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素数のちから

 素数は、自然数の中に散在している。一から百までの自然数の中には25個の素数が存在している。
その25個の素数を、自然数の中から合成数をふるい落として浮かび上がらせる「エラトステネスの篩」に必要な素数は「2、3、5,7」の4個で十分なのである。すごい威力である。
 
また、素因数分解を用いれば、全ての自然数は「素数と乗法」だけで表現できる。自然数全体の姿は素数と乗法によって明らかにできるかも知れない。素数の力は、はかり知れない。
 
さらに、素数の力を再認識させられるものに、次のような「ゴールドバッハ予想」がある。これは、「素数と加法」によって自然数全体の姿が見えてくるという「予想」である。
「2より大きい全ての偶数は二つの素数和にできる。」
「5より大きい全ての偶数、奇数は三つの素数和にできる。」
  
自然数を偶数と奇数に分けて考えることは、古くから行われてきた。
1742年に、ゴールドバッハからオイラーに送った書簡の中に書かれていた「2より大きい全ての偶数は二つの素数の和で表すことができる」という論述は現在でも証明されていない。
数学の未解決問題の一つであり「ゴールドバッハ予想」と呼ばれている。
 
「2より大きい偶数」だから、「4」も該当する。もちろん「4」は「2+2」と二つの素数の和にできる。
したがって、証明すべきゴールドバッハ予想は次のように言い換えることができる。
「5より大きい全ての偶数は二個の素数の和にできる。」
偶数が二個の素数和にできるのだから、当然「三個の素数和」にもできるはずである!?。(その逆は正しいとは限らない。)
 
6=3+3→2+(2+2 )         8=3+5→3+(3+2)
10=3+7=5+5→5+(3+2)       12=5+7→5+(5+2)
14=3+11=7+7→7+(5+2)     16=3+13=5+11→7+(7+2)
 
次に、「偶数」という言葉を、偶数と奇数を合わせた「自然数」に変え、「二個」を「三個」に変えて、ゴールドバッハは次のように言い換えている。
「5より大きい全ての自然数は三個の素数の和にできる。」
(前出の例では、矢印の先が「三個」の素数和になっている。)
この論述が「ゴールドバッハ予想」と同値であることを証明することは次のように比較的容易である。

すなわち、nを3より大きい任意の整数とすると、ゴールドバッハ予想が正しければ「2n=p+q」と二個の素数で表せる。(p,qは3より大きい)
そこで、「2n」の次の偶数は「2(n+1)=p+q+2」であり、既に三個の素数の和になっているが、(ゴールドバッハ予想を仮定しているので)二個の素数の和でもある。 
したがって、「p+1」も「q+1」も素数には成り得ないので、「q+2」が素数として一般性を失わない。
すなわち、「2n+2=P+(q+2)」と二つの素数の和になるはずである。
そうであれば、偶数「2(n+1)」より「1」だけ大きい奇数は「2(n+1)+1=p+(q+2)+1=p+q+3となり、奇数は三個の素数の和にできることになる。(二個の素数和には必ずしもできない。)
nは3より大きい任意の整数であるから常に成り立つことになる。
 
  7=2+2+3     9=3+3+3    11=3+5+3
  13=5+5+3    15=5+7+3    17=7+7+3
 
これで、任意の偶数「2n」より「1」だけ大きい奇数も、「2」だけ大きい次の偶数も「三個の素数和」にできることが示された。
 
次に、5より大きい偶数「2n」と奇数「2n+1」が「三個の素数和」にできると仮定する。
はじめに、5より大きい任意の偶数「2n」が「p+q+r」と三個の素数の和にできるとすると、p、qは3より大きい奇素数なので、「p+q」は偶数になり、rも偶数でなければならず、偶数の素数は「2」だけなので「r=2」となり、「2n=p+q+2=p+(q+2)」となり、「q+2」が素数ならば「二個の素数和」にできる。
(例)14=7+5+2=7+(5+2)=7+7
 
また、奇数「2n+1」が三個の素数の和にできると仮定するとその型は→「2n+1=(p+q+2)+1=p+(q+2)+1」と計算できて、「p+q+3」となる。(奇数は二個の素数和には必ずしもならない。)
(例)15=14+1=(5+7+2)+1=5+7+3
 
さて、ゴールドバッハ予想と同値な次の予想はまだ証明されてはいない。
「5より大きい全ての自然数は三個の素数の和にできる。」
 
ところが、「全ての自然数」を「全ての奇数」に変えた次のような「弱いゴールドバッハ予想」は証明された?かも知れないという。
「5より大きい全ての奇数は三個の素数の和にできる。」

2013年にペルー出身のハラルド・ヘルフゴッドが証明した?論文を公表し、2021年現在も査読が続いているという。

さて、一から百までの自然数の中には25個の素数が存在する。素数の割合は「0.25=25%」になる。
そして、一から千までの自然数の中には素数が168個なので、素数の割合は「0.168=16.8%」である。
このように、自然数の範囲を広く大きくしてゆくと、その中の素数の割合はドンドン低くなり、「10^28以下の自然数」の中には約「1.57%」だけになってしまう。
 
自然数の中に占める素数の割合は「低い」ように見える。しかし、素数の個数は無限であり、その無限個の全素数が力を合わせることで、素数の力はさらに大きくなる。
その例が次の「ゼータ関数」である。

<pは全素数、下の式はs=2の場合>


ゼータ関数の威力は底知れない。
次に一例をあげておくが、まだまだ未知の成果が期待できるのである。
<全ての素数から円周率との関係が>   


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