ぶらぶらして生きよう

 人気というのはまことに面妖なもので、たといば昨今大流行りのPPAPを歌うピコ太郎氏なぞは、いま、テレビなどに出演すれば何をやっても観衆から大きな笑いが起こるのだけれども、これが、古坂大魔王氏になると、ピコ太郎氏と同じテレビ番組の中に出ていても、何をやってもそこそこしか受けないという、氏の従前からの芸風の通りの状況となる。面妖なことである。ピコ太郎氏と古坂大魔王氏は同一人物なのに、ピコ太郎氏を見る観衆が醸し出す空気は明らかにウェルカム、だのに古坂大魔王氏を見る観衆の空気は明らかに「誰だこいつ」というもの。まことに面妖なことである。
 『検索ちゃんネタ祭り』という番組を観ていてこの光景を目の当たりにした僕はマジ驚愕して座り小便をして馬鹿になったのでその勢いでAmazonでぶら下がり健康器を買った。

 閑話休題

 しかし人気というものは本来がそういうものなのかもしれない。サッカーのW杯はぐんぐんに見てもJリーグはぜんぜん見ないという人はいくらもいる。『スターウォーズ エピソードⅦ フォースの覚醒』は観ても、シリーズの外伝たる『ローグ・ワン』は観ないという人もいくらもいる。そんな感じだというのに、サッカーやスターウォーズを観た時には興奮したあああ、と、感に耐えない調子で云う人もいくらもいる。面妖なことですね。面白いことですね。しかしブームというのはこういう人々に支えられているのですね。

 閑話休題

 そうして私は勢いに任せてぶら下がり健康器を買ったのだが、その私はといえば年齢的にギリギリ、70年代末のぶら下がり健康器その一大ブーム、を体験している世代なので、つまりは、ほとんどの家庭において物干しハンガーと化したぶら下がり健康器の哀れな末路、みたいなものを数多見てきているから、今更ぶら下がり健康器なんて買うかなあ、とも思ったのだが、尋常ならざる肩凝り、加えて10代半ばからの、つまりは30年ものの猫背があるものだから、なんかこう、背中を伸ばしたい、まだ五十肩になっていないいまのうちに背中を伸ばしておきたい、なんだか近頃腰も重だるい、そう思って自分で自分を勢いに乗せて買った。本当はプレステ4を買うつもりだった。

 閑話休題

 さっきようやく組み立てが終わり試しにぶら下がったのだが肩甲骨周りが激烈に痛くてとても長時間ぶら下がっていられない。十秒がいいところだ。しかし機械の説明書きにも一日一回十秒から始めてください、と書いてあるからまあこれでいいのだろうと思って明日からもぶら下がることに決めた。

 閑話休題

 しかし人間というのは面白いものだなあ、と思うのは、そうして”今更”、ぶら下がり健康器を買った私は、それを発注してからこっち「ぶら下がり健康器 効果」みたいな検索ワードで死ぬほどググり続けていることで、しかも、そこで得られた検索結果の中から、ぶら下がり健康器は体に良い効果がある、という趣旨の意見ばかりをピックアップしていて、つまりは、自分にとって都合の良い情報、自分が欲している情報だけをどんどんと吸収している体たらく。のみならず、知恵袋的なサイトで、ぶら下がり健康器に対する否定的な回答を読むたびに、うるせーばーか、と内心でその回答者に毒づいたりしていて、なんというか、放っておくと人間というのは自分にとって都合の良い方にばかり物事を解釈してしまうものだなあ、と改めて思いましたとさ。業の肯定。

 閑話休題

 ではそんなことでまた。皆様にとって新しい年が良き年となりますようおいなりさん申し食べます。別段へそなめた。

 http://garbage-coll2.sakura.ne.jp/

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