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「何か」を考える――よのなか、まち、ひと  第3回

はじめに

noteには年が明けてはじめての登場となります中沢です。2022年もはじまって早くも1か月以上が経過しているんですね。今年は、仕事でも、みやっこベースでも、私生活でも、締め切りに追われない1年にしたいと思っています。(この原稿は投稿前日の午後に書き上げたので、一応追われていない(?)ということで)
さて、前回のエンディングで宣言した通り「地元」について考えてみます。それでは今年もよろしくお願いいたします!

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 なお、本連載記事はNPO法人みやっこベースのnoteに掲載されておりますが、団体の総意ではなく筆者自身の個人的な見解ですので、ご了承の上お読みください。
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地元ってなんだろう?

みなさんは「地元」というワードをふだんどのようなときに使ったり、耳にするでしょうか?自分が生まれ育った場所や生活している地域のことを、「地元」ととらえる場合もあるでしょう。大学進学や就職活動の際に、自分が暮らしている地域(または生まれ育った地域)を選ぶことを、「地元志向」と言ったり、周囲から言われたことがあるかもしれません。ここで言う、「地元志向」とは「地元への愛着」と言い換えることが可能ですね。
 すこし違う文脈でいうと、2010年代中盤から、地元志向が強く、地元に住む仲間意識の強い若者たちのことを、マーケティングアナリストの原田曜平さんが「マイルドヤンキー」とカテゴライズしたことを覚えている方もいるかもしれません。
 「地域」や「地方」という言葉は、さまざまな学問的な定義が存在していますが、「地元」という言葉は、案外あいまいに使われている場合が多いように思います。では、「自治体クリップ」という地方自治体と企業の事業連携のサポートをおこなうプラットフォームでは、「地元」を以下のように定義しています。

地元とは生まれたときからずっと住んでいる地域、もしくは子どもの頃に長く暮らした深く関わりのあるエリアであると言えます。自分のこれまでの道のりを振り返ったときに、たくさんの思い出が残っている場所がどこであるか、考えてみるのも答えを導き出す1つの方法です。
https://clip.zaigenkakuho.com/jimoto_teigi/

 なるほど。たしかにみなさんが考えていた「地元って何だろう?」という答えに近いのではないでしょうか?いま住んでいる地域で生まれ育った人は、その地域が「地元」になるということですね。一方で、里帰り出産などでお母さんの実家やその近くで生まれたという人も多いと思います。わたしも里帰り出産だったため、出生地は盛岡市(旧都南村)で生まれました。その後は、幼少期から高校まで宮古市で育ち、就職を機に宮古市に戻っているので、「地元=宮古市」ということですね。ただし、この定義も完全なものではなく、たとえば引っ越しが多かった人などは、暮らした期間によって「地元」を決めることは難しいですね。したがって、それぞれの生活歴やライフスタイルによって、「地元のとらえ方」はだいぶ変わってくるという感覚を掴むことができたと思います。

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〈photo1〉わたしの地元の山口地区では、毎年「わくわく収穫祭」という地元密着のイベントを行っていました。2019年の台風災害、そしてコロナ禍で3年間開催されていないので、今年こそは開催したいですね。

 すこし違う視点から「地元」を考えてみましょう。
わたしは消防団に所属して、火災や災害が発生すると地域防災活動にあたっています。消防団員になりたいという人は、基本的に「住んでいる地域」や「職場がある地域」を管轄する分団に所属します。実際のところ、消防団員の生活歴をみると、「住んでいる地域」だけではなく「生まれ育った地域」であることが多いです。分団の管轄地域というのは、「小学校の学区」と相関が高いという研究があります(小林・関沢 2004)。わたしが所属する宮古市消防団第9分団でも、分団員のほとんどが山口小学校と宮古小学校の卒業生です。そのため管轄地域で活動する分団を「地元分団」と表現します。幼いころから慣れ親しみ、知り尽くしている地域だからこそ、地元に密着した活動ができるところが「地元分団の強み」になっています。

みやっこベースと「地元」、そして今後

 みやっこベースの立ち上げのきっかけは、東日本大震災で被害を受けた地元の復興になりたいという、当時の高校生たちの思いにあります。また、「地元を知ること」「地元の再発見」をつうじて、「地元への愛着」を育んでいこうと取り組みを重ねてきました。
 みやっこベースのOB・OGたちは、「地元=みやこ」での経験や活動、出会いを出発点や転換点に、それぞれの人生を歩んでいます。
みやっこベースでは、みやこの子ども・若者世代の活動をサポートする育成支援事業にくわえて、子ども・若者の未来を支える基盤としての「地元」作りにも、地元の人材やサポーターと協働で取り組んでいきたいと思います。

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〈photo2〉みやっこベース設立前に行われた第0回高校生サミットの様子。

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 さて、やっと「地元」というキーワードについて、noteを書くことが出来ました(笑)前回のnote内で紹介した「マイプロジェクト」でも「地元」をテーマにしたプロジェクトが多くおこなわれています。マイプロジェクトについては、ニュースレターなどでも今後紹介されますので、ぜひご覧いただけたらと思います!
 さて、次回の連載のテーマはまだ決まっておりません。「こんな話が聞いてみたいよ」というご意見もお待ちしておりますので、お気軽にコメントをお待ちしています。ご要望にお応えできたかは、次回のお楽しみに。


【今回登場した本】
小林将之・関沢愛(2004)「地域特性と消防団員数の関連性に関する考察」『地域安全学会梗論集』(15:67-70)


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【筆者プロフィール】
1991年、現在30歳。
宮古市立山口小学校、宮古市立第一中学校を経て、岩手県立宮古高校を平成22年3月卒業。青森大学社会学部、筑波大学大学院人文社会科学研究科(修士課程)で社会学を学ぶ。地域社会学やライフコース研究、生活史研究の視点から、宮古市の消防団と東日本大震災をテーマにした研究をおこなう。平成28年4月に岩手県農業共済組合宮古地域センターに就職。
みやっこベースには、平成30年より理事として参画し、令和元年より副理事長となる。
そのほか、宮古市消防団第9分団、青森大学付属総合研究所客員研究員としても活動中。