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4.「ウサギとカメの競走」ぬるい話

ウサギとカメが勝負することになりました。
ウサギが時間と場所を指定しました。
「ゴールはあの山のてっぺんや。明日の午後1時にここに集合な」
「わかった」
あいつは遅いから俺が勝つに決まってる。
ウサギは速さでは自信たっぷりでしたが、体力に不安があったので、お昼ごはんをしっかり食べて、試合に臨むことにしました。
よーい、どん!
スタートし、ウサギはみるみるカメを引き離し、楽勝ムードでした。
ところが、お昼ごはんを食べすぎたウサギは血糖値が急激に上がってしまい、強烈な眠気に襲われました。
「あかん、ちょっとゴロンしよ」
お昼寝をしてしまいました。
その間にカメはがんばって、ウサギのところまでやってきました。
とんとん。とんとん。「おい、ウサギ。起きろ」
「なんやねん。むにゃむにゃ、むにゃむにゃ・・・・」
「起きてくれ」
「うるさい。俺は寝るんや」
「そんなこと言わんと、起きてくれや」
「いやじゃ。がんばってのろのろ歩いて、おまえが勝ったらええやんか」
「それがあかんのや。おまえの横を素通りして俺が勝ったら、カメはなんでウサギを起こしてやらんかったのか、なんて言うやつがおるねん。俺、がんばっても、悪者にされるんやで。そっちの方がつらい。どうせ俺は足遅いし、負けて当然や。頼むから起きてくれ」
「誰がおまえを悪者にしとるんや。教育評論家か」
「そうとも限らんけどな」
「まあ、言うやつは言いよるからな。・・・・しゃあないなあ。じゃあ起きるわ」
ウサギは起きて、カメと一緒に歩き出しました。
「なんで走らんの」
「起こしてくれたヤツをほっといて走るわけにはいかんやろ」
「おまえ、意外とええとこあるなあ」
そんなことを話しながら、お山のふもとまで来ました。
「うわ!川や」
ウサギの足が止まりました。
「俺、泳がれへん」
「あの山のてっぺんがゴールやって決めたのはおまえやぞ。途中に川があること知らんかったんか」
「地理を調べんかった」
「ツメが甘いねん。まあ、しゃあない。俺の背中に乗れ」
「ええんか?」
「遠慮すんな」
ウサギはカメにまたがりましたが、すぐにおりようとしました。
「まさか俺を竜宮城につれていく気ちゃうやろな」
「あれは別のカメや。俺は乙姫さんとは面識ないから、それはない。早よ、乗れ」
その言葉でウサギは安心し、そして亀の背中に乗ると、亀は優雅に泳ぎだしました。
そうして二人は無事に川を渡りました。
ところが、山道にさしかかると、誰が作ったのか、階段状の登山道になっていました。
「俺、こんなきつい階段登られへんわ」
カメが泣きそうになっていると、ウサギが、
「よっしゃ。今度は俺が助ける番や、背負って登ったるわ」
と嬉しそうな顔をしました。
「ええんか。俺、重たいぞ」
「大丈夫。任しとけ」
カメをひょいと持ち上げて、頭に乗せました。
ぴょん、ぴょん、ぴょん、ぴょんとウサギは力強く跳ねて、一段飛ばしで階段を駆け上がっていきました。
2人そろって山頂にゴールし、並んで腰をおろしました。
「これ、ウサギとカメの恩返し競争、という話にしてもええんちゃうか」
「ウサギとカメの互助会、でもええぞ」
2人は晴れ渡る青空のもと、気持ちよさそうに何度も深呼吸をしてから、一緒に帰っていきました。

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