1から9までの数字で遊ぶ
1から9までの「9個の自然数」だけからでも
数学の世界を覗くことができる。
ここでは「数字遊び」を楽しんでみたい。
まず、助走として、「1,2,3,4」の4個の数字を考える。
4個の合計は「1+2+3+4=10」であり、「(1+4)+ (2+3)」と和を2等分することができる。
このことをもとに、次のように4個の数字を並べることができる。
一行目と二行目の和が「5」で等しい。
ところが、一列目の和は「3」で、二列目の和は「7」となり異なる。「2」と「3」を入れ替えても列の和は等しくならない。
どの行の和も、どの列の和も等しい値になる時に「正方陣になる」という。
したがって、4個の集合{1,2,3,4}は「正方陣」にはならないことが分かる。
これは、4個の数字を{3,4,5,6}のような数字に変えても同じ結果になる。
<正方陣>
同様のことを9個の数字の集合{1,2,3,・・,9}で考える。
9個の数字の合計は「45」であるから次のように三等分することにする。
→(1+5+9)+(2+6+7)+(3+4+8)
そして、次のように「3×3」のマス目に並べる。すると、どの列の和も「15」である。
しかし、行の和は「15」ではない。それで、列の中で順番を変えてみることにする。
例えば、「2と6」を入れ替えて「3と8」を入れ替える。すると、一行目の和は「15」となる。
次に「2と7」、「4と3」を入れ替えると、どの行の和も「15」になり、次のような「正方陣」となることが分かる。
こうしてできた「正方陣」は一例であり、他にもたくさん存在する。まずはあなたも一つ見つけてみて欲しい。
そして、さらに、正方陣の中には対角線上の和も「15」になるものがある。それは「魔方陣」と呼ばれている。
<正方陣の接続>
さて、一つの正方陣が見つかれば、一列目と二列目を入れ替えたものも正方陣になり、一列目と三列目を入れ替えたものも正方陣になる。(一行目と二行目を入れ替えても、・・・)
すると、次のような2種の正方陣ができる。
Aも含めると、3種の正方陣が示されたことになる。
そこで、これら3種の正方陣を接続すると、次の例のように、第一列目には「1,2,3,・・・,9」のすべてが並ぶことになる。
<新しいパズル>
ここから、新たなパズルが考え出される。
すなわち、どの列も、どの行も「1,2,3,・・,9」の数字が入り、各「3×3」のマスにも異なる9個の数字が入るようにせよ、(ただし、正方陣でなくてもよい)というパズルである。
(「河北新報」の日曜朝刊に毎週掲載され出題されている。)
<3次の魔方陣の作り方>
なお、3次の魔方陣の例を示しておく。
この魔方陣の作り方は前掲の式 → →
→ (1+5+9)+(2+6+7)+(3+4+8)
をもとにしていることが分かる。
(1+5+9)を第2行に配置し、(2+6+7)と(3+4+8)を各行に
配置している。
「5」を中央に置くことがミソで・・・
魔方陣の作り方はいろいろ知られている。
上の魔方陣は「4、5、6」と右斜め上に数字が並んでいる。スタートを中央最上に「1」を置き、右斜め上に進む。枠外に出た場合は反転して枠内に「2」を置く。「3」も同様である。
「3」の右斜め上には既に数字があるので「3」の真下に「4」となる。
「6」の右斜め上は「頂点」であり、数字と同じように真下に「7」となる。・・・
この方法では「3×3」ばかりではなく「奇数×奇数」の魔方陣を作ることができる。
<9の剰余類を用いる>
ところで、自然数を偶数と奇数の二種に分けるように、「9の剰余類」によって九種に分ける方法がある。
「1,2,3,・・・,9」はそのままであり、「10」は「9」で割ると「1」あまるので「10≡1 mod 9」と考えるのである。すると「11≡2」であり、「12≡3」であり、・・・となる。(実は、「9」の倍数は「9」で割ると余り「0」なので「9」ではなく「0」とするのである。)
9の剰余類は{1,2,3,・・・.0≡9}である。その「加法」の一覧は次のようになる。(赤は5+7=12≡3 mod9を表す)
この表を原本として、第二列と第四列を入れ替える。
同時に、第三列と第七列を入れ替え、
第六列と第八列を入れ替えるのである。
そうすると、ほぼ目的の表が出来上がる。
あとは「0」を「9」に変えるだけで完成に至る。(縦枠、横枠もとる)
⇓ 0→9
この表の原本では縦枠も横枠も「1,2,3,・・・,8,0」であった。しかし、これに限定するものではない。「0,1,2,・・・,7,8」でも
「2,3,4,・・・,8,0,1」でもかまわない。
また、作成例では「列の交換」を行ったが、「行の交換」も交えてよいのである。そうすることで、多様な完成形が出現する。試みて欲しい。
なお、このような「数字遊び」は、「整数論」や「群論」と呼ばれる数学の世界を覗く窓、入口になると信じている。
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