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《Iちゃんの髪かざり》

ここは
あなたの頭の中の美容室
「架空美容室」です。

今日も
#もっとお気に入りの自分   になるための
お手伝いをするために開けています。


今回からシーズン2「こども美容室」
《Iちゃんの髪かざり》

こども美容室は
こども食堂のように
こどもなら誰でも立ち寄れる場所
誰でもかわいくなれる場所
として、
空間、時間、技術を提供しています。
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(あ、これ…
七五三の時に
お母さんがしていた髪かざりだ!)

西陽が差し込むこの部屋は
今は物置になっているから
いつもはなかなか入らない


「なんで今まで気がつかなかったんだろう…
そっか、
ここにあったんだ」

大きなひとりごとに合わせて
歪んで開けにくくなったお菓子の缶から
その髪かざりを取り出した

夕陽の光は
オレンジ色に優しく輝き
その場をふんわりと温かさで満たした


 
手に乗せてみると
なんとも不思議な色合いの石
どうやって使うかわからないカタチ
 

ふと我に帰ると
「はぁ」
とため息が漏れた

明後日が卒業式だってことを思い出したからだ


 
その日の夜
お父さんは帰ってくるなり
久々にスーツなんて引っ張り出してきた
 
うげ
お腹が出てて苦しそう
 

「ほれ、いけるやろ
かっこいいか?
明後日はこれでいくらからな!ははは」


ジャケットをばさりと羽織り
鏡の前で背筋を伸ばしてみせた

 
「無理、全然止まってないやんボタン
ほら
いつも夜のポテチ食い過ぎなんだよ」


ここぞとばかりに
湖池屋スコーンを取り上げて
全部食べてやった


それなのに
とっても上機嫌

なんだかうざかった

 


はあぁ

鏡の前にうつる私は
半年前にしたショートカットが
中途半端に伸びたままのボサボサヘア

ドライヤーで
乾かすほどに膨れ上がってくる
 

んもう!
シャンプーがいけないんだ
こども用のアレは嫌なのに
お父さんはいつも癖で買ってくるんだよ


はぁ
もっとかわいい人はいいな

髪だってツルツルだし
肌だってピカピカだし

私は…
かわいくなれるのかな

いや、無理でしょ

この顔で
この髪型で

むりむりむりむり
まぢキモい


ドライヤーを止めた
ニッと前歯を出してみた


「はぁ」

鏡の中の私から目を背ける様に
洗面所をあとにした



卒業式はもうそこ
 
洋服は
おばあちゃんが送ってくれたワンピース

あまり気に入っていなかった

でも
不思議とあの髪かざりの石に似ているかもしれない
 

洗面所に戻り
その髪飾りを髪の毛にあててみた

キラキラとしたストーンもないし
揺れ動くチャームもない

とてもシンプルで

うーん地味!!



でも

懐かしい匂いがした

少しドキドキした

似合うかな


それにしても
どうやってつけるんだろう

私は途方に暮れた

お父さんに聞いたって
きっとわからないだろうな


私はコトリと鏡の前に置いた
 
 
つづく

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