催涙雨の降る夜に

くだらないこのステージで光るのはあなただけでもいい。なんてすてきな歌詞だろうな、と聴くたびに思う。

ふわふわと浮かぶ。大粒の雨が傘を打つ。七夕に降る雨は催涙雨というのらしい。晴れなかったせいで会えなくなった織姫と彦星が流した涙、と捉えられているそうだ。わたしはてっきり、雲で隠れているだけで二人でこっそり会ってるんだろうと思っていたので、おどろいた。

米津玄師の「Flamingo」を聴きながら、川縁をふらふらと歩く。みどり色に澱んだ小川。きょうは部屋に迷い込んだ水色のとんぼの子供をつかまえた。たぶん、わたしの祖父だと思う。祖父は亡くなってから、カイカイトンボやヤモリなどの身体を借りて、よくわたしのまえに現れる。そのたび、ああ心配してまたおじいが来ちゃったわ、と思う。

真実なんてどちらでもいいのだ。すべては主観。わたしはわたし。誰のことも、好きだし、好きじゃない。

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