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【架空美容室】へようこそ

"コーチングできる美容師がいるサロン"
《架空美容室》へようこそ

ここは
あなたの頭の中にある美容室です。

今日は初めてのご来店でしたね。
店主のAです。

どのように過ごしたいかはあなた次第

ここでこのまま帰ってもいいし

このままそっと店内の様子を見ていってくれてもいい
過ごし方は自由です。

お入りになるのであれば
今日はとあるお客様がご来店されます。

ぜひ覗いてみてください。

ここは
とある町の一軒のサロン

3席あるセット面に
スタッフは私一人
 

木枠の窓から見える景色は

すべり台のような急斜面に
お菓子の詰め合わせのように並ぶ家々

遠くのほうでは
海の水面がキラキラと踊っている
 
 

今日のご予約はたった一人

決まっていつも
お昼前にやってくるその方は

駅の近くにある
サンドイッチ屋さんのランチボックスを二つぶら下げて
ドアの鈴を元気よく鳴らして入ってくる

ほら

彼はいつものように
時間ぴったりにやってきた


たわいもない話しをしながら
熱のこもったスーツの上着と
ランチボックスを受け取る

決まった席に腰を落ち着かせ
自分の分をさっそく開けて話し出した
 

私はカウンターの奥で
コーヒーを淹れながら耳を傾ける

深煎りの豆の香りが
私の頭の中を少しずつ空っぽにしながら
空気を満たしていく

 
☕️

先月と比べてみる

今の状況を見定めてみる

その先にある目標の確認など

とにかく
質問と回答を繰り返し一通り話を終えると


ここからの1ヶ月
どんな場面が想定できそうか

どんな時間を大切にして過ごしたいのか

その時隣には誰がいるのか

自分は
どんな洋服をきていて
どんな本がカバンに入っていて
どんな場所で過ごしているのか

私たちは未来に羽を羽ばたかせながら
サンドイッチを頬張る

想像の共有は
言葉ではない

その人の脳の中に入り込み
同じ眼球を通してその景色を見に行くこと
 
 
🪶


 今、二極化している社内のムードを
 どうやって一本化していこうか…

 そっか… 

 俺はそれを無意識に
 ひとつにしたいと思っているのかもしれない…

岩陰に隠れて見えなくなっていた部分は
取り出すのも怖いものである

あとは
自分の言葉で紡いでいく

大切に掘り起こしていくと
何をやるべきかが見えたようだった
   
それを聞くことはない
 


さて
私の中でも
イメージがやっと目の前に現れてきた

それを元に
美容師としての出番がはじまる
 

まだらに見え隠れしていた白髪は
ここ数年
しっかりと存在を表明してくる

今回は
これまでのように全てを深い色で染めるのではなく

黒い部分も白い部分も
お互いを主張しながらも調和できるような
そんなスタイルを提案をしてみた
  

これまでと違うアイデアに
しばし瞳が彷徨っていたが

今度は私の脳内と同期させるように
鏡の中の自分と向きあっている


イメージの中を一緒に漂いながら
すり合わせを繰り返して


「そうしよう」


彼は自分に言うようにそう呟いたら
雑誌を手に取り
ゆったりと一口コーヒーをふくんだ

 
待合室にも使っている
窓際の席が彼の指定席


時折雑誌から目を離し

目の前に見える海に心を漂わせている
  

熱いコーヒーは
固まっていた部分を溶かしているようだ

自ら熱々のドリップをカップに注ぎにいく

過ごし方は自由でいい
 


 さあ
 どうでしょう


首巻かれたクロスの羽が舞った


 ほぉ


右と左に首をふり
新しい自分にまだ慣れない様子
新鮮な興味がこちらにも伝わり
私は少し安堵する


一色に染めることが正解ではない

髪も
人間も
いろんな色味があり
性質がある

隣り合わせにあることで
お互いを際立たせることもできるかもしれない


もちろんこれが完成形ではない
 
どんなに完璧に仕上げても
その人がしっくりくるかどうか
今は誰にもわからない


「未完成のままで終わっていい」


そこからは
自分とのコミュニケーションがスタートするから

自分と向き合い
自分の中で何かにふと気づく時
繋がる景色がある


また1ヶ月後

そのストーリーを聴くまで
このスタイルは仕上がらない

  

いってらっしゃい

またいつでもお待ちしております
 

 

美容室は

あなたが"知らない自分"と出会う場所

 
どんな風になりたいのか

どんなことがしたいのか

その未来にそっと手を添えて応援する場所

 
イメージするその自分を
一緒に掴みとり

形にする役割を担うのが
"コーチングかできる美容師"であり
あなたの中の美容室


もし自分に迷ったら
いつでも戻ってこれる場所

【架空美容室】
また開店しますね


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