芸人のネット耐性

先日行われたR-1グランプリ2023は田津原理音くんの優勝で幕を閉じました。
毎度毎度の事なんですが、賞レース終わりにTwitterは荒れまくります。
「2位の方が面白かった」とか「今回はレベルが〜」などと批判の嵐です。

私が優勝した時もそら酷かったですよ。
「1ミリも面白くない」だの「こんなのに客が笑ってるの不自然だからサクラだろ。」だの「吉本のゴリ押しで優勝させたんだろ」だのめちゃくちゃに言われました。

当時は相当へこみましたよ。
這いつくばって芸人やってきて、会社からは戦力として扱われず、劇場出番も全く貰えない中、地下ライブでネタをこすりあげて、やっとこさ掴んだ優勝なのに、何でこんな事を言われなきゃならないんだと。

本当に世知辛い世の中だなと思いました。

あれから10年経ち、大分、ネット耐性は身につきました。

中傷されても平気なんて事はないですが、世の中には救い様のない人間が一定数いるので、致し方ないかなと今は割り切っています。

この前、アイドルのプロデュースをしてる方とご一緒したのですが、芸能界で生きていく上で、ストレス耐性、ネット耐性は絶対に必要だと言っていました。
才能ある子が、ネット上での誹謗中傷に耐えれなくて、何人も潰れていった、と。

10代〜20代の女の子が、陰湿で理不尽な言葉の暴力に耐えなきゃいけないとは、何ともわびしい世界です。

ただ僕ら芸人は、人前に立つ以上は「ある程度の事なら何を言われても仕方がない」位の覚悟は必要かなとも思います。それ位の腹の括り方が出来ないと活動を続けていけません。

観てる人には「面白い」と言う自由も「面白くない」と言う自由もありますからね。

お客さんも視聴者も好き勝手言うてくれていいんです。
でも稀に芸人で人を蔑める様な事を言うのがいるんですよ。

私も同業者に「R-1つまらんかったわー。」と言われた事もありますし「三浦マイルドが優勝する様じゃR-1も終わり」なんて事も言われた事があります。

この人らと同じ板の上に立つ時は絶対に負けたらアカンと、心に決めています。

芸人が芸人に「面白くない」なんて言うのは私は好きじゃないのですが、言ってもよいケースがあるとするならば、言った相手と舞台上で勝負をするのなら、まだ許されるのではないでしょうか?
その気概もないのに同業者にあれこれ言うのは、情けなさすぎますね。

面白いだの、面白くないだのは、芸人やってたら一生言われ続けるもんです。

だから今年のR-1に賛否があるのも例年通りの事です。
ただ、今年は事情が違うというか、特殊な事が起きてしまいました。

トップバッターのYes!アキトくんの得点発表の前に、まだネタをやっていない田津原理音くんの得点が470点と誤作動で表示されてしまい、その後7番手でネタをした田津原くんの得点が同じ点数だった為「あらかじめ得点が決められているのではないか?」とやらせ疑惑がTwitter上で持ち上がっているのです。

私も3度R-1の決勝の舞台に立たせていただきましたが、生放送の賞レースに、あらかじめ点数や優勝者が決まっている様な不正行為が入りこむ余地はありません。

事前に入れる点数を決めていて、当日の演者のパフォーマンスと客席のウケを視聴者が違和感感じない様に合致させるのは物理的に不可能です。

私が優勝した年、お茶の間の反応は別として、間違いなく会場の空気を支配したのは私でしたし、
2017年はアキラ100%さんでしたし、2019年は粗品でした。

運営からは「システムエラーが起き(略)リハーサルの際に仮で入力した得点の合計が470点であり、それが田津原さんの実際の得点と合致したのは完全な偶然です」との説明がありました。

私はこの説明で腑に落ちました。

ただ、「釈然としない」との意見や「証明になっていない」との厳しい意見があるのも当然です。

制作側は猛省せねばなりません。
私はスタッフの方達が、一生懸命やってるのも、R-1に思い入れがあるのも知っています。
大会には恩義もあるし、今でもお世話になっています。
しかし、厳しい事を言わざるを得ません。
ミスが起きてしまったのは仕方ない。
でも、それが起きてしまった後にどうするかです。
最大限に田津原くんをフォローしてあげないと。

今年のファイナリスト全員の中でも、田津原くんが一番、実害を被ったわけですから。
一部に「やらせ優勝の芸人」なんて言うてる輩がいて、本当に嫌な気持ちになります。
疑惑を持つのは仕方ないとして、何故断定して、人の名誉を毀損する様な事が出来るのかと。
「ある程度の事なら、何を言われても仕方ない」と書きましたが、これは許しちゃ駄目なやつです。いかに下衆な事を呟いているかを自覚してほしいものです。

まあ考え様によっては美味しくする事もできるんですけどね。
すべっても「やっぱりやらせや」とか「疑惑のチャンピオン」とイジってもらえますし。

マイナスをプラスに変換できるから、お笑いは素敵なんだと思います。
そのバイタリティーが田津原くんにはあるでしょう。

周りと連携して、めちゃくちゃ面白いノリも作れるかもしれません。

この状況を逆手に取って頑張ってほしいですね。












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