ロッキン中止のおはなし

ROCK IN JAPAN FESTIVAL2021の中止が発表されました。これで2年連続の中止となります。

もちろん悔しいです、大好きな地元のフェスなので。ただ、誰かを責める、悪者を作って八つ当たりする、そんなことをしてもマイナスにしかならないことです。それはしたくない。

その中で自分としても色々と意見はあるのでこのnoteを書きます。


あくまで要請は茨城県医師会がしたもの

今回の中止でやはりオリンピックに矛先を向けていた人も多くいました。気持ちは分かりますが、逆の立場になった場合「オリンピック出来ないからフェス中止にしろ」と言われたら反論できるのか、と思ってしまいます。

もっと言えば、今回の中止は日本政府はもちろん、茨城県もひたちなか市も一切要請はしていません(むしろ、開催関係者の方に名前を連ねていたぐらいです)。ガイドラインを破っていた、というわけでももちろんありません。

ただ、茨城県医師会がその中で「中止を要請したい、開催する場合はもっと厳しくしてほしい」といった旨の提言をしました。現状、茨城県の感染状況は落ち着いていますが、東京都などは再び緊急事態宣言が出る可能性も否定できない状況になってきました。全国的に人が移動することが見込まれるフェスでもあり、その中での開催はリスクがあります。提言すること自体、その内容は個人的には納得がいくものでした。

もちろん「もう少し早く提言していれば」と思う部分もありますが、諸々の状況を見るにロッキンの主催者側との意思疎通が上手くいっていなかったのではないか、とも推測されます。憶測の範囲になってはしまいますが、仮に6月頃まで医師会側がロッキン開催を把握していなかった場合、ロッキン主催者側にも少なからず非があるのではないかとも思います。


オリンピックよりハードルは高かった

先ほど述べたように、ロッキン中止が発表された途端に「オリンピック中止にしろよ」という声がありましたが、そもそもオリンピックとロッキンでは前提条件が違うことも事実です。

オリンピックが現状1万人以下で開催する方向なのに対し、ロッキンは約2〜3万人での開催が見込まれていました(多少の前後はあると思いますが)。

またオリンピックは室内競技、もしくは野外でも着席観戦がほとんどにはなりますが、ロッキンの場合いくらステージを1つにしたとしても移動は伴ってしまいます。また開催時間もロッキンはほぼ丸1日と、長時間にわたって行われるイベントでもあります。

こうなると熱中症のリスクが非常に高くもあります。これらを踏まえると、ロッキン(他の野外フェスも同様)の開催は正直オリンピックで客を入れるより1段階も2段階もハードルが高くなってしまうのでは、と思います。


ひたちなかの医療体制

データが少し古いものになってしまいますが、ロッキンが開催されるひたちなか市の医療体制は全国平均から見てもかなり厳しくなっています。

例えば熱中症で倒れてしまった、という場合に現在の状況で全ての人を受け入れていては医療が逼迫することも考えられます。ましてや、その搬送された方が実はコロナに感染していた、となると院内感染のリスクも少なからずあります。医療従事者は大半の方がワクチンを接種されているでしょうが、入院されている患者さんはこの限りではありません。

この点は春に行われたJAPAN JAMやVIVA LA ROCKといった都市型フェスとも状況が異なります。万が一ロッキンをきっかけに医療体制が崩壊してしまった場合、「2度とロッキンが出来ない」こともあり得ます。コロナ禍で開催する以上、医療体制に影響を与えないやり方はかなり難しかったのではないかと思います。


「行かない、行けない人たち」の考え方にもアンテナを

今回のロッキンはもちろん地域住民の方で不安を持つ方もいらっしゃったと思います。また「行きたくても行けない」、医療の最前線で戦われている方もいらっしゃいます。

その方の気持ちを完全に無視したまま、「これまでうまく行ってるからやらせろよ」と態度が大きくなってしまいがちですが、やはり不安を完全に取り除けていなかったことも事実です。

あれほどの規模のフェスになると、地域住民の理解を得ることが不可欠です。その気持ちを蔑ろにして自己満足のフェスをしても、「来年から会場貸さないよ」となるかもしれない。JAPAN JAMは「あの会場いつもジェフ試合しているじゃん」とまだ言えますが、ロッキンはそういう場所でもありません。

コロナ禍のフェス開催ははっきり言って「綱渡り」です。今後夏フェスに行かれる方も多くいるかと思いますが、どうか「行かない、行けない人の気持ちを無視しない」ことも忘れないでほしい。これは行くなというわけではもちろんなく、そういう人たちを納得させられる行動をしていきましょう、という意味です。


ワンマンライブはまた別の話

今回はフェスでしたが、この先ワンマンライブ、もしくは通常のアリーナやホール、ライブハウスでのライブも行われていくかと思います。

ワンマンライブは比較的行動管理もしやすいため、緊急事態宣言が出てしまうような状況にならない限りは今のところ中止は出てこないのではないかと考えています(ただオリンピックが無観客開催になった場合、その前後の開催見合わせは覚悟した方がいいとも思います)。

しかしながら、ライブに行くとまだ鼻マスクをしていたり、雑談の声が少し危なっかしいな、と思うこともあります。まだまだライブ開催のリスクを下げる行動は観客側でもできます。改めて自分も含めて行動を見直しながら、「これならやっても大丈夫」と納得してもらえるようなライブ作りを観客主体で出来るとより良いのかなと、1人のライブ好きとしては思います。


エコーチェンバー(7/8追記)

今回のロッキン中止をきっかけに、TwitterをはじめとしたSNSでは「これまでクラスター起きていなかったのに」というようなツイートも多くあります。

実際その通りといえばその通りではあるのかもしれませんが、どうしてもSNSは「似た考え方を持つ人」「同じ趣味の人」でつながりやすいツールでもあります。そのコミュニティの中で「マジョリティだと思っていた」「世の中のスタンダードだと思っていた」ことが、実はただの錯覚だったりします。

どうしてもSNSは情報を選べてしまう分、視野が狭くなりがちなものです。「行かない、行けない人たちにアンテナを」という話にも通じますが、視野が狭くなって短絡的な批判になってやしないか(自分もなりがちですが、そういう批判ほど強い言葉、荒い口調になってしまいやすい傾向にあるように見えます)、そこは気を付けながら考える必要があります。

もちろん情報の取捨選択は大事なのですが、それは「自分に都合の良い情報を得る」「そういう情報を得て主張を正当化する」ものとも異なる気がします。この点は自分もまだまだ未熟ですが、特にコロナ禍ではより意識しなければならない考え方なのかもしれない、と改めて感じました。



おわりに

今回のロッキン中止に関して、例えば医師会のGoogleページが荒らされていたり、オリンピックや自治体に矛先が行ってしまうようなものも見られます。ただ決して今はエゴを通せるわけではない状況、「普通のライブやスポーツ観戦と、野外フェスではリスクが数段階違う」ことはどうか個人的には理解が広まってほしいと思います。

そして、散々ライブやフェスの中止や延期で辛い思いをしてきたと思います。ただこれを誰かに八つ当たりしても全くプラスにはならない。むしろマイナスにしかなりません。

「どういう形で音楽業界を守れるか」「連鎖で中止に追い込むより、どうすれば全て開催できるか」など、前向きな視点で物事を考える段階に来ているとも考えています。

誰かを責めても解決する話では全くありません(COVIDくんだけはクソゴミバーカだけど)。どうか罵り合いや八つ当たりではなく、尊重や対話が広まってほしいなと強く願います。

悔しいのは僕も同じです。ただ誰かを非難する、攻撃することに時間を費やすぐらいなら、もっと別のことができるはずです。

もうこれ以上人間を傷つける言葉は見たくない。今はそればかり思います。



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