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変化に身を投じる

2014年1月4日日経新聞夕刊に掲載されたものです。

 今年もスキーシーズンが始まった。我がサッポロテイネスキー場はシーズン序盤こそ雪が少なかったが、年末に立て続けにやってきた低気圧によって各コースが開かれた。

 僕は毎年ここで本州、九州、四国からの子供たちを連れてスキーキャンプを行っている。毎年参加してレベルを上げる子供たちもいるのだが、初めて雪を見るような子供も参加する。
 そんな彼らの最後のイベントとして、すべてのクループを引き連れて「北壁コース」を滑り降りることが恒例となっている。
 「北壁コース」は札幌テイネスキー場の最難関コースで、最大斜度が38度あり、至る所に木がある急斜面の林間コースだ。急斜面であることと立木がたくさんあるため圧雪車が入ることができず、いつも大きなコブや自然のままの雪質が残っている。ここは世界的に見ても難コースである。

 急斜面が怖いというのは普段から平らな地面に慣れているせいでもある。急斜面を見下ろすと足元に大きな空間が広がって高所恐怖症でなくてもちょっとしたスリルを味わう。しかし、怖いからと言って尻込みしてスキーの後ろに後傾するとスキーは体から離れて余計にコントロールが利かなくなる。
 僕が子供達、上級者、初級者の区別なく教えるのは思い切って自分から斜面に飛び込むことが大切であると思うからだ。そうすることによって、体は斜面に対して垂直になり自らが働きかける力は100%スキーに伝えることができる。また後傾で急斜面に感じていた感覚も体を斜面に合わせることに事によって視覚的にそこが平面と見ることができる。

 最初は尻込みしていた子供たちも僕の言葉を信用して身を斜面に投げるようにして重心を前に持っていくと、それまで力いっぱいやっても操作が難しかったスキーが突然コントロールできるようになる。
 こうした作業を北壁コースを滑り降りる間に百数十ターン行う。そのうち自ら斜面に積極的に飛び込むことをためらわなくなり、恐れていた急斜面が楽しくなってくる。そして大抵はコースを滑り降りるとみんな「もう一度滑りたい」と言うようになる。
 2014年、時代的にも大きな変化に対応が求められる年になるだろう。そんな時、スキー同様に自ら変化に積極的に身を投じられるようになりたい。

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