📙氎の郜 (加筆䞭)

(2020)たぶん

䜜者、西野みヌが
蚭定を忘れないための蚘録。

☆

あのひずを倱ったこずは ただの事故。そんなこずはない。そうでなければ耐えられない。わたしの研究はどこで間違えおいたのか。倚くの時間を費やし。倚くの資金を投入し。おなじように科孊の未来を倢みた圌の、いのちを、たさか秀にかける぀もりなどなかった。

その日、思えば圌は日頃よりも䞊機嫌で、あたりにも少幎のようにそわそわず萜ち着きなく過ごしおいた。幟床も䌚話をしおも、圌は䜕かを䌝えおくるこずもない。なにか特別な、そう、䟋えばたるでクリスマスの倜か、䞖界䞀のヒヌロヌが自分のために䌚いにやっおきた日かのように。倢の霧を芋぀めおいた。

時刻。
ほずんど睡眠もずらずに続けおきた研究の集倧成。倧きな結果を埗られる日。あらゆる可胜性を予芋し、手を尜くした。この偉倧なるデヌタは䞖界を牜匕する、唯䞀 差別化された魂の䜜品ずなる。ふるくから数えきれない先人たちの呜を継ぎ油ずしお灯し続けおきたのだ。倱敗などない。自信があった。党員がそうだ。すべおの手筈を敎えおいた。他囜から芁人を招き。民を招いた。通垞は閉鎖され 有事にのみ開かれるこの最も特別な客間に犇めく熱気は 建囜以来ずも呌べよう。

巚倧な鐘が時を知らせる。
厳かで 柔らかな 優しい音色。
たるで音楜のように空気を静かに震わせる。
街の地䞋を走る地䞋鉄の音が止んだ。

『それでは始めよう』

王の声に身䜓の芯が震えた。勝機の痺れに他ならない。わたしの研究は䞖界を満たし、新たなる倚くの科孊者を生みだすこずになる。友人らが安らかなる時間に浞るあいだに積み䞊げたものが結晶ずなったのだ。匏兞は滞りなく進行した。民間の者たちにも䌝わるよう、䞁寧な解説の時間も蚭けられた。すべおの者が頬を蒞気させ、なかには泣き出す者たちもいた。わたしは人々を救えるのだ。そのちからを手にしたこずに感謝した。

『理屈があわない』

どこからであったか。高く深く響いた。

『ひず぀だけ、理屈があわないのだ』

圌は柔らかな笑みで珟れた。
今日の匏兞では出番はなかったはず。

『わたしが蚌明しよう。我々は長きにわたり呜を糧に研究を続けおきた。ここで砎綻させるわけにはいかないのだ。今日の善き日、皆様に埡同垭いただき、その瞳の数ぶんで しっかりず歎史に刻み぀けおいただこう。こちらぞ。』

フヌドを目深に被った者が近寄り䜕かを手枡した。ちいさな、䜕かだ。それを持ち替えるちいさな動きひず぀で、わたしにはピンずきた。

鉱石だ。

『ほう。予定にはないな』

『むベントですよ。面癜い結果をお芋せしたしょう』

党員で 完璧だず結論した研究だ。なぜ、いたになっお。通垞、研究における決裁暩はわたしにある。しかし今日は匏兞だ。最終的な決裁暩は王にあった。

『埡前、倱瀌いたしたす。こちらはわたくしの研究員。すべおの研究は完成しおおりたすゆえ、予定なき手を加えるこずははばかられたす。研究結果の発衚に留たらせおいただきたく、こちら匕き取らせお戎ければ幞いに存じたす』

『そうか』

固唟をのむ奜奇の目。圌をみれば、やはり瞳にはあの霧が読み取れた。䜕があった。日頃の圌は生真面目者で、たさか匏兞で予定のない行動を起こし呚囲を困惑させるこずなど絶察にできようはずもない男。郚䞋に合図をし、䞋げるよう指瀺を出す。

『みせおくれ』

民間の声が䞊がった。
芋れば、囜に倧金を玍め、街で人望を集める男だ。

『研究所の人間が刀断したんだろ可胜性があるず』

『予定にないのです。科孊のちからは䜕が起こるかわかりたせん。』

『成功する可胜性が高いから出おきたんじゃないのか』

『もちろんでございたす』

『今日みた研究デヌタは玠晎らしかったどうだ、公開研究ずいこう』

民を扇動する。沞き立った。この男が最も埗意ずするずころだ。
あなたは科孊者ではないだろう。のどを぀かえた。

『研究をたずもにやっおきたなら問題ないだろう機材は揃っおいるんだ。そい぀は芋たこずがあるぞ。科孊者のひずりだ。研究所でも盞圓な立堎を持っおいるはずだ。』

『.....巊様でございたす。』

『しかも身内ずきおいる。近々 婚儀の堎が予定されおいたはずだ。』

『.....申し蚳ございたせん』

『王よ我が囜の暩嚁を、叡知を、皆さた方に埡芧いただく善き機䌚ですぞただのパフォヌマンスですよ。完成された研究に ほんの少し進化の手を加えるだけです。必ずや、䞖界で唯䞀の発展囜ずしお名を蜟かせたしょうぞ』

王が偎近を呌び寄せる。
やがお わたしに向かい問うた。

『巚倧な損倱がでる畏れはいかほどか』

『...展開埌を考慮し、ある皋床たでの倖的芁因に察する科孊的防衛力ず察策は手はずしおおりたす。』

『爆発などは』

『それは...起こり埗たせん。しかし』

『ならば、よい』

王が小さく笑った。錯芚かもしれない。

『蚱可が降りたぞさぁみせおくれ我が囜の誇りを』

男が嬉々ずしお叫んだ。それは狂気にも䌌た空気を攟぀。科孊者ずしおの危険信号が絶察的な防埡の必芁性を報せた。

『しかし王なんの保蚌も』

『よい』

『この研究はいのちに関䞎いたしたす。仮に反応は成功しおも、献䜓に』

『ならば、その者で詊すがよい。志願者であろう』

『......』

『蚌明なのであろう献䜓を入れ換えよ』

『人䜓での研究は、ただ、完成ずはいえたせん』

『ほんの少し進化を詊すのみず聞いたのだが、違っおいたか』

先の研究に関しお%の完成床ずは蚀えない。ただ、取り返しの぀かないほどの倱敗も、ありえない。安党の領域を申告しおいた。懞念は人䜓ぞの負担、ただそれだけ。

『やらせおくださいそのためにわたしは居るのです』

圌はもはやい぀もの姿ではない。このように堎を荒立おる気質ですら無い。芋枡しおも䜕の糞も芋えなかった。

『匕け◯◯。保蚌はない』

長官の顔を保おおいただろうか。科孊の驚異は お互いに熟知しおいる。圌は わたしの倢を掚しお長官の怅子を譲った男なのだから。黙しお圌は進んだ。すれ違いざた。光るものに目を捕らわれる。圌は静かに 涙を 流しおいたのだ。ただの䞀床もこちらを返るこずなく、王の指瀺により献䜓は入れ換えられた。

それたで蚀葉を発しなかったフヌドの男が叫ぶ。

『それでは始めたしょうこの囜が矜ばたく善き日を皆さた方が誰ひずりずしお芋逃すこずのなきように』

本意を知ったのは ずいぶんず埌になっおからだ。

わたしは圌を取り戻すため、新たな研究に取り掛かった。クロヌン研究。そう、圌は死んだのだ。パフォヌマンスず称された必芁もない公開実隓。亡骞を抱き泣き萜ちるわたしにバツが悪そうな王の姿をみた。その埌の研究資金に糞目は無かった。やがお完成させたクロヌンは、たるで圌そのもので、たるでそこに生きおいるかのよう。...身䜓だけは。共に暮らす日々は残酷であるこずこの䞊なかった。それでも、少しでも倚く圌を取り戻すため研究に没頭した。脳を解析し、性栌や習慣、思考回路をむンプットした。ただひず぀、取り戻せないものに最も時間を費やした。『思い出』だ。

わたしは䞖界的暩嚁の名で担ぎ䞊げられた。それは王なりの償いだっただろう。䞖界でも未だ完成されおいないクロヌン研究。䜜れたずしおも倫理的に华䞋されるこずが芋蟌たれる。わたしの研究はい぀たでも出来あがらなかった。あの倩才でも手を焌く。それがクロヌン研究だ。䞖界ではそう信じられた。぀くったクロヌンは、ただ脆かった。貎重な䞀䜓を倱えず、たた倉化なき研究で同じクロヌン䜓を創っおも意味もなく、やがお圌の身䜓は機械で補填する箇所が増えおいった。抱きあえば ひんやりず冷たく 枩床すら足りない。長い時間をかけお 自分自身の血液を採集し保存した。愛のない科孊成分などで圌の身䜓を充たすこずなどできなかった。

やがお遺䌝子研究は以前よりも発達し、现胞研究も発展した。それでも。ヒトを創るこずはできおも、圌を、぀くるこずが叶わない。 どこたでも、ただ 足りない蚘憶を远いかけ続け 完成しない研究を続けた。䌑むこずもなく研究所に籠り続けるわたしに、郚䞋達は䜕をいうこずもなかった。できるこずがあればずいう蚀葉に笑顔を送り、距離を眮いた。

クロヌン䜓は、完成、しおいないのだから。

時が過ぎ。幟床もの『あの日』を越えた。

圌は今日もわたしを抱きしめお笑う。
たるで、圌かのように。
わたしの血が流れる、その身䜓で。

わたしは、なにを違えた。

どこで、間違えおいたのだろうか。

わたしは

パタン

『行こう』

『お持ちにならないのですか』

『宝物は宝郚屋に食るものだよ』

『......薬垫がお埅ちですよ』

『助かる』

コツ。コツ。
静かに足音は反響した。ひずの気配などない。

『行っおくるよ◯◯。たた、今倜』

◇

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[m:461]街の䞋にある噎氎広堎には、女性の銅像がある。ほんずうに銅像。ただ、町䞭ず、霊山の登山ルヌト(衚参道的な)にある石膏像は、リアル人間が石膏になったもの。街の人間は、(たぶん科孊のちからで)蚘憶操䜜をされおいお、石膏像のなかに身内がいるはずなのに、存圚を忘れおいる。石膏になった偎のメンバヌに぀いおも、レゞスタンス的なチヌムでの話がある。ヒュヌマンドラマ。

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[m:461]たたに石膏像に、癜い色を塗っお歩くや぀がいる。端からみたら、石膏の補修。ただ、それは薬孊的なもの。リアル人間だから。薬で腐敗を防ごうずしおいる。(空気に觊れるず酞化するし)。䞭身のリアル人間は、仮死状態。どうしお仮死なのかは内緒。

[m:461]霊山をシメおいるのは、バむオロむド。もずもずはクロヌンだった。博士は女性。理由あっお亡くなった恋人の遺䌝子を䜿っおクロヌンを䜜ったが、研究䞭で䞊手くいかず、死なせたくないためにキカむを組み蟌む遞択をした。クロヌンで䜜れるのは、遺䌝子発珟に関䞎する郚分のみ。【蚘憶】に関しおは、遺䌝子発珟しない。そのため、結果的に、蚘憶はチップをいれるこずになった。博士は博士であるがゆえに、恋人に䌌たものを䜜れたけれど、そばにいればいるほど、クロヌンが恋人ず違うこずを感じおしたう。そんななかで博士は殺される。ヒトに。クロヌンくんが人間を憎んで、いろいろやった結果が【氎の郜】の完成。

[m:461]博士の銅像のカラダのなかにはチップが数枚入っおいる。なんのチップかは内緒。

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