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スタッフの為の指針 10の図解


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■ 小諸市で地域のつどい場、オープン。

2019年9月ー

僕らは長野県小諸市にある古民家を購入し、たくさんの人に助けてもらいながら、自分達の手でリノベーションを開始。翌2020年4月、子供からお年寄りまで、障害のある方もない方も共に過ごすことのできる「地域のつどい場」をオープンした。

誰もがほっと一息ついて、ほっこり元気になれる空間。みんなで作る、家と暮らし。丁寧に一日一日を全力で脱力中!、、、のはずなんだけど。

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やってみてわかったこと。

それはスタッフの会話の方向がちょっと違うだけで、一日の暮らし方が全然違う感じになってしまう、ということ。生活の質は、人生の質に直結する。

もっとはっきり書くと、会話の内容の方向次第で、いくらでも「管理的」になってしまうということ。そんなの全然望んでないのに。。。

ところがスタッフにしてみると、

「ここで、私は何の仕事をすればいいの?」

の拠り所となる明確なビジョンが、まだない。会話がちぐはぐになってしまうのも仕方がなかったのだ。これはすべて経営者である僕の責任。

僕の中のアラートがずっと鳴りっぱなし。。どれだけたくさんの人が協力してくれていても、これではそのうち必ず離れて行ってしまう。。

。。。超絶、やばい状況!

心の部分って目に見えないから、再現性を確保するのが難しい。

それでも、「いつ来てもここは安心できるところだね」という信頼を獲得したい。共感と信頼こそが僕らの唯一の売りと言っていい。

そこで作ったのが、記事の表題。「スタッフの為の指針 10の図解」。

何故こんな形になったのか、スタッフがそれをどう受け止めてくれたのか、現時点での僕の気持ちを交え、お伝えしたい。

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■ 仕事しないでください、では全く伝わらなかった

尊敬する起業家の先輩達に勧められ、まず理念をじっくり考え、僕らにとって一番重要なテーマを抽出。「共に暮らしやすい地域をつくる」と据えた。大きく出たなという感じ。我ながら。

今の自分達にはまだ大き過ぎるけど、軸となる芯棒を地中深くに突き刺し、どれだけ強い磁場に吹き飛ばされそうになっても手を離さないで持っていられるか。この理念はそんな強さのある言葉だと思っている。

この芯棒と磁場の話は山梨でお世話になった、NPO法人かんむらの岡さんから頂いた僕の宝物。

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理念を実現するために、僕らはまず3つの指針を作った。

1.相手の良いところをどんどん褒める。

2.すべての人と持ちつ持たれつの関係性を築く。

3.自分たちの居心地の良さを大切にする。

内容は完璧だ。。何度読んでも。だけど具体性が全くない。ってこれ完全によくある自己満足型のダメなやつじゃん。。

言葉にすることはしないよりもいい。何もないよりはずっと具体的だから。

指針を読んで共感してくれる人がスタッフになってくれた場合、これほど関係を作りやすいことはない。だってすでに同じ方を見てるんだもん。

でも問題は、この指針を読んでも共感していない人の場合。実際のところ、見事なまでに3つの指針ではまったく伝わらないスタッフがいた。

現実はそう甘くないし、かといって自分をまげて運営を続けるのも違う気がする。譲れないライン、というものが確かにあることを知った。

ある日しどろもどろになった僕は、おもわず「仕事しないでください!」と声を荒らげてしまった。まずい。これでは。焦りが募った。看板だけではなんも共生にならんではないかい!と。

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■ 清水先生の言葉に、一条の光がさして見えた。

全員が同じ人間ではない。そんなことはわかっている。その先。

理念に100%共感してくれなくてもいい。スタッフであるならば、僕らの目指すやり方を正確に理解し、お互い様の関係づくりを壊さない在り方を体現してほしい。と願うのは経営者になって初めて味わう感覚だ。

仲間達の集う浦野千絵さん主催の寺子屋に参加した時、弱音をぶつけた。

「仕事を、数をこなす作業と捉えているスタッフにどうやって理念を伝えればいいか、困っちゃってます。。」

すると、佐久総合病院の清水啓介先生がこんな素敵なアドバイスをくれた。

「個人を攻撃することなく、ある状況を設定して、こんな場合はこんなやり方をしたらどうか、と図で示してみてはどうですか?」と。なんという紳士。かっこよい、とはこの人のことだ。

急にストン、と腹に落ちた。

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佐久病院には北澤先生と言い、清水先生と言い、ほかにも素敵すぎるドクターや専門職の方々、タレントが本当にそろっていらっしゃる!!はああ!

さて、話を戻そう。

ボランティアではないスタッフには、理念の実現へ向けたタスクを課す必要があるし、スタッフ教育は法人として成長するために必須だよ、と浦野さんから教わった。浦野さんは全国でこの業界の経営指南を展開している先生だ。

きょ、教育?

正直、僕は戸惑った。だってどう見たって僕は介護歴3年のぺーぺー。相手はその道何十年のベテランばかり。教わるのは僕らの方では。。。

人は何歳になっても、成長できる。

浦野さんは言い切った。ぎくり。つまり、その、僕は相手が成長しないだろう、とあきらめてしまっていることを見透かされている。。ような。とても恥ずかしい気持ちになった。

まず、できることからはじめよう。

僕は清水先生に頂いたアドバイスを胸に、さっそく事例集を作り始めた。

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つたない絵だけれど伝わればいい。伝えることに集中して描いた。一枚描いたら嫁さんが褒めてくれた。

まず理念から起こした3つの行動指針をベースに、嫁さんと話し合ってどうしてもこれだけは守りたい、自分たちの中で譲れないラインを10個にまとめた。

嫁さんは~してはいけない、と明確に禁止を伝えられたほうが守れるタイプ。僕は~してほしい、と伝えられたほうが響くほめて伸ばすタイプ。

まずは10個にまとめた指針を陰表現と陽表現2パターンの言葉で再編集し、両方を含めた内容の10シーンを設定した。当然左の絵と右の絵の登場人物は同じに。

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最も伝えたかったことが、この⑥番。リスクを回避するためにスタッフが手を出しすぎることでおこる「意欲低下」が一番のリスクと捉えること。

これができないと、お互い様の関係づくりは成立しない。

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2番目に大切な事と思っているのがこの⑧番。

居心地とか、働きやすさとか、どんだけ偉そうなことを言ってもそのためにしわ寄せになってしまいがちなスタッフがいつもいることを、さんざん味わってきたから。

前の記事でも書いたけど、たすけて、と口に出すのはすごく負荷の高いこと。だからこそ、この声を組織として一番大切にしたい。スタッフのことは置き去りにされがち。これで誰かが幸せになれるとは思えない。

「お客様対応」のために生活の場であるはずの介護現場で職員が疲弊しきっている姿をよく目にする。

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ここには2つの誤解が存在する。まず1つ目、お年寄りに敬意を持つ、ということは生きてこられた人生に敬意を持つことであって、対価としてお金を払ってくれたから敬意を持つわけではないこと。

2つ目、介護の現場は生活の場だ。生活の主体としてのその方の暮らしに欠かせない要素をサポートするのが介護の仕事だけれど、決してその方に仕える召使いや奴隷ではない、ということ。

一般のサービス業とは暮らしを共にする密度や頻度が全然違う。一方的な関係が出来れば必ずマウントの取り合いになる。

スタッフだって同じ人間だ。一部の人が過剰に背負い込むのは、おかしい。

いつだって、たすけて、といえる環境を大事にしようと思う。

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こうして、

清水先生のアドバイスから1か月以上かかってようやく図解が完成した。


■ あーわたし、今まで全部こっち(左側)ね!笑っちゃうわー!

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おそるおそる、あるスタッフにはじめて図解をみせた時の反応。

「あーわたし、今まで全部こっち(左側)ね!笑っちゃうわー!でもこれねえ、わかっていても難しいのよね~」

僕と嫁さんはその声を聞いた瞬間、言葉にならないほどの安心感を覚えた。僕はもうなかば泣き崩れる寸前だった。

人柄もある。義理もある。

でも、、そうじゃない。その時、確かにその方はご自分の現状を認めて下さり、そして心が動いたのだ。そう。きっともう、大丈夫だ。

、、人はすぐには変われない。

何十年も病棟の看護師として守ってきた自負も経験もある。その人が今、成長?しようとしている。今までの経験をひっくり返すような若造の、こんなつたないやり方に、付き合おうと決めてくれている。その気持ちが何より、なにより僕らには堪えた。人が成長する瞬間は、必ずいつだって美しい。

人はいくつになっても成長できるのだ。前に進むことを、諦めてはいけない。

その後、その方の表情がみるみる変わっていった。場の雰囲気が和やかになった。

1か月後の面談で、「正直こんなことして、(利用されてる方が)可哀そうじゃない、と思ってたのよ、最初は。笑顔の少ないところだなって。今までやったことないことまでやらされて。」と打ち明けてくれた。

「でもね、最近(利用されてる方が)すごく楽しそうで、足も上がるし、よく笑うみたい。」と。

僕の捉え方はちょっと違う。それは、きっとそのスタッフの気持ちが少しづつ変化し、楽しんで働けてよく笑っているからだと思う。気持ちが変わると、見えている風景も変わる。

またあるスタッフは、「受け取る人によって、人それぞれどう感じるかはわからないけどね。これがここでの方針なら、そうしなければならない、という感じ。私は今までその場のやり方に合わせてきたから。」という受け止め方をしてくれた。

高負荷の中、苦しみながら受け入れてくれた言葉だと思う。その方は誰かに何かしてあげたい、という気持ちを強く持っているからだ。こんな受け止め方をしてくれたのも、本当に意義深い。

■ これからの採用の話。

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指針を図解にしてあきらかに変わったこと。それは意外にも外部からの評価だった。

組織開発コンサルタントの白石真樹さんが、改修工事から手伝ってくださっていた由井晴美さんと一緒に、みんなの家タブノキをスペースレンタルする目的で訪ねてきてくれた。そのとき「これは採用のツールとして使えますよ。」と、さっとわかりやすい動画に興して教えてくださった。

そうか、入社した方への説明ツールではなく、あらかじめ指針を図解で伝えた上で就職先に選んでもらえたら、お互いにハッピーだな。。とそんな初歩的な気付きも頂いた。

さらには内外へこの指針を発信することで、指針としての在り方をより強くできる。タブノキはこういうところです、と発信することで選んでもらいやすくなる。組織は自分達だけよくなっても独りよがりにすぎない。どんどん手法をパクってもらえたら嬉しいし、仲間を増やすことがミッションの一つと思っている。

たかが図解。されど図解。これは導いてくれた人達の結晶だ。皆さんに感謝しかない。

当然、発信には責任が生じる。口ばっかりで実行・継続できなければ、ブーメランで自分達の首を絞めることになる。いいグルーヴを増幅するには、今この瞬間を、肩の力を抜いて全力楽しむしかない!

そんなこんなで僕らは今日も大笑いしながら、時速4kmで全力疾走している。

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続きはいつかまた。

noteを開いて、お会いしましょう。

それでは今日はこのへんで。ごきげんよう。


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