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やった事ないことをやってみる・ 豪雪地帯での野外演奏


長谷川時夫さんが館長をされている新潟県十日町のミティラー美術館にて、長谷川さん率いるStone Musicの一員として、雪上ライブに参加しました。

雪の森での演奏

最初にこのお話があった時、ー0°を下回る環境で、本当に演奏に出来るの!?という気持ちでした。極寒でのフルート演奏は、2010年にベルリンで経験しているので、金属が冷えて氷のようになる事は別として、とりあえず、出来る事は確認済み。能管と龍笛は竹製なので、寒さは問題もありません。

では、何が問題かというと、機材。それぞれの耐性温度がどれくらいなのか、調べる事にしました。ますMac Book Air が使えるかAppleに問い合わせたら、0℃では動作保証できないとの事。PCは必須ではないので今回は見送り、次に、FLでモジュラーを使うのに必要なオーディオインターフェイスのメーカーに問い合わせたものの、残念ながら返事が来ませんでした。以前、同じ所に機材のトラブルで問い合わせした時はすぐにお返事いただけたので、意外でしたが、返事がないというのはOKという事なのだろうと判断しました。

最後に肝心のモジュラーですが、詳しい人に聞いたら、結露さえ気をつければ、温度が低いのは問題ないだろう、という事。

やった事ない事をやる意味

おそらく、ー0°を下回り、雪が降る中、野外でモジュラーフルートの演奏をした人は他にいないと思います。機材がなかったとしても、日本有数の豪雪地帯、極寒での演奏はどうするか迷う所ですが、参加を決めたのは、やった事のない事をやってみたい、という気持ちでした。

雪は音を吸収する性質があります。あたり一面、白銀の世界で音を響かす事、想像しただけで宇宙が広がります。音楽家なら一度はやってみたい事です。

訪れた場の音を取り込む、というのは音楽的に重要な事です。古来より表現者は土地から土地を渡り歩き、地域を活性化させるという役割がありました。訪れた土地のエネルギーを取り込んで、次に繋げていく事は新しい表現の開拓のために必須な事でもあります。

思い起こせば、フルーティストとして活動を始めた頃、楽器そのものに色々な場所の音やエネルギーを覚えさせたくて、吹く用事もないのにありとあらゆる所にフルートを持って行っていました。おかげで今はフルートが身体の一部のように感じています。

↑歩き回って能管の演奏もしました

長谷川時夫さんの情報場

雪上で演奏可能な環境を作ってくださったのは、代々続く江戸の旧家出身で、日本で一番月が美しい場所を求めて、十日町に移り住んだ長谷川時夫さん、同じ宇宙観を共有し集まった地元の皆様、東京からの演奏家や撮影のチームを見事に段取りしてくださったオーガナイザーの皆様、たくさんの方の力が結集して実現した舞台。

話だけ聞いている時は本当に可能なのか半信半疑でしたが、実際にその環境に行ってみると、雪の中でも演奏出来るようサイドが覆われたテントや、お客様が寒くならないよう、焚き火をするなど、雪が多い地域ならではの工夫がある事に驚きました。

今回、Stone Musicに参加させていただいて、今までやった事がない事に取り組む事ができました。実現してくださった皆様、本当にありがとうございます。この経験を持って帰って、次の音につなげます。想像しただけでワクワクするような音楽。まだ誰も聴いた事のない音をつくり続けます。

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