フルートカフェ第14回 「未知との遭遇!? フルートとモジュラー」
音楽のことフルートのことを様々な角度から探求するトーク番組フルートカフェようこそ。無意識の世界に広がる壮大な冒険の旅へ一緒にまいりましょう。
このシリーズはスタンドFMとYoutubeと両方でも配信しています。
フルートとモジュラー
前回のフルートカフェではフルートと電子音楽についてお話しました。フルートの音は内的宇宙と外的宇宙の最初の出会い音、その音を電子的に加工し、時間軸を多層的に組み合わせたり、空間そのものを自在に作り出したりして、情報的身体を拡張する楽しさについてお話をしました。
今回は、私の最新のアプローチ、フルートとモジュラーについてお話をします。実は9月24日に、フルートとモジュラーを使用したライブがあります。下北沢OTOOTOで行うのですが、下にリンクを貼りますので、こちらも是非ご覧ください。
今、こちらの準備を全力で行っていて、モジュラーをメインにしたライブは人生で初めての展開なので、今、自分が考えている事を残しておきたい、と言う事もあって、今回はこのテーマにしました。
モジュラーって何?
まず、モジュラーって何?と言う方もいらっしゃるのでは、と思います。 モジュラーという言葉を音楽以外の場で聞く事もあると思います。カメラとか、電話回線でも「モジュラー」という言葉をよく使いますね。
共通規格があるという事は、自分の作りたい音楽に応じて、自分だけのオリジナルのセットを作る事ができるという事。音楽におけるモジュラーは「ユーロラック」という規格で、
テクノやアンビエントでの登場も多いですが、私も含め、様々な新しい分野からの参入があって、今、とっても活気のあるシーンです。
音が出る仕組み
音の制御はざっくりいうと、電圧(コントロールボルテージ)で行います。モジュールに取り込んでしまえば、オーディオも、タイミングを指示するゲートも全て、電圧になります。電圧は全て値に置き換える事ができます。この値を操作していく事で思い描く音を生み出して行きます。
アコースティックの楽器から来るとちょっとイメージが掴みにくいかも知れないのですが、モジュラーの電圧(値)は、人間における気持ち、こういう風に動かしたい、と思う「エネルギー」に置き換えて考えると感覚が掴めるかと思います。
例えば、フルートで音を出そう、と思う時は、まず、この「出そうと思う」事がきっかけですよね。出そうと思わなければ、永遠に音は出ない。この「出そうと思ったエネルギー」をモジュラーにおける電圧に置き換えます。
次に出そうと思っただけでは、音は出なくで、実際に演奏する体制になって、呼吸を楽器に送り込む、というステップになりますが、これがモジュラーの場合は、パッチングでモジュールとモジュールを繋いで、やろうと思った事(エネルギ-)=電圧を繋ぎ、実際に音を発音する、というイメージです。
電圧のコントロールにも色々な方法があって、たとえば、タイミングを合わせて音を出すためのパッチング、音色を変化させるためのパッチングなどありますが、イメージとしては、アコースティックの楽器の場合、「〇〇をやろう」と思ったら、そのための身体の動きをする訳ですが、モジュラーの場合は、その機能を持つモジュールを選択して、音を発音するためのパッチングをしていく、という事ですね。
ただ、モジュラーがアコースティックな楽器やコンピューターやエフェクターと違うのは、ランダム性があるという事。
複数のモジュールを繋いで初めてモジュラーの魅力が発揮されるのですが、その接続の間にランダムな設定の可能があります。この予想不可能なランダム性がモジュラーの最も面白い所で、自分が設定したパッチングでも、まるで他人と演奏しているような効果が生み出せたりするんですね。
モジュラーをやろうと思った理由
私の場合は周りのススメがあった、ということが大きいです。「モジュラーだったら思いついた事は全てできる」という事を話してくださった仲間がいて、すでに前回紹介したようなフルートの音を加工する電子的なアプローチはしていたのですが、コンピューターやエフェクターだと、ライブ会場に運んで設置するのも大変だったりと、何かもっと理想の形に近づける方法はないかな、と思っていて、周りですごくカッコ良い演奏をするモジュラー奏者の方がいて、その方達の演奏を見ていて私もやってみたい、と思うようになりました。
モジュラーとFLを組み合わせるメリット
・音が綺麗
モジュラーはゲインが高いので、圧倒的な解像度の音を生み出す事ができます。フルートの音をモジュラーに取り込むと言う事は、私が知る限りでは前例がなく、実際にやってみるまで、どうなるか想像もつかなかったのですが、音を取り込んでみて、その綺麗な様子にびっくりしました。写真で言えば、初期のデジカメが4Kになったような衝撃。最初の段階から解像度の高い音は、色々加工していくのに最高の素材となります。
・レーテンシーがない
コンピューターで作る音楽も面白いのですが、リアルタイムで音を加工するとレーテンシーといって、音を処理する時の遅れがどうしても生じてしまいます。瞬発力が大事な音楽を演奏する上で、このレーテンシーの問題は結構大きくて、モジュラーにするとその問題が完全になくなるというメリットがあります。
・エフェクターなどに比べて持ち運びが楽
モジュラーは規格が決まっていて、電源付きのケースの中で自分の好きなように組み合わせる事ができます。新しい事を試したい時の組み替えが簡単です。エフェクターはつなぐ順番が重要という事もあって、組み替えも大事だったり、モジュラーと同じぐらいの事をやろうとすると、機材が増えて結構大変な事になります。
モジュラーとフルートの違う所
モジュラーとフルートのようなアコースティックの楽器との違う所は「どこからでもスタートできる」という事だと思います。フルートのように伝統的な教育法が確立された楽器は、良い指導者に出会い、指示通りの順番でトレーニングを積んでいくと、誰でもある程度の所までは上達できます。
モジュラーも1964年にモーグ博士がプロトタイプを発表していて、西洋の楽器と比べては短いですが、それでも、ここ数年発明された楽器という訳ではないのですが、自分の作りたい音楽に合わせて組み合わせる、という性質から、系統立てた学習方法というのが存在ぜず、同じモジュールでも奏者によって使い方が全く違ったりします。
従って、奏者が独自に奏法を開拓するスタイルが多くて、どこからどのように始めるというルールが
ありません。フルートの場合は、最初は呼吸法をやって、姿勢を体得して、ロングトーンをマスターして、運指を覚えて…. という明かな順番があるので、この「どこからはじめても良い」という発想に慣れるのが最初は大変でした。
でも、慣れてみると、フルートも、伝統があるから、こういう風にやらなければいけない、と思うだけで、実際はルールなんてなくて、自分がやりたいようにやる、というのが一番の正解だと思うようになりました。アコースティックでもエレクトリックでも「何がやりたいのか」という事だけが重要だという事ですね。
モジュラーの面白い所
・思いついた事は全てできる
・やり方は一通りでない。何か問題があった時の解決策が、何通りもある。
・演奏する人一人ひとりによって方法が全く違う。
・ランダム性
モジュラーは脳の相似形
思いついた事が全部実現できるという点において、モジュラーは脳の相似形であるという事ができます。また、そこには哲学や数学の要素も多く、丸ごと「リベラルアーツ」を詰め込んだ箱という事もできます。
現代版リベラルアーツの体現
リベラルアーツのお話は前回もしましたが、古代ギリシアで発展した「人間がどのようにして選択的自由を手に入れ、より豊かに暮らして行くか」を学ぶ学問で、音楽・数学・哲学・天文学などで構成されています。
選択的自由というのは今を生きる私たちにとっても重要なテーマですよね。モジュラーはまさに、このリベラルアーツが詰まった魔法の箱のようなもの。無限の可能性を秘めたモジュラーと、生命の呼吸であるフルートを組み合わせてつくった音楽をこれからお届けして参りますので、どうぞ楽しみにしていてくださいね!
とはいえ、私もモジュラーははじめたばかり。これから深めていく毎に、どんどん新しい発見があると思います。その都度また共有していきます!今は、「どこからはじめてもよい」というモジュラーの可能性を存分に楽しむ時期。皆様と音を共有できるのを楽しみにしています。
フルートとモジュラーの最新ライブ
9月24日、初めて私のモジュラーのフルセットを使用したライブを行います。是非、その瞬間を目撃してください。誰も聞いた事のない、新しい音楽をお届けします。
フルートと電子音をめぐる13の冒険。Miyaの最新の音をお届けする【13Views】ついに、フルモジュラーデビュー!フルートと電子楽器で誰も聴いた事のない新しい音楽をお届けします。
配信なし・会場のみのスペシャルなライブ。席数限定です。
こちらよりご予約ください
Miyaの最新情報 こちらで発信しています。チャンネル登録よろしくお願いします。▶︎https://bit.ly/Miyasroom
音声のみはこちらからご視聴頂けます💁♀️✨
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?