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「人にいわれた仕事をこなして生きるのか、それとも…」

「人にいわれた仕事をこなして生きるのか、それとも自分でやりたいことをやり通す道を選ぶのか。二つに一つだよ。」

2019年の春、独立を迷う僕の背中を 、佐久病院地域ケア科の北澤彰浩先生がそっと押してくれた一言だ。この言葉は、僕の心にずんと落ちた。その声は今もずっと胸に響いてる。

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僕は、迷っていた。そして、詰められていた。

地域の為のつどい場を作りたい。お年寄りも子供も、障害のある人もない人も、誰もが自分の役割をもって共に過ごすことのできる居場所を。

全国には、すでにたくさんの先輩達が素敵な居場所を作っている。あやかりたい。宅老所の相談員をやりながら、自分の中で具体的な活動のイメージがどんどんどんどん膨らめば膨らむほど、周りとの温度差は広がった。

思えば僕には、きちんとビジョンの実現に必要な要素を説明する勇気も、努力も全然足りていなかった。人のせいばかりにして孤立していた。

そこで頂いた冒頭の言葉。目が覚めた。やる後悔とやらない後悔。たとえ失敗しても、一度きりの人生だ。僕の人生は今までずっと後悔の連続だった。

覚悟を、決めた。

独立しよう。今までの人生でおそらく一番大きな決断だった。

そして僕なんかより、ずっと覚悟を決めてくれたのは嫁さんだ。この人に拾ってもらえて、僕は本当に幸せだと思う。「協力するよ。てか自分を曲げたままなんて生きられないんでしょ」そう言って笑ってくれた。いつだってこの人には頭が上がらない。まどかさんがいなければ、事業化は絶対に進まない。

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もう一人、「ぼくもいっしょに働くよ。」当時4歳の息子の大士君だ。三人で船出。大海原のような世の中に、三人ぽつん。さみしさは全然なかった。きっとうまくいく。だってこの事業は僕らがやらなくても誰かがきっとやるはずのことだから。分断されたこの社会に、今まさに求められているものだから。そう強く念じながら。

2019年7月、僕は勤めていた宅老所を辞職した。1年前のことだ。

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僕らは事業を始めるため古民家を探し、出会ったのがこの物件。めぐりあわせとしか言いようがない。家はただのモノなんかではなく、人格みたいなものを持っている。町も家も生き物みたいだと感じる。

空き家になった古民家は、町からどんどん姿を消している。なんとなく、元気がない。このままでいいはずがないという思いがずっとあったし、今もある。

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誰にとっても居心地の良い大きな木陰をつくる、という思いを込め、法人の名前を【株式会社タブノキ】とし、周りの人に助けを乞い、2019年6月事業をはじめるための借金をした。

そして2020年4月みんなでつくる「みんなの家タブノキ」として高齢者向けデイサービスから始動。7月障がい者向けサービス開始。地域のつどい場事業を順次始めている。

近所の子供やおばちゃんが行き来し、大家族のような日常。活動は今後どんどん深まっていくだろう。

■ 僕が変えた行動、それは「たすけて」と声を上げたことだけ。

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僕らは覚悟を決めた。すると、どうだろう。なぜかちょうどいいタイミングで次から次へと助けてくれる人が現れ、事業が見える化していく。ただ覚悟を決めただけなのに。今までと言ってることも考えてることも全く変わらないのに。

そう、人は行動でしか相手を判断しないのだ、ということをこの一年でこれでもか、というほど学ばせて頂いた。身に余る、幸せすぎる体験として。

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本当は今までだって学ぶ機会なんていくらでもあった。失敗の中にある自分自身の弱さから目を背け、行動してこなかったからずっと気づけないでいた、としか思えない。

そんな書き方をすると、弱い人、あるいは行動できない人はいつまでも学べないみたいじゃないか、ともう一人の僕が言う。そんなことは決してない。僕は今でもずっと弱いままだし、いつも斜め下を向いて歩いてる。

では何が変わったのか。

僕が変えた行動、それは「たすけて」と声を上げたこと。ただそれだけ。え?それだけ?と思うかもしれない。んなわけないじゃん、と。でも、本気の「たすけて」は、必ず人に届く。まわりにもし本気で「たすけて」と言ってくれる人がいたら、必ず耳を傾けれなければいけない。

たすけて、には実はとても勇気と覚悟がいる。なぜなら、助けを求めても断られるかもしれないし、冷たくされても、よるべなさは否めない。そんな中でたすけて、といえる人は、勇気を振り絞っている。

僕の場合そのよるべなさに耐えられず、だからいつも、いいよ自分で何とかするから、と考えてきた。つまり、ずっと逃げてきた。

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あのとき僕は、自分への過信を捨てた。捨てざるを得なかった。だって自分だけでは何も変えられなかったし、変わらなかったんだもん。

自分の無力さへの気づき、こういうのを諦観ていうのかな。。だからこの「たすけて」は切実な、ある意味必然の「たすけて」だった。はじめは、嫁さんに。

応えてくれるのか、不安だった。でも心から頼った。

応えてくれたことへの感謝をいつだって忘れてはいけない。心から本気の「たすけて」を言うとき、大きな不安を覚えるから、応えてくれたことへの感謝は、うわべなんかじゃない、本気の感謝に必ずなる。

思えばちゃんと人に感謝できたことがあったろうか、とすら思う。今までまともにたすけて、が言えなかったのに。

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たすけて、とありがとう、はセットだ。だから僕は今、すべての物事に感謝している。本気の本気で、たすけてもらい続けているから。何度も書くけど、僕は一人では何もできない弱い存在だ。きっと一番変わったことはここだと思う。

嫁さんに「たすけて」と言ってからというもの僕はもう、それはもう、完ッ全にたすけて人間に変身した。

おたすけマンではなく、たすけてマン。

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「あまりに稚拙な計画にあきれた。」「とにかく商工会議所に駆け込んで事業計画をみてもらい、一日最低1ツイートでいいからツイッターをはじめな。」ピンポイントで大人のアドバイスをしてくれたのは嫁さんがそれまで働いていた【パンと日用品の店わざわざ】の店主平田はる香さん。

独立を応援し真っ先に経営のいろはを指南してくれた。目から鱗だった。

その後もわざわざさんの社内に呼びかけボランティアグループを立ち上げ「深山さん応援隊」として古民家リノベ―ションをのべ50人以上で手伝ってくれた。わざわざの皆さんには本当に感謝しかない。

それからどんどんボランティアは増えていき、最終的にはのべ100人以上の人が自分の時間と労力を割いて、応援に来てくれた。

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ボランティアだけではない。小諸商工会議所の青木さん、お義父さん、義理の叔父さん、旅人のつっちー、やっちゃん、英工業の皆さん、ひろえさん、須田さん、由井さん、、、ごめんなさい書けば書くほど書ききれない顔が浮かび感謝で顔がひん曲がりそう。。本当に、皆さんたすけてくれてありがとう!!なんか涙もろくなっちゃったんだ。。皆さんさ、ほんと優しすぎるよ。。。

「地域には、そんな居場所が必要だね」

来てくださった方々、仕事関係、ありとあらゆる関わる人が口をそろえてこう言ってくれた。僕らの思いは少しずつ確信に変わっていった。

「学校でも仕事場でもない、ほっと一息つける居場所は、誰にとっても必要とされてる。しかも、たくさんあればあるほどいい。自分達だけが良くてもだめなんだ。」

そんな思いを伝え続けていると、人の輪が次の輪を呼んで、と、どんどん広がっていった。まるで1年前とは逆の回転、信じられないようなミラクルが毎日毎日起こる。

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■ ありがとう、は相手のためにある言葉。という気づき。

法人を立ち上げ、様々な先輩に、いったい何からはじめたらいいですか?と聞いて回る中で必ずもらうアドバイスが、「理念つくりな」だった。

僕らは考えに考えた。今まで仕事や遊びの中でまったくスルーしてしまっていたとこ。逆を言えばだからこそ失敗してきてしまったこと。あるべき根っこのとこ。それが理念。考えるなら今しかない。あとづけの理念ほどかっこ悪いものはない。

えらそうなことは、大っ嫌い。僕らは誰とでもお互い様の関係づくりをしたい。持ちつ持たれつでありたい。誰かが幸せなだけでなく、自分達が居心地よく幸せでありたい。そんな思いを込め、おそれおおくも「共に暮らしやすい地域をつくる」という理念を据えた。理念は大目標だから、かなーり大胆に、決めた。一歩ずつ、共に思いを形にするために。

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理念は、出来た。では具体的に居心地って何だろう。暮らしやすさってなんだろう。と深くインナートリップしていった先に見えたのが、「一方的な関係にならないこと」だった。なぜ人はすぐマウンティングしたくなるのか。

その答えが、ありがとう、にあるんじゃないかな、と考えた。時代が、ありがとうに飢えている。だったら簡単だ。僕らがありがとう、と伝える側になればいい。仮に相手と自分のどちらかがありがとう、と言われる役どころに収まるなら、相手に譲ればいい。こんな考えにたどり着いたのは、先ほど書いた「たすけて」という声をあげた経験からはじまったこと。それに応えてくれた嫁さんがいたこと。小さな一歩が、やがてきっと大きなグルーヴを呼んでくることを身をもって体験した。

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だから皆さん。たすけてってまず自分から口に出して言ってみよう。行動を変えるのって、きっとそんなに難しいことじゃないと思う。あなたの本気のたすけて、に拍手。誰かのたすけて、に応えてくれた本気のあなたにも。ありがとう、を相手に譲ったら倍になって返ってくると思うよ。たぶん!これほんと!!

さあ、もうお気づきの方も多いと思う。

人生の2択は独立するかどうかよりも、たすけて、がいえるかどうかだと。あの日僕の背中を押してくれた北澤先生に、この場を借りて感謝お伝え申し上げます!そしてまどかさん、いつもありがとう。感謝してます。あ、大士君もね。いつもありがとう。ここまで読み進めてくれた皆さん本当にありがとう。これからもどうか見守っていてね!

それでは今日はこの辺で。ごきげんよう。またね。

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