読書日記6月◯日 その4

移民がテーマの本を続けて読んだ。
増村十七「バクちゃん」1巻は、とにかくバクちゃんがかわいくてしかたない。フード付きのパーカーが似合いまくり。バクちゃんが走り、フードが揺れる。これだけで鼻血。こんなにフードの似合うキャラクターはE.T.以来ですね多分。あと、気難しい大家さんが帰宅したバクちゃんにむかって「自分たちの家に帰ってきたんでしょ、まずなんて言うの」とさりげなく声をかける瞬間とか、細かい会話のやりとりも印象的。あたりまえのように「自分たちの家」と言う大家さん。それに対して「ただいま」と返すバクちゃん。あたりまえの暮らしのかけがえのなさたるや。
モーシン・ハミッド「西への出口」内戦が激化する国で暮らすナディアとサイードが恋に落ち、どこでもドアみたいな扉で国境をこえていく。前半パートの戦況が日に日に悪化していく描写は読んでいて辛くなるけれど、そんななかでもナディアとサイードはマリフィナタバコを吸いあったり旅の妄想なんかを話してゆっくりと仲を深めていく。小説のところどころで、まったく別の土地で暮らす人々の独立した物語が掌編小説のように差し込まれるんだけどこれがまた素晴らしい。「いま・ここ」からふいに「いま・どこか」へ連れて行かれる。個人的には、アムステルダムで暮らす老人とブラジルからやってきた老人のささやかな交流を描いた挿話がお気に入り。

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