感謝して、感謝して、擦り切れるまで感謝しよう。

「人は一人で生きられない」なんていうのは、よく出来たもんでございます。四半世紀をやっと生き延びられた僕には、もっとも「感謝」の二文字くらいしか浮かびません。

金が無く困ったあかつきには『飲み代くらい俺が出すよ』と言ってくださる友達がおり、どうしようもなく酔っ払った手前ごときに、肩を組んでくださる友達がありました。『金のことなんかまったく気にすんなよ。馬鹿か』などと笑いながら高らか、酒に俯く僕をげらげらと蹴り上げる先輩がありました。『何かに困ったらすぐ電話してこい。その代わり、ひとつ面白いことがあったら、俺へ真っ先に教えてくれ』と言った、偉大なお父さんがありました。

何を隠そうにも隠せず、万年金に困る僕は、幾分の申し訳も無く、お父さんの電話番号を叩きます。「金貸してくれや」などは言えません。無論です。「元気か。雪降ってんのかい、そっち」などとヘラヘラほざき誤魔化すところへ、『まーた金困ってんのか。いい加減にしろよ』と笑います。通帳には「送金元:オヤジ」の文字列。それで買ったタバコを吸ったら、涙が出てきました。

生きられません。誰かの肩にこれでもかと寄りながら、発泡酒を片手に「俺はもうダメだ」とわめく。己が弱い奴だというのは、もちろん分かっている訳です。分かっていても、酒を止められません。“アルカホリック” の文字列は美しい。カタカナは硬いからです。“酒中毒” の三文字が、霞んだ目線の手前にドベーッと張り付きます。どうしたもんなんでしょうか。

感謝を止めてはいけない。酒に焼けた喉で、酔を止めることもできず、まるで錆びたギターの弦です。ジャギジャギ響いて美しい音など途方も知らず。無く。金切り声。「ありがとうございます」の萎んだ言葉尻には、生気がまるでありゃしません。が、決して止めてはならない。

「人は一人で生きられない」なんていうのは、よく出来たものです。尊ぶべき言葉です。その通りでございます。通り一遍にひけらかすもんじゃありません。野に垂れ死ぬまで「ありがとうございます」と叫びましょう。アルコールに喉が潰れても、視界無く膝から崩れても、全力で真摯に吠えましょう。一人。おこがましいもんでは無論ありますが、いつもありがとうございます。掠れた喉にウイスキーの煌めかん水流。ぎんぎんに染みる夜です。ありがとうございます。

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頂いたお金で、酒と本を買いに行きます。ありがとうございます。

ありがとうございます。頑張って書いた甲斐がありました。
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