見出し画像

「山の日」8月の必然

2014年5月31日日経新聞夕刊に掲載されたものです。

 「今日は山の日だ」子供の頃から父がこう言うと家族全員で学校を休み、山登りに行っていた。2016年から8月11日が「山の日」として新たに国民の祝日に変わった。三浦家が非公式に行っていた「山の日」が休日となり、なんだかうれしい気持ちだ。
 1999年に当時の日本山岳協会副会長だった神崎忠男氏(現日本山岳協会会長)の提案により始まった。その後「山の日」に向けて日本山岳会、日本山岳協会、日本勤労者山岳連盟、日本山岳ガイド協会、日本ピマラヤン・アドベンチャー・トラスト等、日本を代表する山岳団体が団結して政財界に働きかけ、今回の制定にこぎ着けた。
 祝日がない月は6月と8月だったが、「山の日」が8月にできて6月だけが祝日がない月になる。
 神崎氏に尋ねると「もともと6月に山の日を設けようと思ったが、この時期は全国の山小屋開きの最中で、多くの登山客を受け入れるには難しいとの意見があり、8月になった」と話した。

 僕も8月に「山の日」ができた納得できるいくつかの理由がある。一つには6月はまだ残雪期の山が多く、装備と技術がしっかりしないと入れない山が多い。また日本の多くの地方は梅雨入りの時期にあたり晴天率も低いだろう。
 さらに漢字の八月の「八」を突き詰めると日本の登山としての山の関りだけではなく、山岳信仰としてのつながりが見えてくる。古くから日本にある神道と外来の仏教を取り入れた神仏習合の修験道である。この中で「八」は日本古来の神道では特別な意味を持ち,「古事記」「日本書紀」では日本の名称は「大八島」、神武天皇に遣わされた八咫烏(やたがらす)があり、勇者と表わされた八十建(ヤソタケル)、そして三種の神器の八咫鏡、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)等に「八」が含まれている。
 「八」はその形から末が広がるイメージや「大きい」を表すときに使われ、日本人にとって特別な数字であるという。そのため日本の多くの山にも八甲田山、八方尾根、八ヶ岳、八海山、八幡平、八溝山など「八」に由来する山の名前が多い。

 こうしたことを「山の日」に考えると、8月11日に山の日ができたのも偶然ではないような気がする。「山の日」ができたことによって山について考える機会が増えたことをうれしく思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?