マリ=フィリップ・ジョンシュレー『あなたの迷宮のなかへ カフカへの失われた愛の手紙』

「わたしたちの愛は不可能だったから、あなたはわたしを愛したのです。」

1919年、プラハのカフェで出会ったフランツ・カフカとミレナ・イェセンカーは、互いに惹かれあい文通を始める。
カフカが書いた大量の手紙は『ミレナへの手紙』として公刊されているが、ミレナがカフカへ宛てた手紙は消失してしまい内容を知ることはできない。
この本は、作者が、その失われたミレナの手紙を創作して書いた一風変わった書簡小説。

あなたが欲しいという、要約すればたったそれだけのことに費やされる長い長い言葉。語れば語るほどに足りなさばかりが際立って、それを埋めるためにまた言葉は綴られていく。

「わたしたちの愛は美しく、本物で、したがってありえないものでした。まず最初に出逢ったのはわたしたちの心で、わたしたちは相手の書いたものを読んだのです。すぐにそれが愛だとは気づきませんでしたが、それが何かは重要ではありませんでした。それはわたしたちを超えたところで始まっていたのです。」

後半から「おいカフカ!会いに行けよおおお!」と、キレ気味で読んだけれど、この欲望と愛情の複雑さがカフカなのかも。

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