脳性麻痺における神経眼科学的障害:眼科学的,眼球運動の,視覚に関する障害(Neuro-ophthalmological disorders in cerebral palsy:Ophthalmological, oculomotor, and visual aspects)
Fazzi
Dev Med Child Neurol. 2012 Aug;54(8):730-6.
【要旨】
目的:中枢性の視機能障害(cerebral visual impairment: CVI)は視覚経路の膝状体より後方へのダメージに原因がある障害である。脳性麻痺(CP)とCVIには共通の原因がある: 60-70%の脳性麻痺児はCVIがある。我々は脳性麻痺児の視機能障害を描き出すこととした。更なる目的は、異なるCPのタイプが視機能障害の異なるパターンと関連しているかどうかを確立することである。
方法:Pavia大学で登録された計129症例(女児54名、男児75名; 平均年齢4歳6ヶ月、標準偏差±3歳5ヶ月; 3ヶ月~15歳)のCP・CVI児(両麻痺51名、四肢麻痺61名、片麻痺17名; 参加者のうち62名[48%]は歩くことができた)が神経学的検査、発達そして/もしくは認知評価、視力、コントラスト感度、視運動性眼振、視野そして立体視の評価、そして神経放射線学的調査を含む評価プロトコルを受けた。
結果:両麻痺の視覚機能障害は屈折異常(参加者の内75%)、斜視(90%)、異常なサッケード運動(86%)、そして視力低下(82%)によって主に特徴づけられる。片麻痺児は斜視(71%)そして屈折異常(88%); 眼球運動の併発(involvement)は多くなかった(59%)。このグループは視野の異常を持つ参加者のパーセンテージが最も大きかった(64%)。四肢麻痺児は重度の神経眼科学的な特性を示し、眼球の異常(98%)、眼球運動障害(100%)、そして視力低下(98%)によって特徴づけられる。
解釈:神経眼科学的障害はCPの主な症状の一つである。各々のCPのタイプは別個の神経眼科学的特性と関連している。CP児に対する早期からの注意深い神経眼科学的な評価は適切な予後予測と個々のリハビリテーションにとって必要不可欠である。
【私見】
脳性麻痺を伴う子どもの視知覚,というよりは視覚に関する論文です.イタリアのグループからの報告です.
重症度別(GMFCS別)のデータが欲しいところですが,記載されていませんでした.あと,片麻痺の子どもはサンプル数が不当に少なすぎる気がします.
全体として,四肢麻痺を伴う子どもでは眼球や眼底の問題など,より基礎的な障害を合併することが多く,両麻痺の子どもでは動眼障害・屈折異常または中枢性の視知覚障害を感じるデータとなっています.
OTの臨床では腹側経路・背側経路を含む視知覚の問題がクローズアップされる傾向にあります.しかし,より基礎的な眼球運動や視力の問題にももっと理解を深め,適切に評価できるスキルを持つ必要があると感じています.