極貧国際結婚、専業主婦の半日。そしてタイ人夫

朝6時6畳ちょっとの1Kの部屋に差し込む陽光で自然に目を覚ます。

とにかくミントさんの様子を見に行く。

タイ人夫がもらってきたミントさんを一日植えもせず放置してしまった事で絶望し暗黒面に落ちた(真っ黒になった)ミントさんだったが、その後必死の説得(植えたり水をやったり日に当てたり)により日に日に緑の葉を増やし、今は純粋に太陽に手を伸ばす姿が強く逞しく美しい。そして何より自分の力で育てるのは楽しい。今まで全く植物に興味を持ったことは無く、農場育成ゲームだけを繰り返していたが、実際に育てるのがこんなに楽しいとは思わなかった。ミントが豊富に育ったら、それを使って蚊除けスプレーを作ったり、ミント水を飲んだりしよう、ミントは抗ヒスタミンがなんちゃらでアレルギー症状も緩和するらしいぞと考えるとニヤリとしてしまう。そんな欲深いことを考える私は決して親が子供を育てるような気持ちでミントを育てている訳でもなさそうだ。何分なのか何十分なのか分からない時間をただミントさんを眺めて過ごす。時には感情的になったり時には分析的になったりしながら。

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その後思い立ったように歯を磨いたり服を着替えたりの、人としてやらなきゃいけないみたいな事をして

出発30分前にはタイ人夫を起こす。夫の準備をなんとなく手伝ったり手伝わなかったりしながら家を出て、夫を私の親戚の家に連れて行く。

夫はまだ来日したばかり。初めの1、2ヶ月は母から命じられたやって欲しい細々とした力仕事、雨戸の修理やら外壁のペンキ塗りやら庭の整備やらを行い、その報酬として母から月に10万円を受け取る。

私たちは実家から徒歩で通える場所で1Kの小さなアパートを借りて、今はその10万円でやりくりして生活している。二人して質素な生活には慣れているので普通に生活するだけなら10万円でさらにちょっとは貯金が出来る。ただ夫は来日したばかり。これから来たる地獄のような冬を耐え抜ける服どころか秋さえも耐え抜けない服しか持っていない事を考えると、夏服に比べてお高い防寒着を買ってあげなくてはならないだろう。日々やりくりでやっと出てくる数千円のお金では足らず、私の貯金を切り崩さなくてはならない。ケチな私には辛い事だが愛する夫のため。

話は逸れたけれど10万円、ちょっと少なすぎると思う人も世の中にはいるかもしれないが、器用で体力があるだけの日本語の出来ない、しかも気も弱い夫には丁度良い仕事の予行練習なので、感謝しても仕切れない。その上実家で働く日はお昼ご飯をご馳走し、夜のおかずまで持たせてくれる。

本日は親戚の家で倉庫を組み立てる力仕事があるので夫はそこにヘルプに行っている。朝親戚の家に送って行くと既に慣れているのか、真面目な夫は静かにサクサク自分に出来る仕事を始める。親戚のおじさんとはもう息がぴったりだ。夫がきちんと働いて人の役に立っているのを見ると自分のことのように感動する。作業着姿もかっこよくて遠くから何枚も写真を撮ってしまう。おじさんが明るく優しくて良かった。私には兎にも角にも夫の心の平安が大切なのだ。

そんなおじさんとの仕事も今日でおしまい。そして来月からは実際に会社で週4で働き始める。その会社も親戚のお兄ちゃんの会社だし、夫も真面目で器用だし、察して動ける人間だ。なんとかなる気はするけれど、不安。週の残り1−2日は引き続き実家の手伝いをして、なんとか収入は月10万以上にはなるだろう。

私はその後一旦実家に行き、実家で植えたミントさんの様子を見る。私のアパートのミントさんよりもまだまだ元気は無く、多くの葉も落ちてしまっているが、それでも新たな芽生えが見受けられる。楽しみ。

母が、まだ少し時間があるなら、とYouTubeで新たに覚えた方法でチーズチキンカツを作って、昨日の余った春巻と一緒に持たせてくれた。ついでにパン教室に私を誘ってくれる。お金は母が出してくれるらしい。パンが思い立った時にさくっとと作れたら、それは楽しいだろうな、とは思う。しかし、それどころじゃ無いという気もする。やりたいことや、やった方がいいことが私の脳みそのみならずアパート部屋や私の周りに常に充満している。しかし充満するイーストの匂いも捨てがたい。何より私は日々意識的に母の機嫌をとっているので、母が私にそれを求めているなら、タダである以上行った方が良い気がする。だんだんパン教室に気持ちは傾いてきた。全粒粉のパン・・作ってみたいな。まぁ良い。流されよう。次に母が本格的に誘ってきたら。

おかずやら何やらを持って、ありがとうありがとうと言いながら実家から出て気持ちの良い青い空の下アパートに戻る。

アパートに戻ると、TOEIC頻出単語音声を流しっぱなしにし、家事をやりたい分だけやる。後は夫に任せてしまう。夫の作業着を洗う。ストックのお茶を作りながら皿を洗う。排水溝は夫にやってもらう。家事をする、という行為に満足したので、TOEICのReadingの勉強を始める。10月3日のTOEICを受ける。多分10年ぶり。10年前、大学時代は500点代だった。次はなんとか600点以上・・と思って勉強し始めたのが6月、今は体感として700点・・ひょっとしたら800点代も夢じゃないんじゃないかと思っている。リスニングは9割程度取れるが問題は1時間半程度で私の集中力が切れ、頭痛が始まり手が止まってしまうことだ。10月3日までは生活の軸をTOEICに置こうと、思っている。とはいえあと一週間も無いのか・・と思うとちょっとだけ胃が痛くなるような気がする。

そういえば昨日、ヨーグルトが腐るのが怖くて慌てて蜂蜜を混ぜて作ったヨーグルトアイスが冷蔵庫にある。早く処分してしまいたいのでそれをお昼ご飯より先に食べる。不味くはない、ちょっと美味しい・・か?すごく美味しくはない。全然ない。なんとかかんとか全部食べきった。無駄にせずに済んだ。ちょっとお腹が膨らんでしまったのでまたTOEICの勉強をしながら、またちょくちょくベランダに置いてあるミントさんを眺めてしまう。朝から数時間で何も変わっていないだろうに、常に変わっているような気がして変化を探してしまう。

15時頃には家を出て夫を親戚の家に迎えに行く事を考えると、お昼ご飯もちんたらしていられないな、と思い、12時半には席を立ちお昼ご飯にとりかかる。母にもらったおかずを食べようかと思ったが、せっかく間違いなく美味しいものなので、夫と一緒に食べたい。一人の時は夫があまり好きでは無いものを処理してしまおうと、一人分余ったパスタとこれまた余っている、夫のあまり好きじゃないバジルソースでバジルパスタを作った。思ったより大量になってしまった上に味にパンチがなくてあまり美味しくはなかった。市販のチューブのバジルソース・・バジル好きなので思わず二本も買ったが、私には生かしきれなかった。とはいえこのパスタでバジルソースも使い切り、無駄にはしなかったので良かったこととする。

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私は多分料理の才能とか無いんだろうなと思う。料理をする時少しワクワクするが、感覚で作って美味しく出来たことは基本的に無い。いつも、不味くは無いが美味しくも無いものばかりだ。料理本通りに作るときちんと美味しくなるが、少しでもオリジナリティを出すとダメだ。なのにやってしまう。だからやっぱり距離を置いてしまう。ここも夫の担当となる。

しかし10月からは!10月からは夫が会社で働き始め私も今よりもっと自由な時間が増えるのだから、ちゃんとお弁当のおかずとか、作ろうと、作りたいぞと、作るんだと、思っている。本当に。

食後またReadingの問題をやっていると、最後の問題を解き終わり、問題集を一周した事に気づいた。昔は何事も続かなかった。ノートを使い切ったこともペンを使い切ったことも消しゴムを使い切ったことも問題集の最後のページまでたどり着いたこともなかったのに、今は出来る。自分は少しは変わっているんだと、思う。今でも消しゴムを使い切ったことは無いけれど。消しゴムを使い切れる人っているのだろうか。とにかく、コツコツ何かをすることが出来るようになってきたのだ。その代わりに手放したのは集中力のような気がするが、それはまだ考えないでおく。

そろそろ夫を迎えに行こう。今日は暑かったから疲れただろうか。




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