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「手ざわり」を大切にする生き方

昨日、夕方のライブまで時間があったので、美術館に展示を見にいくことにした。

神戸近郊でおもしろそうな展示はいくつかあったのだが、木彫りの彫刻をされている、はしもとみおさんという作家の「はしもとみお展ー時を刻むいきものたち」という展示を見にいくことにした。

ポスターからですら、癒される作品の数々であることが伝わる

地元兵庫で、彫刻家人生の前半部分を詰め込んだ展覧会をします。

「時間」をテーマに、モデルの動物たちが生きてきた時間と、はしもとみおが過ごしてきた時間をつないだ軌跡をたどります。

新作を含む彫刻やスケッチなど、制作の背景も紹介します。

たくさんの動物たちに一同に会える機会ですので、いきものたちへの愛を分かちあえたらうれしいです。

「はしもとみお展」作者HPの案内文章より

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会場である「神戸ゆかりの美術館」は、JR住吉駅で六甲ライナー(初めて乗った笑)に乗り換え、三宮から30分かからないくらいの場所だった。

外大時代、神戸で5年間過ごしたので再開発が進んだとしても、それなりに神戸の街に詳しい自負はあったのだが、

「神戸ゆかりの美術館」は正直聞いたこともなかった・・・けど、行ってみたらすごくいい美術館だった!

入ってすぐ、可愛すぎる生き物たちの彫刻が出迎えてくれた。

たまらん・・・
猫ってこういう表情するよね!!!作家さんの愛を感じる
確か「ひなた」ちゃんと名付けられた白猫ちゃん。目に力があって本当に生きてるみたい

はしもとみおさんは彫刻の作家さんなのだけれど、その制作過程でスケッチも大事にされているようで、貴重なスケッチ集もたくさん展示されていたんだけど、とにかくスケッチの時点でもう作品レベルが高すぎて思わず見入ってしまった。

圧巻のスケッチ数と、難しい正面から姿を捉えているのも凄すぎる
水彩画で1枚1枚丁寧にスケッチが描かれている
可愛すぎる
こういうわんこ、いる!!!!哀愁漂うなんとも言えない姿と表情に釘付け

ご近所さんが飼っているペットの動物たちから、動物園や水族館まで、はしもとさんが制作の対象にしている幅は非常に広い。

元々は獣医師になるのが夢だったそうですが、地元で阪神淡路大震災で起きたことで「ある日突然変わってしまう風景やいきものたちに強い衝撃」を受け、「失われていくかたち」に向き合う仕事がしたいという気持ちが生まれ、その後は美術の世界へ進むことになったんだそう。

その想いもさらに重なり、彼女の作品は本当に1つ1つが目に愛おしい輝きを宿していて、本当に生きているみたいだった。

作品からパーソナリティを極力排除したいという想いがあるんです。自分を無くしたい、どちらかといえば自然を受け取る器になりたい

展示内のコメントより

この作品展、実はすごくユニークな仕掛けがある。

特定のいくつかの作品に実際に触れることができ、木彫りのあたたかみを直接体験できるのだ。

木彫りの彫刻に触れるなんて!!!そんなことある?!

会場に置かれた可愛い肉球マークがその目印。
見ているだけでも十分可愛いのに、直接触って撫でてOKなんて!最高!

可愛すぎて飛ぶ・・・めっちゃ撫でてきました
黒柴の「月」くんが制作パートナーらしい。仔犬時代もたまらん

他にも凄すぎる傑作が数多く並んでいました。
特に愛おしかったものをこちらに残しておきます。

まさかのイグアナ。再現度が高すぎて、もはや剥製なんじゃないかとすら錯覚
上からたくさんのお魚たちが吊るされてる仕掛けも可愛かった
昔ミドリガメ飼ってましたけど、もうホンモノですよこれは(絶句)
山を擬態化したのか、この子が山と化したのか
大好きな雷鳥さんも!!!!!最高うううう!

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「手ざわり」というのは非常に面白い体験である。

日本人は、その作品がはっきり示している通り、手ざわりというものの重要性をずっとよく意識している。触れると快い滑らかな茶碗は、職人がその茶碗とそれを使うであろう人に心をこめていたことを伝えるばかりでなく、その職人自身についても何かを伝えてくれる。中世の職人が作った木彫りの仕上げも、彼らが触覚をどれほど重んじていたかをうかがわせる。触覚はあらゆる感覚のうちで、もっとも個人的に体験されるものである。多くの人々にとって、人生のもっとも心の通う瞬間は、皮膚の手ざわりの変化と結びついている。望まれない接触に対する硬いよろいのような抵抗、あるいは愛する時の肌のわくわくさせるような、たえず変わってゆく手ざわり、そしてそのあとにくるビロードのような満足、これらはすべて一人の体からもう一人へ伝えられ、しかも普遍的な意味を持つメッセージなのである。

「かくれた次元」(エドワード・ホール)p.92-93より

視覚的に彫刻の作品を眺めるだけの体験と、実際に自分の手で作品に触れる体験を比べたら、その作品に対して抱く印象も感情もきっと異なったものになるのはある意味必然かもしれない。

視覚的な印象に加え、実際の彫った跡を手のひらや指で触感的に体感できるわけだから、得られる情報量は2倍以上に増えるはずだ。

今回の「はしもとみお展」は、まさに視覚的には可愛くて、触感的には作者が作品とモチーフの生き物に込めた愛のあたたかさを感じることができる非常に素晴らしい展示だった。

彫刻作品なのに、さわって見ることができる

こういう意外な仕掛けって、子ども向けだけじゃなくて大人向けにも必要な体験だなと再認識。

自分も11月末に初の個展を控えているので、すごくヒントをもらえた気がした。

とりあえず🇦🇺で木彫りに挑戦してみたくなって、はしもとさんの木彫り入門の本も買ってしまった(照)

手の中に残ったやさしい手ざわりを大事にしつつ、今日も午後頑張ろう〜

<はしもとみお展―時を刻むいきものたち―>
開催日 :2024.6.29[土] 〜 2024.9.16[月]
開館時間:10:00 - 17:00※入館は16:30まで
休館日 :毎週月曜、祝日の場合は開館
開催地 :神戸ゆかりの美術館
     〒658-0032 兵庫県神戸市東灘区向洋町中2丁目9−1
URL  :https://www.city.kobe.lg.jp/kanko/bunka/bunkashisetsu/yukarimuseum/

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