一休さんはなぜ国民的お坊さんになったのか
「ご高齢なのでこれが最後の講座になるかもしれません」と、送られてきたセミナーのチラシに主催者の方が一筆書き添えていた。
「これはもう行くしかない」と、東京で開催された境野勝悟(さかいの・かつのり)先生の講座に行った。
全国各地から先生のファンが集まっていた。
先生は古典文学の研究者だ。この日のテーマは「一休さん」だった。
歴史に名を残した僧侶は数知れないが、「とんち小坊主」として古くからおもしろおかしく語り継がれた僧侶は他にいない。
「屏風(びょうぶ)の虎退治」とか「このはし渡るべからず」など、子どもの一休さんが将軍や商人をぎゃふんと言わせる逸話は江戸時代からあり、そのすべてが作り話なのだそうだ。
誰が、何のために、一休さんだけ、その子ども時代の逸話を創作したのか。
境野先生の話を聞いて何となく分かった気がした。
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