A.R.ホックシールド『壁の向こうの住人たち アメリカの右派を覆う怒りと嘆き』

アメリカ大統領選挙のタイミングで読んでよかった。とても勉強になった。

著者は、アメリカ南部ルイジアナ州に暮らす右派の白人中間層の感情を理解するため、2011年から2016年にかけて現地を10回訪れ、彼らの"ディープストーリー"と遭遇する。

ディープストーリーとは、事実にこだわらず、当人がどう感じたかを語る感情の物語のこと。

かつて豊かな自然に囲まれていたルイジアナ州だが、大手石油産業が進出し、現在は深刻な環境汚染に悩まされている。
堀削事故により、広大な土地が地盤沈下し故郷を失った人々は、悲しみと怒りに覆われながらも、にもかかわらず、政府の環境規制に反対し企業の自由な経済活動を擁護する。

アメリカンドリームを信じて、辛抱強くその列に並んで待ってきたのに、どんどん横から人が割り込んでくる。そう語る彼らの人生の物語を人ごととはおもえない。

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