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食べる夜 絶品のオムライスと

「食べる。夜は」
今日は朝から調子が悪く、朝も昼も食べていない。

近くに住む幼馴染が訪ねて来てくれたのを幸いに、今の窮状を訴えてみたら「食べられそうなら何か作ろうか?」と言ってくれた。

こいつの作るオムライスは絶品なのだが、今夜は何を食べさせてくれるのだろう。

「あんたはさあ、昔から食べることには無頓着だよね。そんなんじゃこれからもっと大変になるよ」
こいつは時々母か姉のようになる。世話好きという点では変わらないのだが、へこんでいる時の小言はしんどい。

「それで、何か食べたいものある?」
「オムライス!!」
「またそれ? あんた私がそれしか作れないと思ってんじゃないよね?」
「お前のオムライスは美味いんだってば」
そう、他人の評価は知らないが、俺には絶品なんだ。
「ならいいんだけどさ 他にはないの? サラダとかさ」

「敢えていうならお前かな」
「あんたのその体力じゃ私の相手は無理だよ」
「・・・・・・」
「サラダでいいよね」
「ちょっと待て、それって・・・俺でいいってことか?」
「だから、今のあんたの体力じゃ無理だって言ってるじゃない」
「お前そんなに激しいのか?」
「女性に向かって何てこと言うのよ」

「どうして」
「どうしてってことはないでしょ。有難いと思いなさいよ」
「冗談じゃないよな」
「あんたは私がそういう冗談言うと思ってんだ」
「違う、そうじゃない」
そうじゃないんだってば、思い掛けないことだからちょっと戸惑ってるんだってば。

「近くにいる幼馴染がもっと多ければ違ってたかもしれないけど、幼馴染って呼べるのはあんたと私しかいなくって、幼稚園で友達に虐められてワンワン泣いてたのも知ってるし、小学校に入ったころ学校でおしっこちびってたのも知ってるし、何よりあんたのおちんちんがたった数センチの頃から知ってるんだから」

「だから?」
「いつの頃からか、この人とずっと一緒にいるんだろうなと思ったんだよね。そうするともう頭から離れなくてさ」
「お前は俺に惚れてるってことか?」
「そう聞こえなかったのなら、あんたの頭には何が入ってるんだろうね?」
「俺の気持ちも言った方がいいか?」
「そうね、思わず告っちゃったから、あんたの気持ちも聞く必要はあるわね」

「俺は今まで彼女なんていたことねえし」
「そんなことは知ってるわよ」
「最後まで聞いてくれるか」
「ハイハイ」
「普段からよく話す女性も母ちゃんと姉ちゃんを除けばお前だけだし、話す内容もどちらかと言えば俺が一方的に小言を言われていることが多いし、俺はスキだったけどお前に男と見られているとは思ってなかったよ」
「あんたの眼は何を見てたんだろうねぇ」
「な、そうやって揶揄うじゃん」
「ごめん、今のは私が悪かった」

「これからもよろしくってことでいいか?」
「こちらこそだね」
「じゃあ食べさせてくれるか?」
「元気になったらねって何度言わせるんだよ」
「違えよ、オムライスだよ」
「アッ、そっちか」


初めて参加させていただきます。
お題だけ見て書き出して、書き上げてから皆さんのを拝見して自分の拙さに恥ずかしくなって、提出を断念してしまいました。
でもせっかく書いたので、恥を忍んで出稿します。
笑ってやってください。

小巻幸助様。
素敵な企画をありがとうございます。

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