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セピア色の桜とともに

想い出は桜とともにある

再会はあの日
風が強く桜の花びらが舞っていた

一瞬下を向き次に前を向いた時
君は目の前に立っていた


君は桜の精なの?
そう尋ねようとした僕に向かって先に口を開いたのは君だった

「タケシ待ちくたびれたよ」

ちょっと怒ってるようだけどかわいい声だ
でもどうして僕の名前を知ってるの?

「少し話せる?」

「えっ? それはいいけど君は誰?」

「テンコだよ。辞典の典に子供の子で典子。小学校の頃よく一緒に遊んだけど忘れた?」

「あの典子? 僕が何もしてないのにいきなり僕の頬をブッたあの典子?」

「それは私じゃないな」

「じゃあ、お互いのウチの犬同士が仲良しで、夜遅くまで散歩ついでに話し込んでよく親に怒られてたあの典子?」

「それも私じゃないな」

「じゃあ、君ンチの木場で秘密基地作って、君のお父さんにこっ酷く叱られてたあの典子?」

「それも私じゃないな」

「じゃあ、年賀状に今年もあと364日となりましたって書いてきたあの典子?」

「それも違うな」

「じゃあさ、じゃあ・・・」

「あんたは何人の典子を知ってるんだよ」


「久し振りだね」

「あんたつまんないことをよく覚えてるな」

「僕にとっては大切な想い出だから」

「実は私もよく覚えてるんだ。あんたが私を好きだったこともね」

「バレてた?」

「そりゃ分かるだろ。あれだけ一緒にいれば」

「ハハハ、ところでどうしてここに?」

「目の前が事故現場でね。車に自転車ごと弾き飛ばされた私はこの桜の樹に激突して呆気なくお陀仏。だからこの桜には私の思いの一部が残ってるんだ」

「いつ頃の話?」

「もう忘れちゃったよ。でも毎年誰か知ってる人が通らないかなぁって待ってたんだ」

「それで僕がここを通ったってことか」

「一番逢いたかった人で良かったよ」

「一番逢いたかった?」

「私もあんたが好きだったからね」

「そういうことはもっと早く言ってくれなきゃ」

「あんた鈍いからな」

「じゃあ、毎日は無理かもしれないけど逢いに来るよ」

「それが不思議なことに桜の咲く季節でないと出られないんだ」

「もう散り始めてるじゃないか」

「そうだな。今年はもうそろそろ戻らなきゃならない」

「明日はまだ大丈夫だよね」

「そうだな。それから来年もな」


それから桜の季節は典子と語り合った
まるで小さい頃の二人のように


彼女が亡くなってからちょうど15年目
典子は出てこなくなった
ホントに桜になってしまったのかもしれないな

来年もまた見に来るよ


でも さよなら僕の初恋
(1000文字)

セピア色の桜に参加させていただきます
山根さま よろしくお願いいたします


春の恋バナ祭りにも参加させていただきます
テルテルてる子さま よろしくお願いいたします


#青ブラ文学部 #セピア色の桜 #春の恋バナ祭り #僕の初恋


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