見出し画像

琉球古典の解析

与論島のかりゆしバンドと民謡の作品の参考になればと思いつつ、琉球古典音楽の解析をしています。沖縄の先生に頂いた資料が膨大で、どこから手をつけたら良いのかわからなかったのですが、まさに今しかできない事。

口伝の音楽は全て覚える事が基本。ただ、そこまで時間はかけられないので、学習の手がかりとなるガイドラインを作ります。音程は近似値。後で整えます。

その土地にしかない音楽に猛烈に惹かれます。敬意を払いつつ、外の視点を加えて、現代に合う形を提案する事が音楽家の役割です。音楽は予言だとして、過去の素晴らしい音楽家達が残した作品の中に、今私たちが生きている宇宙に直結するメッセージがあります。土地や時代によって美しさの基準が変わる事もまた一興。感覚と知識を総動員して、音の本質を探る作業です。

今回、ガイドラインを作ったのは以下の曲。長いですが、忘備録も兼ねるのでお許しを。

かぎやて節
かせかけ
ごえん節
ゼイ
むんじゅる
伊野波節
作田
前野浜
加奈ヨー天川
四つ竹
夜雨節
天川
恩納節
本嘉手久
本貴花
松竹梅
浜千鳥
浮島節
瓦屋
稲まずん
花風
若衆こてい節
若衆揚口節
諸屯
谷茶前
貴花
辺野喜節
高平良万歳
鳩間節
鶴亀節

これだけ量があれば、きっと何か掴めるでしょう!一見、どれも同じ雰囲気に聴こえますが、詳細に聞いていくと、1曲1曲全然違います。自分が関わってきた音楽の範囲を超えて、「まさか、こんな展開!」という驚きの連続です。

・一つのフレーズが長く優雅。
・スケール(音階)が、思いも寄らない展開の仕方をする。
・変則的な拍が時々挿入される。
・繰り返しが少なく、組曲式、曲自体が長い(たまたま私が頂いた資料がそうなのかも)

ガイドラインを作っただけで、細かいフレーズの研究はこれから。もしも上記の曲について何かご存知の方がいらっしゃいましたら、是非情報をいただけると嬉しいです。

今回アプローチする与論の民謡は、笛の文化がない島なので、無限の可能性があります。だからこそ、丁寧に扱いたい。理想のバランス、完全な調和を探しています。

世界の音楽における笛(フルート)の役割に興味深く、例えば、今見ている琉球古典の笛と西洋のフルートでは美学が全然違う。でも、どちらも大きな視点で見れば、ただただ「笛」。息を吹き込むと音が出る、穴の空いた横に構える棒状の物体。

大陸から日本に伝わった笛、そこから独自に発展し日本で完成した能管。能管は能管で強烈な宇宙と共に存在します。大陸の笛と和の笛を繋ぐ中間地点として、琉球古典の笛が存在するのか、はたまた、インドネシアなどもっと広い視野に向かうのか。多分、広い視野のような気がします。

笛(フルート)がアンサンブルに付与する役割は、さまざまなパターンがあります。クラシックのフルートのように、音楽の骨組みが出来上がった上で、最後のブラッシュアップの役割もできれば、能管のように、笛の音そのものが楽曲の屋台骨になる事もできる。ジャズのアンサンブルでは、全ての楽器と対等に展開できるし、民謡の場合は、唄につかず離れず、寄り添うような場面もあります。

この、つかず離れず、寄り添うスタイルは不思議な魅力があって、まるでパラレルワールドのように、唄と少しズレた状態で並行に存在する事で、音空間に立体感が生まれます。

完全な調和は、完璧に揃う、という事ではないのです。お互いに寄り添いながら、宇宙を拡大していく事。これは社会全体にも通じる事ですね。

音楽って本当に面白い!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?