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ダチョウ倶楽部最強伝説

(初出:旧ブログ2018-01-15)

 お笑いを机上の空論で語る、というのはともすれば野暮なのかもしれない。とはいえ僕は、「終わらない松本人志対太田光のライバル関係」、「西と東の芸風の差」、「21世紀のビッグ3は誰か」、「自分が目撃した中で1番の"江頭伝説"はなにか」etc.と言った芸人論を気の置けない友人と語らうのが大好きだ。結論なんて出なくとも。
 こうした芸人論を語るに際して、「なぜみんな話題にしないのだ」というテーマがある。ダチョウ倶楽部である。不動の地位を持ったお笑い界唯一無二の存在であり、多くのフォロワーを生み出した国民的リアクション芸トリオだが、なぜかあまり語られることが少ないように思う。でも今日はハッキリと語ります。ダチョウ倶楽部は最強であると!

 まず3人のギャグを列挙してみる。「ヤー!」、「どうぞどうぞ」、「訴えてやる!」、「ムッシュムラムラ」、「聞いてないよ〜」、「くるりんば」などのフレーズ系、熱湯風呂、口論からのキス、竜兵が地団駄を踏むと、みんながその反動でジャンプするなどのシュチュエーション系の2つに大別することが出来るが、どれも共通してシンプルな、ものばかりだ。
 これだけひねりのないギャグ、リアクションだけで35年近くずっとテレビに出続けたお笑い芸人が果たしていただろうか?僕は小学校時代『エンタの神様』を見て育った世代だが、多くの若手芸人が、時には流行語大賞を取るようなギャグで輝きを見せ、いつのまにかキラ星のごとくブラウン管から去った。ワンフレーズギャグがひと時の輝きと引き換えに、芸人寿命をを縮めてしまう危険を孕んでいるのは周知のとおりだ。
 しかしダチョウ倶楽部はずっと僕たちの前に現る。「一発屋」と言われず、今のポジションを手にしたのは「たくさんギャグをやる」、「身体を張る」というこれまたシンプル過ぎる答えを出して。延々とやり続けることでマンネリを通り越し、もはや「名人芸」や「十八番」という類の物にしたのだ。それも誰もが真似できる形で。

 お笑い芸人が映画を撮ったり、小説を書いたり、「お笑い以外の」活動をすることについて、批判的なお笑い好きも少なく無い。"文化人気取り"なんて言葉もある。それまでバカやってたはずのお笑い芸人が年齢と実績を重ねたのち、急にお笑いとは対照的な言動をとる、というのは、確かに見ている側の心境としてはハシゴを外された感じがある。
そんなモヤモヤを感じている人に見て欲しいのはダチョウ倶楽部だ、3人とももう50過ぎなのに熱湯やローション、おでんまみれになり、後輩からも容赦なくいじられ、竜兵会の後輩、有吉弘行からは「志村の犬(上島)」、「しぼりカス(肥後)」、「短足天狗(寺門)」、「茶番劇集団(3人全体)」と散々な言われようだ。有吉の再起を応援した1番の恩人なのに…。実はちょこちょ俳優業などそれぞれ芸人以外の活動もしているのだが、ほとんど話題にならないのは、寄る年波にあらがい、熱湯やローション、おでんにぶつかるインパクトが強すぎるのだろう。
  だから芸歴に比例せず、3人はちっとも所謂「大物」に、「大御所」にならない。だが、彼らには「大物」にならないことにこそ意味がある。地位や名誉を捨て、目の前にある笑いに真摯に生きる姿勢は求道者という感じさえする。野村克也の”生涯一捕手”をもじって、「自分達は”生涯一リアクション芸人”だ」と上島が語っていたが、リアクション芸人という肩書き以外、全てを捨てた彼らこそ、最強の芸人と言える。

#お笑い #ダチョウ倶楽部

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