本田晃子『革命と住宅』

家父長制の解体はいかに困難か。

本の前半ではソ連の住宅史が語られていく。
社会主義の理念によって旧来の「家」を否定して築かれたコミューン型集合住宅「ドム・コムーナ」、しかしその理想の裏、現実では社会主義住宅「コムナルカ」で人々は極限まで密集しながら暮らさざるをえなかった。住宅難にあえぐ多くの都市市民を尻目に建てられた豪奢な「スターリン住宅」、スターリンの死を転機に住宅難を解消するため急速につくられたソ連型団地「フルシチョーフカ」などなど。
ソ連映画の資料とともに、当時の暮らしや社会背景が詳細に語られていく。

後半は、「亡霊建築論」と題され、建てられなかった「アンビルド建築」が紹介されていく。外国のコンペに模型を持ち出すことができないことで発展した、紙の上の建築「ペーパーアーキテクト」の数々がとても魅力的だった。墓場の住宅、ガラスによってつくられる仮初めのユートピア、崩れ落ちた塔など、建築に限らず、舞台美術が好きな人間なんかもとても刺激をうけるとおもう。

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