後の6月14日という予約の連絡がきた。おー、やればできるじゃん、ちゃんと機能し始めたのかな、と思っていると、私より後から予約した何人もの友人たちが、私より先の接種日だというじゃないか。

え! するい! なんで!? と一瞬腹が立ったけど、考えてみると、どんどんシステムが機能し始めて1日に接種できる人数が激増した、だから後から予約した人も人数枠に余裕のある日にどんどん予約を入れていった、どうやらそういうことらしい。

(↓トリノに本社がある、コーヒーメーカーLavazzaも接種会場に。ここで接種した人は、コーヒークーポンももらえるらしい。笑)

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ワクチン自慢

同世代のイタリア人や在住日本人から、「ワクチンしたよ!」「私もしたよ!」という声がどんどん聞こえてきた。

「さやかはまだなの? そうなんだ」と言われると、なんだか流行に乗り遅れているような気分になって、ちょっと焦った。

本当は1回接種したからって、急に自由にどこでも行けて、なんでもできるわけじゃない。2度の接種を終えれば(ジョンソン&ジョンソンなら1回)
ワクチンパスポート(本当の名前はEU Covid-19) がもらえて、EU内は自由に旅行もできるし、コンサートなんかもPCR検査なしで行けるようになるという(ワクチンを受けていなくても、6ヶ月以内に新型コロナウィルスに感染して治癒していること、または48時間以内にPCR検査で陰性という証明があれば、パスポートがもらえる)。

でも日本が「鎖国」をしている限り、私たち外国に暮らす日本人は、EU発行のワクチンパスポートを持っていても、結局入国後14日の隔離期間を過ごさないといけない。2週間日本にいたいと思ったら1ヶ月必要になるというわけだ。

たまにしか会えない家族や友達や仕事の人に会う、安心できる日本の医療にかかる、そんなことを考えたら1ヶ月は滞在したい。そこに14日の隔離期間を足したら、自宅を留守にする期間が長くなりすぎる。

そもそもワクチンの効果は100%じゃないので、人口の8割程度が接種をして集団免疫ができるまでは、引き続き注意が必要ということだ。

それでもやっぱりワクチンを受けるのはなぜだろうと考えてみた。
ものすごく希とはいえ、死亡事故の危険だってあるのに。

「本音のところは受けたくないけど、家族や社会のため、接種者が増えないと再生しそうにない世界のためにワクチン接種してきました」。ちょっと前に接種を済ませたというトスカーナの友人がFBにこう書いていた。まさに私の思いにストライクだった。高齢の親に感染させないため、もう若者ではない私の健康を娘に心配させないため。

大切な人の死とか健康被害とか、倒産とか失業などなど、人類が引き起こしてしまったこのパンデミックをめぐる様々な不幸の、その責任の一端は私にもあると思うから。そう言ったら大げさでかっこよすぎるかな。

(↓ピエモンテ州の予約サイトでは、ワクチン接種への往復で使える、バスのただ券がダウンロードできるようになっていた)

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考え出すと怖くなる。

かっこいいことを考えても、毎日のように報道されるワクチン被害のニュースを読むと、本当に接種していいのか、という思いに引き戻される。完全に安全かどうかわからないものを自分や、大切な家族の身体に入れていいのか、という思いはぬぐいきれない。

特にアストラゼネカは、イタリアでは当初、高齢者の治験データがないから55歳以下の人のみと言っていたのに、若い人たちに次々と死亡事故が起きたので、今度は60歳以上のみ、となった。ところが接種が進んで行くと、いつの間にか若い人もOKになった。何がどうなっているのかよくわからない状態で、たくさんの人がアストラゼネカを警戒した。

私より先に接種を済ませた友人たちも、接種会場へ行ってアストラゼネカだって言われたらどうしよう、うまく他の種類に変えてもらうことはできないかな、と悩んでいた(イタリアでは基本的に選べないようになっている)。そして実際に接種に行ったらファイザーだった!と嬉しそうにメッセージを送ってきた。

(↓会場を仕切る衝立に、雑に書かれた「Pfizer」の文字を見てホッとした、と友人)

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私は「アストラゼネカだけが危険なわけじゃないよ。ファイザーだって死亡事故起きているし」と偉そうに分析してみせたりしていたけど、実際自分がアストラゼネカと言われたらどうしたらいいのか、決めかねたまま自分の予約日が迫っていた。

そして6月10日。アストラゼネカの接種を受けた18歳の健康な女の子が血栓で死亡するという事故が起きた。2日後の12日には「アストラゼネカは今後60歳以上の人にのみ接種する。1回目の接種をアストラゼネカで受けた60歳以下の人は、ファイザーがモデルナで2回目を」と政府が発表。

接種を進めることばかりに夢中になって、安全性をおろそかにするのは、もう本当にやめてもらいたい。

いよいよ明日

私は人生で花粉症というものになったことがないのだが、花粉、家ダニ、ハウスダスト、そして犬猫の毛にアレルギーがあって(なのに両方飼っているバカ)、喘息気味だ。でも8年前に森の中の家に引っ越して、喘息はほとんど出なくなったし、薬やワクチンにアレルギー反応を起こしたことはないから大丈夫だろう、と思うものの、一応ホームドクターに相談してみた。

すると「接種1日前、1時間前、そして接種後4日間、抗ヒスタミン剤を飲むように」と処方された。アナフィラキシーショックを避けるためなんだろうか?

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私は子供の頃から笑っちゃうぐらいの忘れん坊なので(小学生の頃、ランドセルを学校に忘れて帰ってきたことあり)、今日、タイマーをセットして1日前の分を飲んだ。明日は家を出るちょっと前に飲まないとだな、なんて何度も考えている。無意識に緊張しているんだろうか。

具合が悪くなることも想定して、明日から2、3日は仕事を入れていない。
のんびりネトフリでもみて過ごせたらいいな。

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