独法への天下り情報をひた隠しにする神奈川県 審査会の答申を無視して「給料額」黒塗りの裁決

 神奈川県は全国の都道府県に先駆けて情報公開条例を制定した「情報公開先進自治体」として知られるが(1983年)、現在ではその金看板も色あせた感が否めない。

 県知事職員の再就職先を調査する手がかりに「求人票」がある。県キャリアバンク制度に基づいて企業や法人、自治体などから県に提出された文書で、これをみればどのようなところに再就職したか、およその見当がつく。

 筆者は2022年5月、県知事にあてて、「知事部局職員を採用する目的で県に提出された求人票」を開示するよう情報公開請求を行った。その結果、多数の求人票が開示されたものの、違和感を覚えた。まず、海老名市や厚木市などの自治体から出されたものについては、給料額や待遇、仕事内容などといった部分が黒塗りされている。また独立行政法人のものも同様に一部が黒塗りされている。
 

 個人情報だというのが非開示の理由だが、地方自治体による求人内容が個人情報であるわけがない。県は条例の趣旨をはきちがえていると考えた筆者は、同年9月29日、行政不服審査法に基づき黒塗り部分の取り消しを求める審査請求を行った。審査請求を受けて、知事は情報公開審査会(会長=田村達久早稲田大教授)に諮問(意見を聞く)、審査会は今年4月22日、一部のメールアドレスや職員名を除き、開示すべきであるとの答申を行った。しごく当然、常識的な判断である。

 答申はこちら 

 この答申を受けて、知事は非開示処分の見直しを迫られることになった。答申にしたがって、給与額などの非開示を取り消すだろう。そう予想していた筆者は、きょう(6月23日)とどいた裁決書をみて驚いた。海老名市など自治体作成分についてはすべて答申どおり開示するとの裁決内容だが、独立行政法人(神奈川県立産業技術総合研究所)のものは、答申を無視し、引き続き「開示しない」との決定をしている。

  天下り利権の根深さをあらためて感じる。

 この裁決の取り消しを求めて近く訴訟を起こす予定である。引き続き読者各位のご支援を仰ぐ次第である。

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