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今ネパールに必要なもの

2015年11月7日日経新聞夕刊に掲載されたものです。

 「頑張ろうネパール!エベレスト街道トレッキング」というツアーを企画している。これは12月7日に出発、3日間掛けて世界一標高の高いホテル「ホテル・エベレスト・ビュー」まで行くというもの。そこは日本人の宮原巍(たかし)氏がつくったホテル。僕の祖父・三浦敬三が最初のゲストというゆかりも三浦家にはある。
 全室からエベレストを見ることができ、さらにクンブ地方の名峰、ローチェほか、クンビラ、タムセルク、カンテガ、アマダブラムを一望できる。ぜいたくなホテルである。
 このツアーの説明会をミウラ・ドルフィンズで行った際、宮原氏も来て挨拶をしてくれた。その中で宮原氏は「ネパールにできる一番の支援は観光国としてのネパールを取り戻すことである」という。

 今年4月に大地震が起きるまで、ネパール周辺を訪れる登山客、トレッキング客、カトマンズ盆地にある世界遺産の観光客に宿泊等のサービスをする観光業が国内総生産(GDP)の半分を占めていた。しかし、震災により多くの世界遺産に指定された遺跡は損壊し、エベレストベースキャンプで起きた雪崩による登山者の犠牲が世界的に報じられるとネパールを訪れる観光客が激減した。
 確かに震災発生時において迅速な国際援助は必要だが、継続的なネパール支援というのは一日でも早くネパールに観光客を取り戻すことであろう。
 幸いエベレストを周辺としたソル・クンブ地方の復興は順調で、トレイルには地震やモンスーン(雨季)で流れ落ち通行困難となった箇所はあるけれど、現在では迂回路がしっかりとできていて、以前トレッキングしたことのある方でも新鮮に楽しめるだろう。街道沿いのシェルパは「せっかく道も開通し、宿も修復したのに誰も来なくなった」と嘆いている。

 30年以上も前に宮原氏がエベレスト・ビュー建設のいきさつを書いた「ヒマラヤの灯」という本で、ヒマラヤの山容について以下のように述べている。
 「ヒマラヤ この限りないロマンと神秘を誘う言葉。その白き神々の座を一度眺めたものはその強い印象から逃れることは出来ません。それは太古の海から押し上げられて、現在の深く鋭利な風貌に至るまでたくみに刻み込まれた自然が見るものの心を揺さぶるからであります」

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