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PHOTO BOOK REVIEW 13: マーティン・パー『Fashion Magazine』



マーティン・パーの『Fashion Magazine』をレビューしてみました.どうかご参照いただけますことをよろしくお願いいたします。


PHOTO BOOK REVIEW 13:
Martin Parr
“Fashion Magazine”
2005年
Published by Magnum Photos

消費社会の滑稽さを撮らせたら右に出る作家はいない、イギリス出身でマグナムフォト所属のマーティン・パーのファション写真集。政治や資本主義批判を写真で表現する時に直截的に惨状を描写するやり方もありますが、本書は、パーらしい明るい皮肉さで溢れ痛快さを感じます。


本書に掲載されている作品はどれも撮り下ろしでありイギリスのエセックス・カウンティーから、アフリカ、セネガルのダカーまで大規模な範囲で撮影され、老若男女問わず一般の人を多くモデルに使い、通常のファッション写真というより、ドキュメンタリー作品に近い趣がうかがえます。騎手と大柄のモデルとの対比や、高級な宝石と人参に飾ったり、ロシアのファッションショウのアフターパーティーで串焼きの肉を頬張るファッショニスタなど、パーのトレードマークとも言えるカラフルな色で赤裸々な人々の姿がコミカルに描かれています。また、本書は業界の重鎮とも言えるクリスチアン・ラクロア、ソニア・リキエル、カステルバジャックなどにパーの作品についてコメントが収録され、通常のファッション雑誌と同じように、ゴシップ性も兼ね備えています。

撮影場所を広範囲にすること、モデル体型のスレンダーで若い女性と、一般人との対比、ストリートフォトやファッションショーの様子を織り交ぜることで、「ファッション」が日常にどのように溶け込んでおり、消費社会のシンボルとも言える「ファッション」という呪縛に全ての人が逃れられない現状を示しているかのようです。  本書は、2005年にパリのボン・マルシェギャラリーでの展示会に合わせて発刊されました。







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