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日本中で「お誕生日おめでとう」を~日本講演新聞

「感動」と「学び」を世界中に~日本講演新聞がお届けします。

 毎年やってくる2月11日の「建国記念の日」。祝日なので、会社も官公庁も学校も休みである。子どものときから何の疑問も持たず、ほかの祝日と同じ感覚でその休日を過ごしてきた。

 しかし、それなりに年齢を重ねてくると、この日はほかの祝日と意味合いが違うのではないかと思えてきた。

 祝日法によると、たとえば「成人の日」は「大人になったことを自覚した青年を祝い、励ます日」で、「こどもの日」は「子どもの幸福をはかると共に母に感謝する日」、「敬老の日」は「多年にわたり社会に尽くしてきた老人を敬愛し、長寿を祝う日」とされ、どれも深く考えなくても納得できる祝日だ。

 しかし、「建国記念の日」は「建国をしのぶ日」と祝日法で規定されている。

 「しのぶ」とは「過ぎ去った遠い過去に思いを馳せる」という意味だが、学校で神話を教えていないのに、建国をどのようにしのぶのだろうか。

 日本の建国の日は、日本書紀の記述を根拠に、紀元前660年の旧暦1月1日に初代天皇である神武天皇即位の日を記念して定められている。日本が国家としてスタートを切った日である。

 戦前は、その日を「紀元節」といい、国民の祭日だった。敗戦後、GHQから、「日本書紀は神話に過ぎず、歴史書として科学的な信ぴょう性に欠ける」などと横やりが入って、紀元節は廃止された。以来、国の起原が曖昧になった。

 アメリカ合衆国の起原ははっきりしている。1776年7月4日の独立記念日である。フランスもそうだ。フランス革命の発端となったバスチーユ監獄襲撃事件の1789年7月14日を建国の日としている。いずれの国も毎年その日は街中がお祝いムードである。

 中国は4000年の歴史と思っていたが、よくよく調べてみると建国記念日は毛沢東が天安門広場で建国宣言をした1949年10月1日で、今年で建国67年になる。つい最近生まれた国だった。そんな若い国ですら7日間の大型連休にして建国を祝っている。

 とにもかくにも国ができた日というのは、国民にとって一番重要な日なのだ。

 ただ、「この国に生まれてよかった」と感謝する日や、建国に思いを馳せる日が1年に1日だけでもいいからあってもよさそうなのに、そうなっていないのが、今の日本の現実ではないだろうか。

 たとえば、日本中の学校で、教師はこの日の前日、子どもたちに「明日は建国記念の日でお休みです」と言った後、どういう言葉でこの祝日の意味を説明するのだろうか。言葉を選びながら説明するのか、それとも一切触れないでごまかすのか。

 確かに昔過ぎてよく分からないところがある。なにせ世界最古の国なのだ。神武天皇が即位した紀元前660年の、新暦でいうとだいたい2月11日頃らしいということで、この日になった。

 紀元前660年というと、文字すらなかった時代である。古事記・日本書紀に書かれるまで1000年以上も口頭伝承だった。曖昧なのは仕方がない。

 一旦廃止された建国記念日を戦後、復活させようという動きの中で、この曖昧さが問題になった。「神武天皇は本当に存在したのか?」「なぜ2月11日なのだ?」と、当時の野党が反対して、なかなか国の「出生届け」は受理されなかった。

 やっとこの法案が国会を通過したのは、戦後21年経った1966年だった。「建国されたという事象そのものを記念してもいいだろう」と野党が妥協した。妥協案は「建国記念」と「日」の間に「の」を入れることだった。

 「産みの苦しみ」はどこの世界にもあるものだ。

 なにはともあれ2月11日は日本の誕生日である。しかも世界最高齢の2676歳。

 マスコミも小売業界も14日のバレンタインデーで盛り上がる2月だが、本当は11日のほうが大事なのだ。

 この日は、日本中でバースデーケーキを食べ、子どもたちにプレゼントを配る。そんな祝日にすると面白くなるのだが…。

(日本講演新聞 2016/02/08号 水谷もりひと社説より)

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