笑えばいいと思うよ

 若い知り人がApple Watch2を手首に装着して洒落乙な感じに澄ましていたから、ようし、若さを失って久しい吾輩だが負けてはおられぬ、尾形清十郎年はとっても腕に年はとらせんつもり、なんて古典落語『野晒し』の一節を頭で思いながら、年に似合わぬ負けん気を奮わせAmazonに発注したのがpebble time。

 12/7の深夜深更に注文し、翌日12/8の夕方に受け取った。

 値段がApple Watch2の四分の一ぐらいだから、それはまあ見た目はチャチで、おまけに日本語の対応もパッチを手ずから当てなければならない、など、色々と面倒なことは多いのだが、それでも反射型のカラー電子ペーパーだから付けっ放しで五、六日は充電いらずだったり、ユーザーが作成した膨大な量のウォッチフェイス(文字盤)を自由にインストールできる、など、なんつーか、フロンティアな感じ、出来上がっていない感じ、完成に向かって坂道を登っている感じ、そんな、一緒に育ててゆきたくなるような面白さに満ちていると思われて、届いてから三時間ぐらい、熱狂していじくりまわした。

 そんな興奮も冷めやらぬ深夜、ふと眺めたネットのニュース。目に飛び込んできたのは「pebble、買収。pebble timeの開発、販売停止に。現行機種のサポートも停止へ」の見出し。

 あのね、手にした晩ですよ。12/8の夕方に受け取ったその深夜ですよ。どういうことですか。なんたる間の悪さですか。なんの罰ゲームですかこれは。それあね、これだけのスマートウォッチが一万一千五百円で手に入るのだから、なかなかに売れておらないのだろうなあ、ということは想像できましたけど、それにしたって、何も吾輩が入手したその晩にこんなニュースが飛び込んでこなくてもいいじゃないじゃありませんか。

 こうなりゃいっそ笑うしかない。つーか、こんなこと、笑うために起きたと思うしかない。そう思って私は笑った。深夜に声を上げて笑った。近所の犬が吾輩の笑い声に反応して吠えたてたがそれでも笑いをやめずにいた。しかしそうして笑っているうちに気分がなぜか上がってきた。笑いは偉大だ。と、改めて思った。あははははははは。

 閑話休題

 12/10の朝にはAmazonにおけるpebble timeの売価が、一万四千八百円に上昇していて、さらに12/11になったらプライムも外されており、してみると、安価かつプライムの状態で手に入れることができた吾輩は、ひょっとして運が良いのではないか、間が良いのではないかと、思い始めているので、とりあえず『間がいいソング』を高歌放吟して過ごすことに決めた。

 閑話休題

 閑話休題

 酒は政宗 女は万竜 歌は流行りの間がいいソング なんて間が良いんでしょ

 閑話休題

 本当に話は変わりますが、過日、世田谷パブリックシアターで『エノケソ一代記』なる、三谷幸喜氏作・演出のお芝居を観て参りましたが、肩肘張らない感じの内容で楽しめましたよ。吉田羊氏が完全にかつての戸田恵子氏の役どころ(芝居のテイストもそういう感じ)だったのが印象に残りましたよ。世代は変わってゆくのですな。

 しかし、三谷幸喜氏作・演出の芝居でも空席がちらほらあったのだから、やはり、世の中の景気はあんまり良くなっていないのでしょうなあ。主役も猿之助丈だったのにねぇ。


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