坂崎かおる『嘘つき姫』

19世紀のニューヨーク、近未来の日本、ドイツ占領下のフランスなどなど、時代も国もバラバラな9つの短編。

どの短編も語られなかったことの余白が際立って、ずっと寂しかったり悲しかったりしながら読んだ。

『ニューヨークの魔女』
サーカスの電気椅子ショーを通して生まれる、殺しても死なない魔女と女性電気デザイナーの奇妙な関係。

『私のつまと、私のはは』
ARグラスを用いて擬似的な乳児育児体験ができる〈ひよひよ〉を手に入れた理子とそのパートナー知由理。2人は軽い気持ちで〈ひよひよ〉を使い始めるが次第に彼女たちの間に溝が生まれ始めて……

どれもよかったけど、このあたりが特に好きだったなあ。

なかでも私的ベストは、電信柱の切断をする仕事に就いている女性が、ある日突然一本の電信柱に恋をして……という始まりの『電信柱より』が変愛(ヘンアイ)小説大好き人間としてもうたまんなく好きでした。

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