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耳の奥に残る、水の音。熊本県南小国町に行ってきた。

水の流れる音がしていた。まちのいろいろなところで。それが耳に残っている。ワンCAFFEさんの横の川とか、旅館の敷地内とか、車を降りた瞬間とか、覚えていないくらいあちこちで。
郡上八幡の、まちなかを流れる感じとも違う、自然の流れの音がした。清流のまちとかいう言葉は、聞いた記憶がないけれど。それくらい、まちの人にとって、日常の中に当たり前にあるのかもしれない。水がきれいって、こういうことか。私にとって、南小国を強く印象付ける音だ。

ドッグランのあるカフェ「ワンCAFFE」の横の川。

観光地だけど、それだけじゃない。

ご縁があって、お仕事をいただき、10月、熊本県南小国町を訪れた。

行ってみて、観光地なのだと気付いた。
リモートで打ち合わせをする中では、あまり感じなかった。それくらい、そのほかの南小国の魅力の話が盛り上がっていたのだ。魅力がたくさんあって、観光はその一つ、という印象だった。
行ってみるとやはり、黒川温泉の存在感は大きかった。温泉に詳しくない私はよくわかっていなかったけれど、実は全国的にも知られている場所だ。熊本空港から車で山道を越えて1時間半くらいかかる、決してアクセスがいいと
は言えない場所なのに。

黒川温泉のフォトスポットだと教えていただいた、橋から。

観光が主産業の一つであることは、まちのムードに影響を与えている気がした。移住者に排他的でない。新しいことに積極的。旅人にも親切。お店の価格とかに影響を与えている部分もあるらしい。
それでも、黒川温泉以外に語れることがたくさんあるってすごい、と思う。大きな観光地があったら、その話に偏ってもおかしくない。岐阜市だったら、どうしても長良川、金華山、鵜飼、岐阜城、という話にまずなりがちだ。その素晴らしさは言うまでもないけれど、それに匹敵するくらい語れるものがあったら、まちの魅力はもっと強くなる気がする。

仕事に家族を連れて行く。

実は今回、息子と夫も一緒に行かせていただいた。せっかくなら、息子に阿蘇の景色を見せたいなと思っていて、ぜひと言っていただいたのだ。(家族分は自費でしたが、関係人口づくりということで補助制度がありました)

仕事中は基本的に、夫に息子を見ていてもらったが、スタッフの方いちおしのお店「Karin」でのランチや、町内の絶景スポット・押戸石の丘の視察などは同行させていただいた。
仕事の話もするのに邪魔にならないだろうか、と思ったが、ぜひと言っていただいたので、夫の負担軽減のためにも、お言葉に甘えることに。

そうして迎えた当日。他のスタッフの方のご家族も一緒で、土曜日だったのでお子さんも連れてきていらっしゃったり。

Karinさんのプレートランチ。美味しすぎて、この後ケーキまでぺろっと。


うちの息子はやはり、ずっと喋り続けていて、他のお子さんたちのように長時間同行するのは無理そうだった。しかしそれも特に気にせず話を続けてくださったり、他のお子さんたちに一緒に遊んでもらったり。息子ははしゃぎ回って、仕事の話タイムには寝てしまった。

押戸石の丘から。

元々、仕事を通じて好きになっていた人たち。家族も一緒に動くことで、お互いに、より多くの面を見せ合う、というか、たとえ見せたくなくても見られることになった。
今まで、あまりそんな経験はない。でもそこには驚くほど、嫌な感じがなくて、なんだか温かくて、健全で、生きてる感じがした。仕事が人間の全部になることは不可能だ。仕事の人格だけでおつきあいするのは、実はどこか不安定で不自然なことなのかもしれない。もちろん、仕事だけのおつきあいにしておかないとうまくやれない相手もいるけれど。

リモートで聞いていた南小国の魅力の中でも大きなものが、人の魅力、だった。その一端を感じたのが、スタッフの方々との別れ際だった。
私ともう一人、首都圏から来られていた方が帰るとき、スタッフのお二人が、車が見えなくなるまで大きく手を振っていた。私も横で手を振りながら、こっそり胸打たれていた。お二人は本当に当たり前のようにそれをしていたので、あれ、それが常識なんだっけ、と一瞬わからなくなるほどだった。

私たちが帰るときには、さっきのスタッフの方の一人がまだ残ってくださっていたが、ちょうど小さいお子さんを追いかけているところだった。すると、小学生の上のお子さんが一人で、私たちが見えなくなるまで手を振ってくれた。

きゅんとした。
見えなくなるまで手を振る、おもてなしの心が、親から子へ、引き継がれている。聞けなかったけれど、それは南小国という土地に引き継がれているもののような気もした。

このまちの「ゆるさ」を。

我が家が普段、他の家族と遊ぶことが少ないせいもあって、道中、みんなで子どもたちを見ておく感じに、なんだか救われた。
子育て中の現地のスタッフの方も、似たようなことをおっしゃっていた。ここには、みんなでみんなの子どもを見ておくような感じがある、と。
川崎での日常でいつも、子どもに危険がないか、人に迷惑をかけていないか、ずっと気を張り詰めていることに気づいた。

スタッフの方に聞いた。このまちには、どこか、「ゆるさ」があると。スタッフの方に連れられて、まちを巡ったり、まちの人に会ったりする中で、なんとなくその言葉に納得した。
息子を受け入れてくださったのもそう。他にも、そもそも最初の集合から、私は地図を読み違えて、時間通りに辿り着けず猛反省したのだが、そんな私も受け入れてくださったりもした。温情というより、そこをあまり気にしていないという感じで。(私が言うのも大変申し訳ない話ですが。。。)
普段のリモートのお仕事ではいつもきっちりされている印象だったけれど、その土地まで行ってみたら、それだけではないゆるさを、確かに感じた。

そのゆるさを私の人生にももう少し取り入れられたら、いいなあ、と、じんわり思った。
子育てでもそう。人生でもそう。やるべきことは何かと考えて、動きづらくなってしまうより、興味のある方へ、やりたい方へ、もっと、ゆるく考えてもいいのかも。心惹かれることに素直に、動いてみてもいいのかもしれない。
南小国のゆるさを、私の中に。

「小田(おた)温泉芋煮会」にも行ってきました。マジックショー、地元の方に温泉客が混じって、すごい盛り上がり。でも、この後のプレゼント抽選会の方が盛り上がっていたらしい。

まだたくさん書きたいことはあるけれど、最後に、これだけは。

総合物産館「きよらカァサ」で阿蘇小国ジャージー牛乳とシャインマスカットとピーマンを買った。

阿蘇小国ジャージー牛乳は、移住してきたスタッフの方が「牛乳が嫌いだったけれどこれに出会って飲めるようになった」という一品。
乳脂肪分が高いはずなのに、なぜかすっきりしていて、癖がなくて、確かに飲みやすかった。

シャインマスカットは、房から落ちた粒の詰め合わせのようで、お惣菜用のような小さなパックにぎっしり詰まって350円。そんな値段で売られているシャインマスカットを見たことがない。
旅館で洗って食べると、めちゃくちゃ甘かった。残りは持ち帰って、それから数日、贅沢に食べ尽くした。

ピーマンは、何か野菜が買いたくて、飛行機で持って帰れそうな、軽くて日持ちするものをと選んだ。
帰宅した翌朝、ピーマンが楽しみで起きる。ウィンナーと炒めてみると、しゃきっとしていて、味が濃くて甘い。川崎のスーパーのものとは全然違った。

南小国町でお世話になった皆様への感謝を込めて、本当に思ったことばかりを。

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