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「爆笑問題のコント テレビの話」の話:爆笑問題の新しい「ホームゲーム」



不安と期待の、「ホームゲーム」

 昨年9月9日に爆笑問題が、オフィシャルYouTubeチャンネル「テレビの話」を開設した。ネットでの発信に対して、爆笑問題の二人は、あまり積極的ではないように思っていたので、少々意外であった。

 25年近く、爆笑問題の大ファンを自負している私は、その新しい試みに、不安と期待の両方を感じた。

 歯に衣着せぬ芸風で、毀誉褒貶の激しいふたりは常に賛否両論を呼び、チャンネルを開設した前後も、一部の番組での発言をめぐって、「#太田光をテレビに出すな」というハッシュタグが、たびたびTwitterのトレンド入りしていた。YouTubeで発信することで、新しい「火種」を生まないか、という不安があったのだ。

 一方で、自分たちの裁量で動くことの出来る、いわば「ホームゲーム」ともいうべき形で、爆笑問題を見ることが出来るのは、楽しみでもあった。既存のテレビやラジオほど、スポンサーや時間の枠とらわれることが少なく、作り手にゆだねられる部分が多いのは、YouTubeを含めた、ネットでの強みだと、常々考えていたからだ。そうした新しいメディアにおいて、爆笑問題がどんな「味付け」をしていくのか、わくわくする部分も大きかった。


大人の「爆チュー問題」?

 『テレビの話』は、毎週金曜日(開設当初は火曜日も)にコントを1本ずつアップしていく。

 コントの舞台は、大手テレビ局のワイドショーの制作をしている制作会社である。
 太田光演じる番組演出・大炎上馬鹿ノ助だいえんじょうばかのすけと、田中裕二演じる局のプロデューサー・片玉良夫かたたまよしお(ふたりとも凄い役名である……)を含めた、4~6人(ほかのメンバーはBOOMER・河田キイチ、ウエストランド・井口浩之やダニエルズら、タイタンの芸人)が、シットコムのような形で、しゃべりの応酬でのコントを繰り広げていく。

 その時々の時事ネタを題材にし、基本的には『こち亀』のように、どのタイミングでどこから見ても楽しめる構成になっている。

 この構成は爆笑問題がネズミに扮して演じていたコント、『爆チュー問題』を彷彿させる。
 もともと『ポンキッキーズ』という、幼児向け番組の1コーナーであったが、視聴する「層」など気にせず、徹底的にボケていく姿勢は、当時からそのままであった。
 「英語のバラードを歌う」と言ったぴかり(太田)が、河島“英五”の『酒と泪と男と女』を歌うというような、相手が幼児だろうが「容赦なく」ボケていく姿勢に、当時5歳くらいだった私は爆笑し、お笑いの原体験となった。

 私と同世代の爆笑問題が好きには、このコーナーの存在が大きかったように感じているのだが、爆笑問題の周囲でも『爆チュー』の評価は高いようで、太田光代社長も「私が1番好きなタレント」とツイートしている。

「でたらめな歌」は『爆チュー問題』のメインテーマ


 空気階段の水川かたまりにいたっては、『爆チュー』の二人に共演できた感激のあまり、「芸能界でやりたいことがなくなった」とコメントした。


 幼児向け番組というメディアから始まった『爆チュー問題』が、爆笑問題に対して「初めて知った」、「深く好きになった」ファンを生んだように、YouTubeというメディアでの『テレビの話』が、あらためて爆笑問題を「新しく」や「深く」、見つめられるようになるといいなと思っている。


爆笑問題はいつでも面白い

 昨年から今年にかけて、爆笑問題含めたタイタンでは、大きな出来事が続いた、先述のハッシュタグの件に加え、太田光・光代宅に生卵を投げつけられるなど、ネガティブなニュースも少なくなかった。
 一方で、年末のM-1グランプリでは、わずか6組しか出場していないタイタンから2組も決勝に駒を進めた。結果として爆笑問題の「一番弟子」とも言うべきウエストランドが優勝し、キュウも大健闘をおさめ、一転して大祝福ムードに変わっていった。



 太田光はサインなど、一筆頼まれる際、「未来はいつも面白い」と書いているという。


 時事ネタを主戦場とし、自らもその流れのなかで、批判や賞賛を受けることのある人物の発言と思うと、この言葉の意味が、より増してくる。

 爆笑問題には『日本言論』シリーズなどの、漫才をト書き台本のように、活字にした「漫才本」も多いが、いつ読んでも新鮮に笑ってしまう。
 歴史というものが、全て地続きであり、どんな時事ネタも必ずいまの日常につながるのを、笑いながら実感するのだ。それどころか、固いニュースだとすこし飛ばされてしまうトピックや視点も、漫才を読むことで思い返すことがあるからだと、自分なりに分析している。

 いま起こっていることを、笑いという形で見つめ、未来へ踏み出す。爆笑問題のそうした姿勢が大好きだし、その過程を『テレビの話』で、これからずっと見ていたいきたいと、一人のファンとして声を大にして言いたい。

 ………………「大きな声出すなって、言ってんダ!」。



過去に、『爆笑問題カーボーイ』について書いた記事です


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