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健康のバロメーター

2012年10月27日日経新聞夕刊に掲載されたものです。

 三浦雄一郎が挑む「80歳、世界最高齢でのエベレスト」の科学的テーマは「究極のアンチエイジング(抗加齢)」である。低酸素下において人間の肉体年齢は著しく加齢が進む。いかに体力的に若返るかが大きな鍵となる。

 過去、70歳、75歳の挑戦でのアンチエイジング対策は、トレーニングによる体力向上や不整脈、ケガからのリハビリなどの疾患ケアであった。
 しかし、これらは抗加齢的観点からすると、循環器や筋力等に特化した局所的なアプローチだ。80歳の年齢でエベレストに挑むには、これまでの取り組みに加えて、身体全体への対応が必要だと順天堂大学の白澤卓二教授から指摘を受け、日本の「男性医学の父」ともいわれている札幌医大名誉教授の熊本悦明先生に相談した。

 熊本先生は男性ホルモン(テストステロン、DHEA)は20歳をピークに下降し、これが更年期において様々な健康的、医学的な問題に関係する、と警鐘を鳴らしている。
 先生は「つい最近まで、国内において更年期の女性医療が遅れていることで、その機運が高まり全国的にその取り組みが展開されることになった。しかし社会的流行も一応収まり、冷静に見るとむしろ遅れているのは男性特有の医療にある」という。
 日本では男性の早朝の勃起を含む勃起回数などは日本人特有の羞恥心からなかなか医師の診断項目に入ることがないが、就寝時の勃起の有無や回数は男性にとって健康のバロメーターだそうだ。勃起は陰茎に血液が流れ込み血管が広がることによって起きる。陰茎の血管は体内で最も細い血管であり、もし勃起がうまくいかないならば、脳の毛細血管や心臓など身体全体にもこうした血管障害が広がっている可能性があるという。

 また、男性ホルモンの低下は糖尿病、メタボリックシンドローム、鬱、やる気の無さと関係していることから「日本の医師は女性に対して月経のチェックを怠らないが、男性の勃起に関しての確認を怠っているのではないか」と、熊本先生は男性のための医療推進、全体の見直しを提唱している。
 エベレストに登るために、もう一つの重要な健康のバロメーターがあることがわかった。熊本先生から父と僕にその計測器が手渡されたのである。


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