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「配筋検査って何をするの?」~一級建築士を持っているだけの凡人がいきなり設計部になった話♯4

今回は構造監理者が現場に1番長く居座る、配筋検査のお話です。

私は現場配属だったこともあるため検査を受ける側も経験したことがありますが、昨年1年は構造監理者としてRC造の現場2現場、S造の現場2現場に行きました。
現場がかぶっていた時期もあるため、多いときで週3~4日は現場に行くなんて事もありました。

今回は、配筋検査の内容について浅く広く説明していこうと思います。



1.配筋検査って何?

まず、配筋検査の説明を簡単に。
RC造(鉄筋コンクリート造)の場合、外から見えるのはコンクリートだけですが、コンクリート中にはたくさんの鉄筋が骨のように組まれています。
そしてそのたくさんの鉄筋たちは、強度やサイズ、長さ、本数や組み立て方など、設計図によって事細かに指定されています。
これがいわゆる「配筋」で、配筋が図面通りにできているか確認するのが配筋検査なわけですね。

鉄骨造や木造の場合でも、基礎なんかは鉄筋コンクリート造の場合がほとんどのため、必ずどの現場にも配筋検査というものが発生します。

そして配筋検査はいつやるのかというと、配筋が終わった状態、コンクリートを打つ直前に行われます。
もう少し細かく言うなら、配筋が終わって型枠の返しが終わり設備や電気の配管も終わり、いつでもコンクリートが打てますよ~の状態。

このタイミングというのにも理由があって、鉄筋って正しくコンクリートの中に埋まっていないとすぐに錆びて劣化してしまうんですね。
キーワードとしては、「鉄筋のかぶり」「コンクリートの中性化」というものですが今回詳しい説明は省略します。
「鉄筋のかぶり」は型枠や配管との距離のことですので、全て終わった状態を目視するのがベストというわけです。


2.検査の内容とポイント

1回の配筋検査で行う内容は大きく分けると①書類確認②現場確認の2つがあります。

①書類確認

書類というのは、現場施工者が用意する書類です。
検査で必要と言うよりは、施工管理をするため、また建物を引渡した後何かあったときに調べるため、正しく施工や監理をしてますよ、とアピールするために必要なものですね。

どの会社も共通というわけではないと思いますが、書類の中には以下のようなものがあります。
・配筋チェックシート
・鉄筋継手チェックシート
・スリットチェックシート
・開口部チェックシート
・ミルシート
・納品写真
・配筋写真
・コンクリート打設計画書
などなど。

チェックシートには、鉄筋業者の自主チェック、現場の自主チェック、さらにこの後説明する監理者チェックがあるわけで、まあ「何回も何回も全部確認していますよ」といった証明書です。

ミルシートや納品写真なんかは一番重要で、「ちゃんとした工場でちゃんと作られている製品がちゃんとこの現場に入ってきて使われているか」をチェックするものです。
知らない工場で安く作られたものじゃないよね…?
他の現場の余ったやつ持ってきてないよね…?
なんて事業主に言われないために、何よりきちんとした品質の建物を建てるための重要書類ですのでチェックしないわけにはいきません。

続いて配筋写真。
設計図に従って配筋していますよ~という証拠写真です。
配筋写真の他にも現場ではよく写真を撮るのですが、これは「隠ぺい部」つまり「建物が完成した段階で容易に見ることができなくなるもの」については、写真に収めておきましょうといった魂胆です。
懸念があるたびに壊してられませんのでね。
全ヵ所全数撮るわけではないんですけど、後々確認するときにはやはり配筋写真が重要な意味を持ってきます。

このような書類の不備が無いか、内容が間違っていないかをじっくり確認するわけです。
それにハンコをついていく。
そりゃあ時間がかかりますよね。

②現場確認

続いて配筋検査の本命、現場のチェックです。
構造図とスケールを持って、ヘルメットをかぶって現場にGOです。

現場で確認することは実際の配筋状況、いうなれば構造図に書いてある全てがそこに網羅されているかです。
構造図の配筋通りに~…なんて一言で言うと簡単そうに聞こえますが、構造図ってとっても複雑で、さらに現場はもっと複雑なんです。
レベルで言うと、構造図は下弦の鬼、現場は上弦の鬼……それならば監理者や現場監督は無惨様かと思いきや、場合によっては炭治郎だったりします。
攻略する側ってことです。

話がそれましたが、監理者(構造設計者)は、構造図を書くだけでは無いんですね。
配筋量が多かったり、仕上げの形状の問題であったり、配筋図段階では想像しづらい納まり問題がいきなり発生したりもします。
そういう問題はたいてい構造図には書いていないため、現場からの「質疑」に監理者が「回答」という形で納まりを決めます。
じゃあ勝手に監理者が決めていいのなら楽じゃない~と思うかもしれませんが、真逆です。
なぜなら監理者もその回答の理由をきちんと説明できなければいけないので。

「配筋指針」をペラペラめくり、国交省のページをいくつも確認し、他の参考物件をあさり、上司に確認し…
まだまだ経験の少ない監理者にとっては寝る間もないくらい焦りもんです。
特に現場って生き物が成長するように進んでいくので、だいたいはすぐの回答を求められるんです。
その心労たるや…。(私はメンタル最弱なのでツラかった)

またまた話がそれましたが、じゃあ一般的に構造図に書いてあって現場で確認することって何~?という話ですが、具体的に上げると

・鋼種(SD390、345、295など)
・径(D32、29、25、22、19など)
・ピッチ(スラブ筋やスターラップなどの配置間隔)
・本数(柱や梁などの主筋は本数を数える)
・かぶり(コンクリートの表面から鉄筋の距離)
・あき(鉄筋同士の間隔)
・定着(コンクリート強度や鉄筋径によって違う、他部材への食い込み長)
・継手(連続する鉄筋の重ねしろ)
・カットオフ(主筋の定着長さのようなもの)
・補強筋(開口部など補強が必要な部位の配筋)
・位置(XY方向などの寸法やレベルなどの構造体の位置)
・固定状況(鉄筋同士が結束線などによりきちんと固定されているか)

などなど……ぱっと出てくるだけでも見どころはたくさんですね。
構造図の標準仕様書はもちろん、特記仕様書や詳細図もきちんと見なければいけません。
これらが全て合っているか確認し、OK問題なし!となればやっとコンクリートが打てるわけです。


間違えていた場合はもちろん配筋の是正をしますが、もう組んである鉄筋を組みなおすって思っている以上に大変だったりするわけで、お金や工程に影響が出る場合が大いにあります。
ここは正直、現場経験が無いとわからないところです。
間違えた現場が悪い、というのはもちろん前提としてありますし、ダメなものはダメというときももちろんあります。

しかし監理者は、現場の意見を聞いて、さらに事業全体を見据えた対応を考えるなど、中立的だけど協力的であることが求められます。
図面通りの建物を作るだけより大変ですけどね。
豊富な知識で柔軟に検討できる=優秀な監理者だと私は思っています。


3.まとめ

配筋検査はめちゃくちゃ大変…みたいな記事になってしまいましたが、基礎知識と数現場の検査経験があれば、特別な問題が発生しない限りそこそこ大丈夫です。
「主筋D29が~え~5本~!」
「え…ちょま……OKでぇしゅ上司ぃ~!!」
なんて、施工も監理自社の人しかいない場合はまじめに楽しくやったりもしてました。(監理者イメージくずれそう)
まぁ現場によっては見る量は多いし、現場に出て実際に足場や配筋の上を歩きながら見回るので夏は暑いし冬は寒いし、雨が降ると大変ではありますが。

書類のところでちらっと書きましたが、業者や現場は「自主チェック」というものをしまくるわけですが、それでも監理者の検査で指摘が出たりするんですよね。
それほど設計図って難しいし、どの現場も同じでは無いのです。
上司も言ってましたが、検査で現場に出るときは「絶対あるぞ~間違いがあるぞ~」マインドで出ます。
現場に対して失礼かもしれないですが、見逃してしまうことも同じくらい多いと思うんですよね。
作る側もチェックする側も人間なので。

何が言いたいかというと、最善を尽くして皆で良いものを作ろうぜってことで。
上手くまとまりましたので、今回はこれにて終わろうと思います。


ありがとうございました。

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